2人の冒険者
1章11「2人の冒険者」
朝のこの町はひどく静かだ。
まあ当然だろう。朝と言っても今は4時、明け方というやつだ。
鳥の声も、通りの冒険者も、昨日けつ触ってきたおばさんの悪気ないあの声もなく、俺の息を吸う静かな音と道を踏む足の音だけだった。
いや、間違えた。俺達だ。
多分俺1人だったとしたら臆病で貧弱な俺だけここを歩いていたとしたらすぐに引き返していただろう。
「ドグマさん、誰もいないですね。」
だが、今は1人ではない2人だ。
無言の俺の心境をまるで読んだかのようにカズキは俺に話しかけてきた。
「ああ、めずらしいな。」
俺と同じ黒髪、茶色の瞳、大人しそうな顔立ち。
こちらに対していつも敬語で話しかけてきたことを考えるとリアルでもきっとこんな感じでやって来たんだろう。
「でも、こんな朝に武器を装備した男2人が歩いてると犯罪者にしか見えないですね。」
「それは俺も思ってたから言わないでくれ。」
スルー、スルーだ。ニートで犯罪者とかシャレにならない。今日の目的を思い出せ!
よし、おけ解説始めるぞ。
今回の討伐目標はスライムなどではない。
なんと混沌の王 ラクシャーサだ!!
ここに来て1番異世界ファンタジー臭がした言葉である。
混沌の王?なにそれすごいかっけえんだけどこれ討伐するしかないでしょ。
とか昨日思ってたのに先越されたし。
しかもワンパンてなによ、俺の異世界ファンタジー返してよ。
とか昨日寝る前に実はめっちゃ考えてたんだよね。
アイツで倒せるなら俺でも倒せるんじゃね?
俺の『習得』はレベルが上がったので7つ覚えられるしこの間1回スライム倒した時使ったが8回の『無発』も残っている。
ツガイヤーがいたとしても感知してすぐに逃げることが出来る。
これは行けるでしょ!
「でも、あの時のアルさんは真面目モードでしたよ。」
あの時確かに外で2人だけ、という真面目に入る条件をクリアしている。
少し不安になってきたが大丈夫だろう。
「前にも話した通り、アルさんの真面目の時はとても強くてですね。」
多いに不安になって来たんだが…
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昨日も出ていたのだが今日の夜中にトイレに行く時確認すると4時から出現とあった。
連日漬けだと!?
これは討伐せよと言わんばかりの神のお告げだ!!
そう思ったんだけど。
「どこにラクシャーサはいるんですか?」
「スライムに化けてるからな、スライム斬ってれば見つかるだろ。」
「そうですね。」
言った通りそこら辺にいるスライムを倒していく。
すると…
「ん?ドグマさん、こいつは…」
来たか!?
「どうした?まさかラクシャ…」
「いえ、スライム特種です!」
特種かよ!!
剣で斬る。レベルが上がった事により、剣のスキルも上がっている。
例え特種だとしても俺のレベルだとワンパン可能なのだ。
「ヨイショ!」
おし、さすが特種だ経験値結構入ったぜ。
さて、ラクシャーサ探し、ラクシャーサ探し…
「は!ドグマさんこいつは!」
来たか!
「スライム亜色種です!」
「色違いかよぉぉぉぉ!!」
まあ多分めずらしいよ。でもね、違うんだって!
当たり前のように斬り掛かるが、色違いはやはり一筋縄ではいかないらしく一撃は無理だったようだ。
「ぷきゅ!」
ぷきゅ…?
不味い、これはデジャブが…
「あ、待っ…ごふぅぅぅぅぅ!!」
走馬灯だろうか、前にもこんな事があったような。
「!?ドグマさん!」
ああ、カズキも心配してくれている。
「う、死んでしまった。僕が不甲斐ないばかりに。せめてドグマさんの物だけでも僕の物に…」
「いや、死んでねえよ!!つか盗むな!」
心配などしてなかった。
「ヨイショ!」
でもさすがカズキ。
冗談だったようで俺より真っ先にスライムの元へ向かい無事に倒したようだ。
でも俺よりスライムの方へ先に行くとは…
「大丈夫ですか?カズキさん。」
口ではそんなことを言っているが、顔が心配してないんだが。
「ああ、ありがとう。」
差し伸べられた手を取って立ち上がる。
「まあ時間はありますし、余裕を持って探しましょう。」
ニートだったけどこの世界に来てから前より全然疲れなくなった気がする。
これはゲーム神のお陰だろうか。
だとしてもアイツがやったのなら皮肉しか感じない。
こんな考察をしてるのも今はラクシャーサを倒す為だが、元を辿ればアイツのせいだな。
「見つかりませんね…」
「もしかしたら…」
もう討伐されているのだろうか。
確認して見るが画面は相変わらず混沌たる王 ラクシャーサの討伐、だけで討伐されているとは全く書かれていない。
「あのドグマさん、もう七時ですよ。」
「うそ!?マジかよ、出てきた意味がないだと?!」
ニートだから慣れているがこうも早起きした意味が無くなると絶望するんだが。
「あの2人、まだ寝てんのかな?まあアルは寝てるだろうな。」
いつも俺よりは早く起きているが多分アルはまだ寝てるだろ。
「あ、ドグマさんは知らないんでしたね、ヴィアさんは起きてますし、アルさんは意外に早起きですよ。」
「…マジ?」
有り得ない、俺ですら出来ないぐうたらぶりを昨日とこの間の夜、約1日だけで見せつけられこいつにはクレイジーニートの肩書きを持つ俺でも勝てないな、と負けを認めた程なのに…
俺はこいつにぐうたらでも勝てないのか…
「あ、でもアルさんが早起きしてるのは食い意地張って早く朝飯食うためですよ。」
勝った!!
