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閑話休題 芽を出す朝顔

朝。太陽光が部屋に差し込む。爽やかな朝の中、私は熱にうなされていた。38度なんて久しぶりに見た。全身が重くて手を挙げるだけでも精一杯だ。あぁ、朝則に連絡しておかなきゃ。


ー熱すごいから今日はうちに来ちゃダメ。シチューはまた今度ね。

ーわかった。無理すんなよ


今日に限って寝坊していたらどうしようかと思ったが大丈夫だったらしい。最近は家に押しかけることもなくなって安心している。それでも週に一回程度は怒鳴り込むはめになっているけれど。もう無理。起きてらんない。寝る。




 着替えていると、紫織から連絡が来ている。やっぱり熱出したのかあいつ。珍しく体育頑張ってたし、身体がびっくりでもしたのだろう。いつもは口うるさい幼馴染と一緒に囲んでいる朝食を一人で食べる。いつもはうるさいなとしか思わない彼女との食事だが、こうして一人で食べていると意外と楽しかったらしいと気づく。あいつがいないことが寂しいのか、一人の食事が寂しいのかは要検討だが。

本当に久しぶりに一人で学校へ行く道を歩く。紫織は決して一緒に学校へ行くことはない。それは彼女が決めた約束のなかでも絶対のもので、それは中学のころに決められてから高校に上がった今日まで破られたことがない。一緒に歩くのはバス停の近くまででそこからは俺は自転車、あいつはバスに乗って学校に向かう。


「おはよう」

「おはよう!朝則!」

「うるさ」

「ええー-!酷くない!親友に対して言っていい言葉じゃないよ!」

「はいはい。悪うござんしたね」

 朝っぱらから非常にうるさい友人である風間鈴太郎かざま りんたろうを適当にあしらいながら席に着く。いつもうるさいが紫織がいないことでその喧しさもひとしおだ。全くこれで御曹司だというのだから驚きだ。いや、御曹司だからここまで奔放なのか?

「朝則!今日カラオケ行かないか!」

「行かない、というかお前の場合はカラオケというか合コンだろ?」

「いやいや!カラオケだ!たまたま俺ら以外に女の子がいるってだけだ!」

「はいはい、一人で行っといで」

「たまにはパーッと遊ぼうぜ!お前教室に残る以外で誘いに乗ったことないし!」

「お前と遊ぶと常に女子が付きまとうからな。毎回毎回そんなことに付き合わされる身にもなれ」

「わかった!今日は誰も誘わない!断っとく!」

「その言葉は五回以上聞いた記憶がある」

「本当だ!今回はちゃんと全員断っとく!」

「その言葉も五回以上聞いたな」

「じゃ」

そこで鐘の音が響く。相変わらずうるさい。去年から思ってたけど絶対音の調整間違ってるよな・・・。

「ほら、先生来たぞ」

「む!しょうがない!今日は諦めるか!」

やっと諦めたらしい。

「この時間は!」

前言撤回。諦めが悪すぎる。悪いやつではないのだが、女子と遊ぶということに関して執着が強すぎる上にこちらを巻きこもうとしてくる。

・・・やっぱり悪いやつかもしれん。


 休み時間ごとの鈴太郎の執拗な誘いから逃げ回りつつ昼休みを迎える。今日は女子と遊びたい欲がMAXの日らしい。いつもに増してしつこい、というか鬱陶しい鈴太郎を諦めさせるのは至難の業なのでおとなしく聞き流すのが吉だというのをコイツとの付き合いが二年目に入ってようやく理解でき始めた。

「それにしても!今日はなんだか元気がないな!」

「そうか?別にいつも通りだと思うが」

「いや!昨日に比べて確実に口数が少ない!それに弁当も持ってきていない!もしかして親と喧嘩したのか!」

「ま、そんなとこだな」

「しょうがないな!じゃあ!今日は女の子と遊んで元気を充填しなければいけないな!そうだろう!そうだろう!」

「勝手に話を進めるな。なんと言われても行くつもりはないからもうあきらめろ」

「そんな!じゃあ!どうやって元気を養っているんだ!」

「ちゃんと飯を食って早めに寝るんだよ。お前の充電は過激すぎる」

「?」

その後も誘いは止まらなかった。悪意がないところが本当に始末に負えない。


 なんだかどっと疲れた気がする。遊びに行こうの連打一本でこちらが誘いに乗るわけないことをいい加減理解してほしいものだ。

「じゃあな。鈴太郎」

「え!本当に帰るのか!今までのは断る振りじゃないのか!」

「当たり前だ。行かないって言っただろ」

「そうか!じゃあ気を付けて帰れよ!でもお前に元気がないのは本当だからな!ちゃんと休めよ!」

「はいはい、どーも」


 


 帰りにドラッグストアでポカリやらゼリーを買い込む。たぶんずっと寝っぱなしで碌に食事もとっていないだろうし。たまにはお粥ぐらい作ってやるか。

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