【20歳 如月 昔の女が勢揃い】
――さて、約束の日だ。
レースを終えた亜希を隆哉が迎えに来てくれて、一緒に律子の自宅へと向かう。
もうすぐ到着するという頃合いで律子に電話を掛けると、『マンション内の来客用駐車場を予約しているから、そのまま車で来ていいよ』と言うので、それをそのまま隆也に伝えると、隆也は律子のマンションまで黒塗りの車を走らせた。
マンションのゲートの前で律子の姿を見つけ、開けてもらったゲートを通り抜けて律子の案内で駐車する。
隆也がエンジンを切るのを待って車から降りると、亜希はすぐに律子の方に駆け寄った。
「律子さん、お久しぶりです!」
「久しぶりね、亜希ちゃん。お腹すいたでしょう。用意して待っていたのよ」
「わぁ、ありがとうございます。じつは、お昼あんまり食べられなくてペコペコなんです」
「良かった。いっぱい食べてね。未奈美がたくさん料理を作ってくれたのよ」
「なんだ、未奈美も来ているのか」
隆也も車から降りてきて、亜希の隣に立つ。
律子が先に立って歩き出したので、隆也と亜希は彼女について歩いた。
「前に話したと思うけれど、今、近くに住んでいるのよ。私の夫って、海外出張が多いの。未奈美の方もそうでね。それなら、お互い夫が留守の間は協力し合いましょって、お互いの家を行き来しているのよ」
「わぉ、昔みたいですね」
「そうよ。昔みたいに2人で子育てしているの。私も未奈美も、夫に留守にされる運命なのよねぇ」
律子が頰に片手を添えて言うと、隆也が脇腹を刺されたような表情を浮かべた。
ああ、と亜希は思い至る。戦乱の時代だったとは言え、峨鍈が妻子をおいて戦場に赴き、半年や1年帰らないというのはざらにあることだった。
蒼潤を娶りに互斡国に向かった時など、そのまま斉郡の叛乱軍を鎮圧したり、杜山郡に移ったりして、結局、梨蓉たちを斉城に呼び寄せて再会したのは2年後だ。
(2年も妻子を放置とか、ひどすぎるー!)
ちなみに、律子が『未奈美』と呼んでいるのは嫈霞のことで、彼女たちは中学校以来の友人なのだという。
未奈美の結婚は早く、亜希がまだ中学生だった頃に長女を産んでいる。その子は、嫈霞の長女だった柚の生まれ変わりで、もう6歳くらいになるはずだ。
「花音ちゃんも来てるの?」
「来ているわよ。芽衣ちゃんもね。それに、美桜と清香も来ているわよ」
「ええっ、みんなじゃん!?」
美桜とは明雲のことだし、清香とは雪怜のことだ。
律子と美桜は大学のサークルで先輩後輩として知り合ったらしく、大学卒業後も定期的に会ったりして、仲の良い付き合いを続けているようだ。
一方、清香とは、ずっと会えずにいて、ついに出会うことができたのは最近のことだ。
彼女はなんと就活のために隆也の会社に現れたのだ!
