軒花を飾る
なんの因果か出店のじゃんけんで勝ってしまった私のクラス。店の大まかなことは決まっているがまだ店名すら決まっていない、というか本当に勝てるなんて誰も思っていないためかなりバタバタしている。
「じゃあ、とりあえず店名とか商品とかいろいろ決めなきゃいけないので皆さんお願いします」
「台湾かき氷!」
「かき氷本舗!」
「グラニータ!」
「ふわふわ一番屋!」
もはや誰も挙手することもなく好き放題に意見を言っている。喧喧囂囂、喧々諤々、まるで嵐の最中のクラスの中で私はおしゃべりに興じていた。
「みんなすごいやる気ね」
「ね~。体育祭のときのあの暗い感じが嘘みたいだね」
「というか店と商品をいっぺんに決めようなんて議長も結構テンパってるのかもね」
「確かにね。というか紫織ちゃんはなにか案ないの?」
「なに一つないわ」
「そんなに胸張るところじゃないと思うな」
「別にいいじゃない。割り振られた役目はちゃんと果たすつもりよ」
「それは普通のことだね!」
「そういえば文化祭の売り上げってどうなるのかしら」
「全部生徒のものになるはずだよ。赤字でも黒字でも全部クラスの負担になるはず」
「太っ腹ね。去年もそうだったのかしら」
「確かそのはずだけど。でも黒字になってもたかが知れてるしね」
「それもそうね」
他愛のない話に華を咲かせている内に骨子が決まったらしい。
「じゃあ、店の名前はふわふわ本舗で、商品は台湾かき氷ってことで。それぞれ仕事ごとに振っていくんで・・・」
今更ながら覇気のない委員長ね。心配になる。無事そこまで大変でもない裏方の役目に収まることができてほっとしている。これで売り子やら客引きなんてやらされたらどうしようかと思ったのだけれど。それにしても驚いた。台湾かき氷なんていうから、味付けとかがなにか違うものを使うのかと思っていたけれど、そもそも味付きの氷を削るなんて初めて知ったわね。今度やってみようかしら。微妙だったら・・・ま、朝則に食べさせればいいか。