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出会いはいつも桜の木の下で  作者: 大川暗弓
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起こし

久しぶりの投稿!四日連続でこの深夜一二時に投稿したいと思います!

 僕の周りの人の目には世界がどんな風に見えているのだろうか?極彩色か、あるいは単色か、それとも全く何も見えていないか。唐突にそんなことを自分の中で自分自身に投げかけてみる。自分で答えない限り、その答えは返ってこない。


 ーー僕に見える色は.......





 「はあ、なんでみんなあんなに入学式から緊張している様子も無しに元気に登校しているんだよ....。」


 今日は久音高校の入学式だ。僕はまさにその入学式に出るために初めての登校しているわけだが、周りの様子がどうやらおかしい。どうして、みんなそんなに緊張感がないのか。

 別にお年寄りのように最近の若者というやつは、などと彼らを批判するつもりはない。その逆だ。僕にとって彼らは羨ましいのだ。中学とは違って、環境は変わるし、見知っている友達も少なくなる。勉強だってついて行けるか分からないし、先生だって怖そうにしか見えない。

 そんな状態なのに、なんで彼らはそんなに楽しそうに出来るのだろうか。

 友達と登校しているからかもしれない。高校に知っている先輩がいるからかもしれない。

 そんなの僕だってそうだ。今も俊哉と海斗と登校しているし、知っている先輩だっているが、僕は不安で仕方が無かった。

 でも、それ以上に心配なのが色だった。


 ーー僕に見える世界は”灰色”だ。


 別に色覚障害とかそういうわけではない。ただ、この世界がどうしようもなくつまらないのだ。だからこその灰色。それは決して誰からの目からに鮮やかには見えない不遇の色。何かが欠けてしまったそんな感覚。まあ、もともとそんなもの持っているはずも無いんだけどさ。

 そして生まれてくる疑問だ。隣に並んでいる俊哉と海斗も含めて、なんであんな楽しそうに登校できるのか。きっと、僕には理解出来ない極彩色の世界が見えているのではないのか。僕は灰色のこの世界から抜け出されるのだろうか?


 僕の住んでいる地域は入学式と同じ時期が桜の開花の時期とたいてい重なる。上を見上げると地域の名所の桜並木が悠々と立ち並んでいる。桜は満開と呼べるまでではないが、木の枝が見えなくなるくらいには咲き茂っていた。そんな怖くなるまでに永遠と続く桜並木の中に一つ、周りの木とは一線を画す雰囲気を纏う一本の樹がある。


 「ーーーあれだ。」


 つい、心の中の言葉が口に出てしまった。

 木々の一本一本は遠目に見れば高さも同じで平凡にすら見える。しかし、あの「樹」は違うのだ。


 ふと、あの「樹」を見ると、目が合った気がした。

 刹那、僕だけを威嚇するように強く風が吹き、輝く太陽に照らされた鈍色に光る灰色の桜の花びらが肩をかすめて通り抜けていく。

 全く僕が何をしたって言うんだよ。


 そこに一人、灰色全く帯びていない純粋無垢の色味の少女が桜の木の下に立っている。決して誰にも説明出来ない、そして理解もされないだろうが、彼女は灰色の世界で唯一の存在だと僕には分かった。彼女のしなびやかな髪は強く吹く意地悪な風でさえ、自分を飾る一部の装飾とでも言うように、ふんわりと美しく揺れ、桜の樹を通り抜ける木漏れ日が彼女の髪を桜色に染めていた。

 そして僕は不覚にも彼女に病的なまでに惹かれた。それは偶然か、必然か、


 ーー突如、僕の見る世界が桜色に染まった。


 そう、これは僕が知ることの無かった偽りの物語。彼女が紡ぎたかった真実の物語。



 「おーーい。どうした。脳でもフリーズしたか?」


 「まあ、いいや。どうせ可愛い女の子でもいたんだろ。先行ってるぞ。遅刻しないようにすぐに来いよ。」


 僕は二人の言葉をほぼ聞き流しながら、これでもかと言うほど彼女に意識を持って行かれていた。

そのまま意識を引き釣りながら、僕の足は彼女の元へと誘われた。


 より近くに見ると、その美しさは本物だと確信した。肩より長く伸び、毛先でふわっと内側に巻いた髪と恐ろしいまでに人を惹きつけるであろう顔立ち。そして、その制服越しからでも分かるすらっとしたモデルじみた体型はまさに魅力の固まりだろう。


 「...........。」


 一瞬の間。それが僕を冷静にさせる絶対的な時間だった。

 冷静になった僕は困惑し、目を彼女から逸らそうとするが、体は正直で僕の目は彼女の方を見たままだった。

 しかし、彼女の前に来たのは良いものの、別段何か目的があるわけでも、話したい事があるわけでもないのだ。


 彼女は桜の樹の生えるすぐそばに立って、僕を見下ろすような形になっていて、僕は見上げる形だ。彼女は天使な佇たたずまいで、僕には美しさ故に彼女がこの世のものとは思えなかった。