なので、一番最初に彼女に気づいたのは、就活生たちと面接をしていた隆也で、隆也から律子たちに伝わり、以降、律子たちと交流を持ち始め様子だった。
ちなみに、清香は来月、大学を卒業して隆也の会社に就職することが決まっている。
「じゃあ。今、律子さんの家には嫈霞と明雲と雪怜がいて、琳と軒、それと、柚と朋がいるってこと? それで、この後、驕が来るんでしょ?」
亜希が尋ねると、律子はエレベーターのボタンを押して振り向き、頷いた。
「そうよ。同窓会みたいでしょう」
「清香さん、昔のこと思い出した?」
「ええ、隆也さんが書いた本を読んで貰ったわ。――清香が隆也さんのことを好きにならないか、亜希ちゃん、心配だったでしょう?」
うっ、と亜希は言葉を詰まらせる。すぐ隣に隆也がいるというのに、この話題は気まずい。
だけど、亜希が振ってしまったようなものなので、隆也の方を見ないようにして頷いた。
エレベーターの扉が開いたので、3人で乗り込み、律子が7階のボタンを押す。
「こればかりは仕方がないんだけど、私も未奈美も、美桜もね、隆也さんと最初に会った時に、ビビッと来ちゃったのよ。『この人だ』みたいな不思議な感覚、亜希ちゃんもあったでしょ? それを普通は恋と捉えちゃうところなんだけど、そうなると、ややこしくなってしまうから、申し訳ないんだけど、清香には昔を思い出して貰ったわ」
清香だけではなく、未奈美も美桜も昔のことを思い出して貰っている。
律子の言う通り、彼女たちは皆、隆也をひと目見ただけで『この人だ!』と感じたのだという。
普通なら、そこから恋が始まってしまうところ、律子に読めと強制された本によって、思い留まったらしい。
そして、その本とは、かつて律子の提案で隆也が前世の記憶をもとに綴った小説本のことだ。
「だって、隆也さんったら、亜希ちゃんしか見えていないんですもの。昔はもう少し私たちのことも気を配ってくれていたけれど、今はね……、本当に呆れるくらいに他は見えていないんですもの」
そんな人を好きになっても虚しいだけだと、律子も未奈美も早々に他の人を見付けてしまっている。
「美桜にも良い人がいるみたいだし、清香にも清香だけを見てくれるような素敵な人が現れてくれると良いのだけど」
エレベーターが7階に到着したので、そこで降りると、律子は一度左に曲がってから真っ直ぐ歩き進んでいった。
いくつか扉を通り過ぎて、やがて律子は足を止める。上着のポケットから鍵を取り出すと、玄関の扉を開いた。
「はい、どうぞ。いらっしゃい」
「お邪魔します」
亜希が玄関の中に入ると、その物音を聞きつけて部屋の奥から小さな子供がとたとたと足音を立てて走って来た。
「あきしゃんだぁ!」
女の子が両腕を大きく広げて駆け寄ってきて、亜希に飛びつく。
亜希は驚きつつもその小さな体を受けとめて、にっこりとした。
「果凜ちゃんだよね? 大きくなったね。私のこと覚えていてくれたの?」
「うん!」
果凜は律子の長女で、3歳だ。
以前、会ったのは、果凜が2歳になる前だったので、果凜が亜希のことを覚えているはずがないのだが、果凜が得意げな顔をして大きく頷くので、亜希は嬉しいと言って果凜をぎゅっと抱き締めた。
「律子さん、私の動画を果凜ちゃんに見せているでしょ?」
「そうよ。いつも一緒にレースを見ているのよ。亜希ちゃんが映るたびに『亜希ちゃんよ』って教えているの」
あがって、あがって、と律子に言われて亜希は靴を脱ぐと、リビングに通された。隆哉も少し遅れてついてくる。
リビングに入って来た亜希に気付いて、未奈美と美桜が声を掛けてきた。
「亜希ちゃん、いらっしゃい。ちょうど完成したところよ」
「待っていたのよ。早く食べましょ」
未奈美はまるで自分の家のようにキッチンに立っていて、美桜はリビングのローテーブルに料理や食器を並べている。
清香はどこだろうかと見渡せば、リビングと直結した洋室で子供たちの相手をしている若い女の姿があった。――彼女が清香だ。