「何を競ってるのか分かりませんが、僕にはアルさんもドグマさんも同じように見えますよ。」
「俺頑張るから、それは勘弁してくんね、な?」
たった3日くらいでこんなに仲良くなるものなんだな、と思いながらコントみたいなことをやっていきながらスライムを狩っていく。
やがて30体くらいになるスライムを狩ろうとするとガッ、と剣が1回弾かれた。
するとそのスライムは十メートルくらいまで大きくなって行き、こちらを狂気に満ちた赤と紫の混沌の目で睨みつけて来た。
「ドグマさん、これは…」
「カズキ、これがラクシャーサか?」
「はい!昨日見た姿と一緒です!」
「よし、支援魔法を掛けてろ!その間俺は前に上がってる!」
「了解です!」
カズキのジョブは『協力者』。
支援魔法や全属性の初級魔法を得意とする小回りの効くパーティーに1人は欲しいジョブであった。
昨日スライムを狩りまくった俺達はレベルが上がり、カズキは色々な魔法、スキルを覚えた。
今回はカズキのスキルの初陣となる訳だ。
早速カズキは自らと俺に防御力、攻撃力増加の支援魔法を掛けたようだ。
これでカズキと一緒に前衛に立ち攻撃できる。
さらに消費魔力が少ないウルミニは魔力が少ない俺でも使える為、それで積極的に攻撃できるという訳だ。
「ウルグ・ミーニスト!」
俺の腕の筋力が増加され攻撃力となり、さらに剣の刃の長さも太刀程の長さに拡張される強いスキルだ。
消費対価が倍になる俺のジョブでも唯一『無発』を使わずに済む消費対価が少なくても使えるスキルだった。
恐竜みたいな足、筋肉がしっかりついた腕に、俺の体の1回りも、2回りも、それ以上ある頭、そこについた何でも噛み砕きそうな強靭な歯。
そんな異世界ファンタジーに俺は挑んだ。
「まずは、足だ!!」
効果を受けた剣でラクシャーサの足に全体重を掛け一閃する。
血がぶわぁ、と出て斬る前の俺がいた所へ飛び散る。
ラクシャーサの方へ顔を向けるが。
「ゴォォォォォォォ!!」
ラクシャーサは全く効いていない様子で咆哮する。
カズキが覚えたての熱魔法で咆哮している頭を狙い撃ちするがなおも咆哮を続けるということはこれも効いていないといないという事だ。
「くっそぉ!アルはワンパンじゃなかったのか?!」
「アルさんは恐らくスキルを使って倒したんだと思います!あの人はあの時1番スライムを倒してレベルが上がっていました!」
こっちもスキルを使っているのに!
「くそ、カズキ!どちらかに敵のタゲを貰って貰った方は攻撃に耐え、もう片方は攻撃し続けるんだ!」
「分かりました!」
どちらかが耐え、どちらかが攻撃する、そんなアバウトな戦い方をしていた。
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やがて三十分程経ち、俺達もラクシャーサも風前の灯という奴だった。
「はぁはぁ、カズキ!もう少しだ!頑張れ!」
「まだ行けますよ!」
そんな感じで俺達は意思を固め合い、また攻撃に移ろうとした時だった。
「カズキ!ドグマ!やっと見つけたぞ!ん?後ろにいるのは昨日のモンスターか。よし、私がたおしてやろう!」
アル?!
え?
ちょ、待って!!
「アビス・ミーニスト!!」
アルは飛び上がって異世界ファンタジーの頭の高さまで行き、魔法のようなスキルのようなものを唱えると、一太刀入れた。
「GWARーーーー」
機械音みたいな声を発し、異世界ファンタジーは地へ頭から倒れ、死んだ。
俺達の夢を壊したアルはひと仕事終えたようなすがすがしい顔でこちらへ来た。
「危ない所だったな!私が来たお陰だぞ!ん?どうしたんだ?」
そんな姿に俺が憤っているとそれに今更気づいたアルは何の悪びれをもなく、話しかけてきた。
「俺達の夢を壊しやがって、殺す!!!」
「うわぁ!?な、なんだ!!」
「お前少しは空気読めよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「いや、お、お前が夜逃げなんて書いたからだろ!?」
「ふふ、」
そんな中で1人笑うカズキはひどく滑稽だった。