 刹那、彼女の瞳から一筋の涙がこぼれた。

 彼女はそのことに気付いていないのか、表情は依然とさっきと同じままだった。


 「初めまして。君は?」


 「僕は、その、灯通とうつう葵あおい。君は?」


 「やっぱり、そうなんだ......。私は咲良さくら。新城咲良。」


 「それで、なんで泣いてるの?」


 「泣いてる?」


 咲良は自分が本当に泣いているのを知らなかったような素振りで、頬に手を当てた。そして、手がうっすらと濡れたのを見て驚いたのか、黙り込んだ。


 「えっと、気付かなかったのか。自分でも。」


 咲良はこくりと頷き、続けた。


 「私もう、行かなきゃだから、そのごめん。」


 そういって、彼女は学校の反対方向の道に走って行った。

 でも、なぜ彼女は僕と同じ制服を着ているのに学校とは反対方向に走っていったんだろうか。それだけが大きな疑問となり、遅刻しそうな僕の頭の中を占領した。

 ――――結局僕はこのとき、もっと大きな疑問に気づけなかった。





 僕は結局、高校初日にして遅刻ぎりぎりの時間で学校に着いた。

 入学式を終え、クラスの部屋に入ると、そこには朝も見た顔ぶれが二人楽しそうに話していた。


 「おー、葵。結局普通に間に合ってんじゃねえか。」


 「いや、普通じゃないよ。全速力で走ってきて死にそうだったわ。」


 「その割にはけろっとしているじゃねえか。」


 「まあ、俊哉と違ってほぼ毎日走らされているからな。」


 「お前ってなんか、運動していたっけか?」


 「そういうのじゃねえんだよ。」


 「じゃ.....


 そこで担任と思われる割と若めな感じの男性教師が入ってきた。落ち着いていそうな印象で、葵としても熱血の体育会系教師よりよほど、ましだった。しかし落ち着いているタイプの教師は怒ったり、ある出来事があったりすると性格が豹変する可能性もあるので、注意は必要だが。

 しかし、問題はそこじゃなかった。俺はあいつを知っていた。少なくとも何個も年の離れているのに、「あいつ」呼ばわりできるほどには。

 俺は少し特殊な事情であいつはその事情で俺の上司に当たる人間だった。あいつから学ぶことは出来ても、尊敬できるような人間ではなかった。


 「今日から一年間、このクラスの担任を担当することになった狩屋かりや人正ひとまさだ。本来の担当科目は国語だが、少し事情があってみんなの授業を持てない。もちろん学校にはいるので、相談などはいつでもしてもらって構いません。」


 ここで一人の責任感の強そうなクラスの女子生徒が手を上げる。

 このクラスの全員が、疑問に思ったであろう教師の授業を持てない事情を聞いた。

 僕はその事情を知っている一人であったので、その疑問よりもこの子がいずれクラスを引っ張っていくクラス長にでもなるんだろうなと考えていた。


 「実家で自営業をしている父と母がいるんだが、私がこのクラスの担任に決まった後、母の方が病気で倒れてしまってね。母は会社の管理をしていたから、僕が学校の業務の傍らそのお手伝いをしなければならなきゃいけなくなってしまってね。学校に特別措置として授業を免除にしてもらったんだ。」


 完璧な言い訳だった。担任に決まった後に家族が倒れてしまったのは仕方がないし、もう一度担任を決め直すのも大変なんだろうというのは15歳となろうしている少年少女には察するのは容易だ。ただし、実状を知らないものに限るが。

 正直、僕は笑いを堪えるのが精一杯だった。

 自営業? ――――やつの父親は普通にサラリーマンだ。

 母が病気?――――昨日会ったが、めちゃくちゃ元気だった。

 特別措置?――――学校に強制的にそうするよう脅しただけだろ。


 ただ、葵として”あの仕事”を知っている人間が学校にいてくれるのはありがたくはあったので、あいつの猿芝居を笑いを堪え続けて、高校初めてのホームルームを終えた。



 ホームルームが終わるなり、海斗が駆け寄ってくる。


 「やっと終わったぜー。葵、俊哉、帰ろうぜ。」


 「俺ちょっとトイレ寄ってくから、二人とも昇降口で待ってくれない?」


 二人の了解を得た後に、僕はトイレに急いだ。漏れそうだったからじゃない。その理由は、


 「やっと来たか。遅かったな。そんなんじゃいつまでも初心者だな。」


 狩屋さんだ。やつはそっと僕の机の中に場所と時間を書いた紙を入れていて、ここに来いと言うことだろうと察したが、僕は5分時間を遅れていた。


 「うるさいな。それより狩屋さんの猿芝居の方が初心者だろ。」


 僕は少し狩屋さんに対抗して、言ってみるが、正直この人に口勝負で勝てる人はいないんじゃないかと言うほどにこの人は手強かった。まして、簡単に張り合って言い相手ではなかった。しかし、このときは気にくわない気持ちの方が勝った。


 「それはお前が事情を知っているからだろ。ったく、上の奴らが無能すぎなんだよ。いくら一年だけだからって、理由のこじつけ適当過ぎるだろ。」


 狩屋さんは眼鏡をかけてはいないが、それでも黙っていれば真面目と勘違いされるほど顔は真面目に見える顔だ。口を開けばたちまちそのキャラも一瞬で消え失せるが。


 「それで、なんでこの学校に来た?」


 「そんなの言うまでもないだろ。お前がこの学校に来ているからだろ。俺らの中でもお目は特殊体質だからな。上も野放しには出来ないんじゃないか。ま、知らねーけど。」


 刹那、こおっーと冷たい風が吹き抜けるような音がする。このトイレは窓も開いていないのに。


 タスケテ.....タスケテ...........................


 何もないはずの壁から半透明になった男性の姿をした霊が足を引きづる様に葵の方に迫ってくる。すかさず、葵はポケットから札を取り出し、霊に貼り付けた。


 「安らかに眠れ。」 


 すると、霊は体が透明な砂のように空中に巻き上げられながら、消えていった。


 パチッパチッパチッ。

 意識を霊から現実世界に戻すと、目の前の男が気持ち悪く笑って拍手をしていた。


 「いや、お見事。お見事。流石に一年ちょっともやれば手つきや態度も落ち着き払ってきますね。」


 「慣れてたまるかこんなこと。」

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