清香の隣に座って絵本を読んでいる大人しい雰囲気の女の子は、未奈美の長女の花音だ。
花音は亜希と隆哉に気付くと、ぱっと立ち上がって未奈美のもとに駆けていく。未奈美の腰元に抱きついて、恥ずかしそうに未奈美の後ろに隠れながら亜希と隆哉の様子を窺い見てくる。
果凜とは真逆の反応なので、少し寂しく思いながら亜希は清香に視線を戻した。
亜希と清香は今日が初対面だ。
亜希は人見知りではないし、比較的に誰とでも話せるタイプだけど、それでも相手がどういう印象を亜希に抱き、どういう態度で接してくるかは気になってしまう。
清香と目が合うと、亜希は僅かに表情を強張らせた。律子も未奈美も、美桜も口を閉ざしたので、その場に緊張感が走る。
想像していたよりも、ずっと若い。
それが亜希が抱いた清香の第一印象だ。まだ大学生なのだから若いのも当然で、おそらく亜希と2つくらいしか歳が変わらないはずだ。
白いふわふわのセーターに、短いスカートを穿いて、髪をくるくると巻いている。
ばっちりと化粧を施した顔を上げて清香が立ち上がり、リビングの方に移動してきたので、亜希も彼女に歩み寄った。
「初めまして。亜希です。――ええっと、久しぶり?」
『久しぶり』と言って良いものか、未奈美や美桜と初めて会った時にも迷った。
未奈美はすぐに破顔して亜希の両手を握ると、『お久しぶりです』と返してくれたし、美桜も亜希のことをぎゅっと抱き締めて『お会いしたかったです!』と言ってくれた。
はたして清香はどうだろうかとドキドキしながら待っていると、彼女は亜希の顔をちらりと見てすぐに隆哉の方に視線を移した。
「社長、お疲れ様です。今日は社長も来られるとお聞きして、お邪魔させて頂きました。どうぞ、こちらにお掛けになってください。何か飲まれますか?」
清香が隆哉の腕を引いて、ローテーブルを囲むように置かれたクッションに彼を座らせようとしたので、亜希は呆気に取られた。
我に返ると、バッと律子に振り返る。
(どっ、ど、どういうこと!? 律子さんっ!! 彼女、昔のことを思い出したんじゃないの!?)
ぱくぱくと口を開け閉めして律子に訴えると、律子も困惑したように首を振る。
未奈美も美桜も、あちゃーという顔をしている。
軽く無視をされた亜希が、もう一度、清香の方に振り向くと、彼女は隆哉の隣に座って隆哉の腕に片手を添えていた。
短すぎるスカートから太腿が――まるで見せつけているかのように――露わになっている。
(待って! 待って! 雪怜って、こんな感じだったっけ?)
凛としていて、奥の万事を取り仕切っていた梨蓉。
いつも穏やかに微笑んでいた嫈霞は、梨蓉の手が回らないことを引き受けていて、梨蓉の良き補佐役という印象だった。
それと同時に、分け隔てなく子供たちに優しい彼女はみんなの『お母さん』という感じで、蒼潤も彼女のことを慕っていた。
明雲はひとり息子の桓のことがとにかく大事だった。
梨蓉や嫈霞に比べたら、さほど賢くもなく、奥向きのことはいっさい任されていなかった。
そして、実家も雪怜に比べたら、そこまで力を持っているわけではない。
だから、明雲にとって息子と峨鍈からの寵愛だけが頼りで、峨鍈の気を惹こうと、何かと頑張っていたのを覚えている。
(だから、こういう感じだったのは、雪怜よりも明雲の方だったはずで………。いや、待てよ)
峨鍈は蒼潤を娶ってから大勢いた妾を手放したり、どんなに勧められても新しく妾を迎えることはなかった。
蒼潤と側室たちだけを傍に置いて、蒼潤を愛するようになってからは――側室たちの寝室にまったく足を運ばなくなったというわけではないが――蒼潤と過ごす夜の方が断然多くなっていたはずだった。
だけど、思い返してみれば、雪怜だけは蒼潤が正室になった後に峨鍈の子を産んでいる。
(じつは、雪怜って、蒼潤が気付いていなかっただけで、峨鍈に対してかなりアプローチをし続けていたんじゃない?)
