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7話 これが彼らの最初の共闘だ。

「さて、どうするか」


 頭を抱えながら俺は呟く。この惨状を目の前にして、どう行動すべきか分からずにいた。先生は何も言わずに帰ってしまったため、聞こうにも聞けない。

 鼻から大きく息を吐き、腕を組む。必死に頭を回すが、やはり答えは出ることはなく俺はその場に座り込む。助けてドラ〇もん。

 とうとう架空の猫型ロボットに助けを求めるようになった俺に声がかかった。


「行くわよ。キメラ君」


 そう言った彼女は足早に荒れた店に進んでいく。こんな雑草だらけの中、進んでいくとか勇者かよ。独裁者×勇者ってこれまた凄い設定だ。ラノベの主人公なれそうやな。

 いつもの癖で余計なことを考えていると、彼女は俺が来ていないことに気付いたのかこちらに振り向き、不機嫌な形相になる。まあいつも不機嫌そうだけど。


「ぐずぐずしてないで早く来なさい」

「へいへい」


 小走りで彼女の左に行く。彼女は微笑みながら俺を見ており、かつ俺に自らの鞄を差し出している。

 さっすが傲慢王女。こんな時でも人を扱き使うことを忘れないでいらっしゃる。


「傲慢の権化だな」


 あえて彼女の目を見ずに呟き、鞄を受け取る。視界の端で彼女は満足気に頷くと、徐に左足を上げた。次の瞬間、俺の小指が激痛に襲われる。


「痛てぇぇぇ!!」


 激痛に耐え切れず叫んでしまう。まじ痛てえ! 俺の生活を支えてくれる小指様になんてことしやがるんだ! やっぱこいつクソ女だわ!

 俺は少し瞳を潤ませ彼女に恨めしげな視線を向けたが、既に俺は眼中に無い様子で店の扉の前に立っている。


 みやこの のぼりおおじへの こうかんどが マイナスに なった! RPG風に己に言い聞かせ怒りを抑え込む。こうでもしないとグーパンチが飛びそうだからな。

 そして俺は彼女への憎しみを募らせつつ、己のセンスに寒気を感じ、おとなしく扉に向かった。


 登大路の横に並び、俺は扉の前に立つ。そして彼女を横目で見ると、彼女は目を瞑って腕を組み仁王立ちしている。まあ態度から真意は読み取れた。傲慢の権化なだけあって、全て他人に丸投げしたいらしい。小指の犠牲を考え、おとなしく従い扉を開けようとバーハンドルに手を掛ける。




 ——おいおい、嘘だろ。




 思わぬアクシデントに咄嗟に彼女を見る。彼女も予想外だったようで俺の方を向く。彼女は俯き加減で呟いた。


「困ったわね」


 声が若干震えており、少し狼狽しているように見える。まあここに来てアクシデントなんて予想しねえからな。無理もない。

 何度も開けようと試みるも努力虚しく、扉は微動だにしない。


「これ蹴った方が速いだろ」

「いかにも蛮族らしい思考ね。そうやってすぐ実力行使に走ろうとするのは低俗の象徴よ」


 こんな時も煽ってくるとはな。ここまで来たら拍手喝采もんだわ。

 しかし今はそんな悠長なことを言っている暇はない。この扉の攻略が最優先事項だ。彼女もそれを察しているのか、その後は何も言ってこない。


「登大路」


 俺がぶっきらぼうに呼ぶと彼女は俺を見ずに答える。


「私の名前が穢れそうだわ。で、何かしら?」

「2人で一緒にやるぞ。それで無理なら諦める。それしかない」


 嫌な顔してるだろうなと思い横目で視線を向けると、顎を右の親指と人差し指で掴み俯いていた。嫌そうではないが、何やら考え事をしている様子である。

 彼女は小さく深呼吸し、目を瞑って口を開いた。


「それもそうね。協力してあげるわ。感謝しなさい」


 相も変わらず傲慢だが、協力してくれることに素直に感謝しておく。2人でバーハンドルを握り俺の掛け声を合図に渾身の力で押すと、次第にギギギと音を立て始める。


 ラストスパートを迎え、さらに強く押してやると先程までの頑丈さが嘘のように勢いよく開いた。急に勢いよく開くもんだから、2人で派手に転んでしまう。


 2人でお互いの野暮な姿を鼻で笑い合いながら視線を室内へ向ける。そして俺達は息を呑んだ。






 ——どういうことだ?






 扉の先に広がっていた景色に俺と登大路は思わず呆然としてしまった。

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