第一章01
第一章01
蝦夷の大地、現在の函館のあたりに一行は到着した。
「ここまで来れば大丈夫。今日はここで一泊しましょう。良いカシラ?」
「ここから王の住む都まではどれくらいあるんだい?」
「ソウネー。普通に行けば10日くらいカナ」
「そんなにかかるなら、急いでもあまり変わらなさそうだね。今日はここで一泊お願いするよ」
「そうしましょうネ。あ、そうそう。和人の地よりここは寒いから、寝具が必要だったら言ってネ。水は湧水があそこにあるから自分で汲んできてネ。厠はあそこネ。使い方がわからない時は聞いてネ。ゴハンができたら呼ぶからあまり遠くに行かないでネ。他に質問あるカシラ?」
「あの、つかぬ事をお聞きしても良いじゃろうか?」
「なぁに?ベンケーさん」
「アテル殿は、その、け、結婚しているのじゃろうか?」
「んー?まだヨ。なぁに?ベンケーさんがワタシの旦那様に立候補してくれるの?」
「えっ。わ、我でも良いのじゃろうか?」
「モチロン良いわ。でも、たくさん立候補者が居るの。近い日にワタシの結婚相手を決める催しがあるカラ、ソレに参加してネ」
「姫さん、それはどんな催しなんだい?」
「うーン。簡単に言うと、戦って一番強い人がワタシの結婚相手になるの」
「じゃあ、某も姫さんの婿に立候補しようかな」
「ななな!三郎殿!其方は結婚しとるじゃろうが」
「いや。あっちじゃ某は死んだ事になっているから、独り身なんだぜ」
「あー。それなら俺も死んだ事になっているから、立候補できるね」
「牛若殿もぉ!?其方には郷御前、静御前、蕨姫と3人も妻がいるではないか」
「そうだけど、今生の別れをしてきたし。奥さん一人増えたって3人も4人も変わらないじゃん」
「ぐぬぬぬ…」
「拙者も死んだ事になってるから、よいのか?」
「継信殿ぉ!?其方も妻子がおるじゃろぉ!何故じゃあ!」
「何故って?こんな美人を目の前にして指を加えて見てるだけってのはな?拙者も男だし?」
そんな男たちのやりとりを見て、アテルはクスクスと笑っていた。