亜希が茫然として立ち尽くしていると、律子が亜希の肩を軽く叩いた。
「亜希ちゃん、こっちに来て。旭に会って欲しいの」
「旭くん?」
はっとして亜希は律子を見やる。
今日の目的はいくつかあって、律子の2人目の子供と初めて対面するというのもそのうちのひとつだった。
「会いたい! どこにいるの!?」
「こっちよ」
律子は先程まで清香がいた洋室に亜希を案内すると、目線で指し示す。
見ると、フローリングの床の上にジョイントマットが敷き詰められていて、そのマットの上に赤ん坊が2人転がされていた。
「うわぁ、可愛い! 可愛いが2人いる!」
律子の長男の旭と未奈美の次女の芽生である。
この2人はわずか2ヶ月違いで生まれで、とても仲良しだ。
律子の話によると、どんなに大泣きしていても2人を横に並べて寝かせておくと、すぐに2人とも上機嫌になるのだという。
「私、てっきり先に生まれた果凜が琳で、次に生まれた旭が軒なのかと思っていたの。でも、旭を芽生ちゃんと会わせてみて、それが間違いだと分かったの。果凜が軒で、旭が琳よ」
だって、と律子が旭の傍らに膝を着いて言った。
「旭と芽衣ちゃん、本当に仲良しなんですもの。お互いにお互いの顔を見て、きゃっきゃっしてるのよ。今もほら、一緒に寝かせているから大人しくしているでしょ。これね、信じられないことに2人を引き離すと、ぎゃん泣きするのよ」
試してみせようかと言う律子に亜希は首を横に振る。
機嫌の良い赤ちゃんたちをわざわざ泣かせる必要なんかない。
「だからね、ちょっと疲れたなぁという時には未奈美に来て貰ったり、私が未奈美の家に行ったりして、旭と芽衣ちゃんを一緒に寝かせているの。おかげで、果凛の時に比べたら本当にらく!」
心底といった様子で律子が言い、自分の話をしていると気付いた果凛が駆け寄って来て、律子の背中に抱き着いた。
「果凛は今でも甘ったれで、その様子がまさに軒だわ」
「軒は大きくなってもずっと甘ったれでしたよね。末っ子気質というか……」
「そう。本当にそうだったわ。――それでね、亜希ちゃん。私、このことに気付いて希望を見出したのよ」
「希望?」
「ほら、昔は昴、琳、驕、軒の順番で産んだでしょ。驕はもういるとして、軒、琳ときたら、次は昴だと思わない?」
梨蓉には昴という早世した息子がいた。
律子はずっともう一度、昴に会いたいと言っていて、昴の生まれ変わりを産むことを願っていた。
亜希は、うん、と力強く頷く。
「そうですよ! きっと次の子は昴に違いないですよ。たぶん、律子さんの子供たちは、生まれる前の世界で自分たちの生まれる順番を話し合って決めたんです。軒は甘ったれだから、一刻も早く律子さんに会いたくて、2人に順番を譲って貰ったんです。琳は我慢強いから自分が最後でも良いって言ったんだけど、きっと昴が自分はお兄ちゃんだったからと言って譲ったんです」
亜希が語ると、律子は瞳を瞬き、それから、その瞳を細めて聞き入ってくれた。
その顔を見て亜希は、あっ、と言って自分の誤りに気付く。
「違った。たぶん、昴はこう考えたんです。前の人生では自分は早くに亡くなってしまって、梨蓉と過ごせた時間はとても短くなってしまったから、今度の人生では律子さんと長く一緒にいられるように最後に生まれようと思ったんじゃないかな。だって、末っ子なら、長くたくさん律子さんに甘えられるでしょ?」
「そうね。……ええ、きっとそうね」
律子は自分に抱き着いている果凛の頭を優しく撫で、それから、旭のお腹をぽんぽんと軽く叩いて微笑む。
「ありがとう、亜希ちゃん」
さあ、ご飯にしましょうと律子が果凛の肩を抱き寄せながら立ち上がった時だ。
リビングの方から剣呑とした声が響いた。
「清香、隆也さんの隣は亜希ちゃんの席よ。そこをどきなさい」
