序章05
序章05
快晴の春の陽気の空の下、鎌倉からの使者が平泉に到着した。使者は豪将で知られる畠山重忠だった。
泰衡は使者を丁重にもてなし、昨夜の事件を報告した。
「ほう。奇襲が成功して義経と弁慶を討ち取ったとな」
「二人の抵抗は激しく、我方にも多数の死者が出ましたぞ。しかし、多勢に無勢。四方を囲んで雨のような矢で義経を仕留め、その後武蔵坊を一斉に槍で刺して仕留めましてござる」
「二人の首はどこに」
「これにて」
泰衡の合図で首桶が運ばれ、二人の首実検が行われた。
矢と刀でズタズタになった傷だらけの首を見て、
「これでは二人の首と判らぬな。他に証拠品は無いか?」
「義経の所持していた印章と武蔵坊の所持していた七つ道具がござる。これへ」
合図で証拠品が並べられた。
「これらはまさに二人の所持品。これを見れば鎌倉様も喜びになるだろう。鎌倉へ持って帰るがよろしいかな?」
「勿論でござる。鎌倉殿によろしくお伝えくだされ」
「うむ。早急に鎌倉へ戻り報告いたす」
畠山重忠を見送ると、泰衡は腹心の国衡を呼んだ。
「使者が鎌倉に到着すれば首が偽物とバレるだろう。急ぎ将たちを招集してくれ。鎌倉が攻めてくる。奥州17万騎総力戦になるだろう。万全の態勢を整えて鎌倉軍を迎え撃つのだ」
「うむ。直ちに!」
国衡の部下たちは急ぎ奥州各地の有力者たちを招集するため、各地へ飛んだ。