再会は死の近くで
一章八 [再会は死の近くで]
「クールソード。」
「…?」
怖い人とさっきの綺麗な女の子が殺伐とした雰囲気の中で戦っている。
怖い人は魔法のトリガーを唱えたようだ。
「急に切りかかるとは君はやはりサツガイのプレイヤーか?」
女の子が問いかけるが怖い人は気にもとめていないようで無視しながらナイフを持って集中している。
そのナイフに魔力が集中するのが僕でも分かった。
やがて魔力は冷気となりナイフは冷気を纏った文字通り氷の剣になった。
「無言は肯定と見なす、」
怖い人のその反応に怒りが来たのか女の子は怖い人の所にゆっくり少しずつ速度を上げながら近づく。
よく見るとその手には長刀が握られており相当な気迫が感じられた。
さっき出会った時には無かったと思うがその長刀はひどく錆びついていてすでに使えない物として見える気がする。
しかし、
この人ならあの怖い人を倒せる気がすると思う。
こんなところで解説をしている自分にうんざりだ。
だが今出たら速攻でサツガイされる気がして出れない。
「いくぞ、はっっっ!!」
女の子が先手を取ったようだ。
その手に握る錆だらけのボロボロの長刀で一閃。
やった?!
見事な一閃だった。きっと部活は剣道だろう。
並みの人間なら絶対に避けきれないその一太刀なら怖い人でも倒せると思った。
しかし
「………」
怖い人はなおも余裕の表情で健在していた。
あの一太刀をかわし、距離をとったのだ。
常人離れしているその避け方に驚きだ。
「!?」
女の子もとても驚いていそうだ。
「早い!?」
怖い人が無言で女の子の方に歩き突然いなくなった。
否、攻撃を仕掛けたのだ。
「むっ!!」
それを剣で守る。
説明するのは簡単だがどちらもすごい反射神経がすごい。
そういえば回避する姿の気配すら感じられなかった。これは背筋に悪寒が走った。
もし女の子が自分であったら一太刀入れられただけでサツガイされていただろう。
これは確定だ。
攻撃を防がれたと言うのに動揺もしてない様子の怖い人は先ほどと同様に攻撃する前のところで女の子をずっと見ていた。
そして腰を低くした。
この体勢は攻撃の体勢だと気付いた。
しかしさっきと違うのは一瞬だけ
「クールレイン」
という魔法が聞こえたことだ。
魔法にしては小さすぎる声に気のせいだと思えるが警戒している女の子の後ろからさっきと同じ魔力が集中するのを感じる。
これはいけない。
「後ろだ!」
「!?」
あ、……
思わず叫んでしまった。
怖い人が女の子の方へ行かずに素早く方向を反対に、つまり僕の方へ切り替えて体重を前へ倒したあの体勢を向けてきた。
女の子は僕が言ったことで気付けたのであろう後ろに怖い人によって生成された氷の牙を剣で切って対処していた。
やがて対処し終わると女の子は路地の出口を走って進んでいって行った。
最後に助けてよかったなあ。
悔いはない僕のような人間が人を助けられた事だけでも自分ではいいと思っている。
目を閉じて最期が来るのを待つ。
しかし数秒たっても最期は来なかった。
あの怖い人ならもうとっくに僕を斬っていてもおかしくない。
ゆっくり目を開けると眩しさで目を開けられなかった。目をこすってもう一回目を開けるとそこはさっきいた路地ではなく始めの、人が大勢通ったりしている場所だった。
突然のことに驚いていると唐突に後ろから声を掛けられた。
「馬鹿者、急に叫ぶな、奴に危うく斬られるところだったぞ。感謝をしろ。」
「はえ?」
素っ頓狂な声を出してしまった。
「なんだ?人の顔をじっと見て、脈ありか?」
展開が追いつけないしとても先ほど戦っていた時の気迫が感じられない。
「なんで…?」
「こんな所にいるのかという質問か?」
はい、とどう見てもタメにしか見えないのにそう呟いてうなづく。
