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第六話

 リオン様に連れられて、初めて王都の露天街へ行った。それは城から少し離れた所の路地裏にあって、食材や装飾品、それから鉱石を売っているお店など様々。

 そこでリオン様は、よく分からない白い粉を買って、鉱石のお店でただの石ころみたいな物を買った。

 花屋に入ると、リーゼロッテの好きな花を私に尋ね、それを買い、この間の小箱のリーゼロッテの分を作る為だと言っていた。

 その時、エミリア様はどのお花がお好きですか、と尋ね、リオン様は私の好きな花も買ってくれた。


 それから、お互いまだ昼食も食べていなかったので、パン屋さんで昼食を買った。リオン様はライナーの分もたくさん買ってくれて、一瞬で彼の心も掴んでいた。


 こんなに楽しい買い物は初めてで、色々な物に目移りする度に、リオン様はそれがどんな物か教えてくれて、私に尋ねる。桃色がお好きですか? 甘いものはお好きですか? 紅茶は何がお好みですか? と。


 こんなこと、オルフェオ様からは一度も尋ねられたことがない。

 彼は私に興味がなかったのだろう。


 そう気付くと、リオン様がどう思って尋ねてくるのか気になり始めた。 


 視線を送るとすぐに気付いてニコッと微笑むリオン様。

 仔犬に懐かれたみたいでほっこりした。

 


 城に戻ると、西側に位置する宮廷魔導師の建物へとやってきた。

 ここでリオン様も生活しているそうだ。

 奥が宿舎で、手前が工房。

 会議室や食堂、色々な部屋があるそうだ。


 何人か宮廷魔導師のローブを来た方とすれ違うと、中庭の途中でリオン様は急に立ち止まって私の方へ振り返った。


「俺の……。あ、私の工房で作業しますが、宜しいですか? ライナーさんも一緒に」

「はい。大丈夫です」


 何でそんなことを聞くのかと思ったけれど、工房というのは個人個人に与えられているらしく、作業机と窯とテーブル、それから二人がけのソファーが置いてある簡素な部屋だった。


 確かに、狭い密室で二人で過ごすのは良くないのかもしれない。ライナーもいっしょだけれど。


 リオン様の工房は整理整頓され、清潔感のある部屋だった。

 さっき通りがけに見えた別の工房は、床中に書類や本やよく分からないゴミみたいな物体が散らばり、釜から怪しい黒い煙が出ていて驚いたけれど、リオン様の工房は、調べ物をしていたのか、山積みの本が置いてあるぐらいで、散らかってはいない。


 でも、ここはリオン様の仕事場である。こんな所まで勝手に入ってしまって良かったのかと、急に心配になってきた。


「あの、リオン様。私なんかがここまで入ってきてしまって良かったのかしら?」

「はい。エミリア様はリーゼロッテ様のご友人として、城への出入りの許可をお持ちですから、こちらへの出入りも平気ですよ。ご安心ください」


 そう言って微笑んだリオン様は、私とライナーの為に、ソファーとテーブルに山積みにされた本を慌てて片付けてくれた。


 「エミリア様。ライナーさんも、どうぞ座ってください。俺……あ。私がお茶を淹れますから」

「そんな、エミリアお嬢様とご一緒は出来ません。それに、お茶なら私が淹れます。私は執事兼用心棒ですから」

「では。お願いします」


 リオン様は使用人にも優しい。

 作業机から茶葉を出すと、どうやったのか分からないがポットにはいつの間にか熱々のお湯が入っていて、ライナーも驚いていた。


「あの。リオン様、今のは魔法ですか?」

「えっ? あー。ポットのお湯のことでしたらそうですよ。ポットに魔法がかけられているのではなくて、俺が、……あ。私の魔法ですが」


 リオン様の普段の一人称は俺、みたいだ。

 それから、パンは甘いパンばかり買っているから、甘党みたい。

 知れば知るほどリオン様の生態に興味がでてきた。


 

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