「そんなの決まってないでしょ。どうしても隣に座りたいと言うなら反対側が空いているじゃない」
「そっちは律子さんが座るの。ベビーチェアが置いてあるの見えるでしょ!」
「移動させればいいじゃないの。第一、席なんて自由でしょ。昔とは違って、身分なんかないんだから」
「そうよ、身分はないわよ。でも、夫婦が別々に座っていたら変じゃないの。隆也さんと亜希ちゃんは夫婦なの」
「そうかしら? べつに夫婦だからって、隣に座る必要なんかないわよ。別々でいいじゃないの」
何やら美桜と清香が言い争っている声が聞こえる。
確かに誰がどこに座るかなんて、昔のように身分で決まっているわけではないのだから、どうだっていい。
だけど、亜希は清香が隆也の隣に座って、彼にべったりくっついている光景を目にするのは、面白くなかった。
「律子さん。私、心が狭い……」
ぽつんと呟くように言葉を零すと、律子がさっと顔色を変えて亜希に振り返ってきた。
「狭くなんかないわ! 普通よ、普通!」
声を荒げて言うと、律子はリビングに戻り、キッと隆也を睨みつけた。
「隆也さん! 黙っていないで何とか言って!」
律子の声がビリビリと響き渡ったので、亜希は不安を感じて、律子を追ってリビングに戻る。
自分の器が小さいせいで、律子を怒らせてしまい、場の空気を悪くしてしまった気がした。
――だが、それにしても、どうして律子は隆也を責め立てているのだろうか。隆也は特に何も悪いことをしていないのに。
亜希が怪訝に思っていると、不意に隆也が肩を揺らして笑い出した。
「清香」
彼は清香の手を退けて、彼女から体を離した。
「亜希ちゃんを不機嫌にしてくれてありがとう。不機嫌な亜希ちゃん、本当に可愛い」
「はぁ?」
あんまりな隆也の言葉に、思わず亜希は声を発して、そして、絶句する。
清香も啞然としているし、未奈美も美桜も意味が分からないという表情だ。
隆也が亜希の方に視線を向けて手招いた。
犬か猫のように呼ばれた気がして、亜希はムッとなったが、隆也のもとに歩み寄る。
すると、すぐに腕を掴まれて抱き寄せられた。
「何すんの!? 離して!」
みんなの目があるのに、彼の膝の上に座らされて亜希は恥ずかしくて堪らなかった。
だが、隆也はぎゅっと亜希を抱き締めてくる。
「亜希ちゃん、嫉妬しただろう? 君は昔、俺が明雲や雪怜のところで休むと言ったら、けろっとした顔で『もうひとり娘が欲しい』と言ったんだ」
「……」
――言ったかもしれない。
はっきりとは覚えてはいないけれど、いかにも蒼潤なら言いそうな言葉である。
「嫉妬してくれる亜希ちゃん、可愛い。本当に好きだ。今すぐ2人きりになりたい」
可愛い、可愛い、と頬擦りをしてくる隆也に亜希は何とも言えない気分になった。
怒っていいのか、安心していいのか、はたまた、喜ぶべきか。
(ええっと、つまり、隆也さんは自分にアプローチしてくる清香をわざと拒まず、私の反応を見て楽しんでいたわけで、その点において私は怒っても良いわけだよね? そんで、隆也さんはまったく清香に靡く気持ちがないわけだから、そこは安心して良いんだよね?)
これだけ好かれていることを喜ぶべきなんだろうけど、なぜだろう、素直に喜べない。
「隆也さん、離して。膝から降りたい」
「だめ」
「でも、ちっちゃい子たちが見てるし!」
果凛と花音が興味津々という眼差しを向けてきていた。
それに律子たちの前というのも恥ずかしい!
その時。ばんっ、とテーブルを叩いて清香が立ち上がった。
「私だって、前世で妻でした! 運命だって思ったんです! この出会いは運命なんだって!」
声を荒げた彼女に場が静まり返り、皆、息を呑む。
清香は皆の視線を集めて、握り締めた拳を震わせた。