その事に気を良くしたのか上機嫌で質問に答えてくれた。
「君が私に魔法の発動を教えてくれた後、私は路地を出るため走ったのが見えただろう。」
またうなづく。
それが一人だけ逃げたのではないことくらいはここにいて生きている時点で察しはついていた。
「あの後すぐにここに出て私はワープの魔法を唱え君が斬られる間一髪のところで君をここにワープさせた、というとこだ。」
なるほど。
僕が生きている理由はよく分かった。
「すいません、助けてくれてありがとうございました。」
「ああ、それはいいんだが…」
目を細くして悩んでいる様子だ。
「どうかされたんですか?」
「このゲームのことだ。」
あ、そういえば。
難を乗り越えたので忘れていたがこのゲームのことだ。
第一目標は同じ人と出会うこと…
もう達成してるわ。
だとしたら。
「名前はなんですか?」
唐突すぎたかもしれない。
悩んでいる人にこういう質問をするのは違うと思うが今言う事にした。
「ゲーム名はアルだ。」
「えと、僕の名前は…」
いや、と手を僕の方にかざした。
まるでもう知っているからいいと言っているようだ。
「君、それ学校指定の制服だろ。」
僕が着ている服は言われた通り学校の制服だ。学校を今日は休んでこのゲームに専念しようと思ったためとりあえず制服だけ着てしまったが土壇場で学校を休むと決め着替えるのが面倒くさいのでそのままだったのだ。
そして僕の制服には当然名札が付いている。
ということは…。
「察しがいいなそういうことだ。」
いつの間にか僕の目線を観察していたようだ。
「しばらく私と行動しろ。」
そう言われた。
断る理由もないしそれが目的でもあったのでもちろん、と言ってもう歩き始めているアルの後ろをついて行った。
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現在の場所はさっきから少し離れて宿屋が近くにあるゴミ置場。
「やはり二人だけでは心細いな、他にも誰か人を探す必要がある。」
自分も思っていたことを言われた。
「そうですね、自分もそれがいいと思います。」
「それと剣がなくなってしまった。」
ん?
アルは剣の鞘からたのボロボロの長刀を取り出してそんなことを言っていた。
「そりゃボロボロでもさっきは使えてたじゃないですか、大丈夫ですよ。」
さっきの防御や攻撃に耐えたところを見るとまだ大丈夫な気がする。
「いや、さっきのやつの魔法にやられた 。」
「え?」
「見ていろ。」
アルは剣で近くにあったゴミ箱のような物を斬った。
1秒経つとゴミ箱のような物は綺麗な断面を残し2つになってしまった。
なにを見せたかったのだろう。
「やはりか。」
パリン、という嫌な音が聞こえて発信源を見るとそれはアルが持っていたあのボロボロの長刀だった。
いや、長刀だったもの、だ。
もうそれはさっきの一撃で朽ち果ててしまったようだ。
残っていたのは剣の柄だけだった。
「やつの魔法には武器破壊の効果が付属して付いてたようだ。」
そうアルが解説してくれた。
「これはあの路地でたまたま見つけたものでな、これを持っている間にやつに襲われたんだ。」
嬉しさと忌々しさをアルの言葉には感じさせた。
「でもとりあえずはこの宿に行きましょう、もう夕暮れ時ですし。」
それにもしかしたら同じにがいるかもしれない。
「ああ。」
お金はどうやら最初から持っていたようだ。
質素な小さいラウンジを通って受付に言って部屋の鍵を渡される。
「あ、お客さん、今満員だから相席になるよ。」
「別にいいよな。」
「はい。」
部屋に向かい鍵を開けると相席の相手がいた。
「あの、相席になりました、よろしくです。」
「あ、はいこちらこそです。」
そこにいたのは白髪、いや銀髪と言った方がいいだろう魔法使いの軽そうな装備をしたかわいい少女がいた。