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第7話 事務次官

 ちょっと短いです。

 翌日。

 今日は、外務省の今村事務次官と話し合う日だ。前に小野池外務大臣と話した時はいいように話をまとめられていた。しかし、安斎は今回は今村の思うようにはいかないようにしなければいけなかった。もちろん、今村と徹底的に対立するわけにはいかない。そのあたりをうまく対応して何としても安斎として出した答えを伝えることにした。


 「今村次官、お疲れ様です。さあ、どうぞ」


 総理官邸で今村次官を迎える安斎。


 「ありがとうございます」


 今村は表面的には笑顔を取り繕って挨拶をしてくる。そして、握手をする。今村はそのあと椅子に座る。安斎も続けて座る。今村は、足を組むようにして座った。その態度は一国の総理にするような態度ではないのは明らかであるが、安斎はあえて指摘しなかった。

 これは、おそらく挑発だ。

 安斎はそう思った。ここで、今村を注意したらいけない。今村は、安斎が自分に指図をすることを嫌っている。だから、ここで指摘されれば安斎には非がなくても怒る。怒って今回の安斎から話を聞くこの会談を中止にし自分の意見を外務省のひいては日本の外交の意見として韓国に伝えるはずだ。それだけは何としても避けないといけない。今村は日本にとっての売国奴。安斎の今村に対する認識はすでにそういったものになっていた。だから、今村に主導権だけは握られたくはなかった。

 安斎も笑顔で最初はどうでもいい話から始める。主導権を握られないようにまずはこちらから話を積極的に降ろうと考えたのだ。


 「ところで今村さん。実は私まだ誰にも言っていないのですが、近いうちに内閣改造をしようと考えているんですよ。このタイミングでの改造はどう思いますか?」


 安斎はまだ側近にも言っていない内閣改造の話を今村に振ってみる。今村は安斎から内閣改造の話を振られてもさほど驚いた様子はなかった。なるほどとうなずく程度の反応だった。


 「そうなんですか。しかし、私みたいな普通の事務次官に内閣改造の話をしても意味がないでしょう。どうしたんですか?」


 意味がない。

 やはり安斎は自分の話に何か裏があると思われたようだ。


 「そんな意味がないなんて。実は次の内閣改造でサプライズ人事として今村さんにでも入閣してもらおうと考えておりましてどうでしょうか?」


 「私が入閣? それはまた安斎総理も冗談がおうまいことで」


 「冗談ではありませんよ。私は今村さんには今の日本の重大な危機に本当に必要な存在なんです。確かに今村さんとは私とでは対韓政策は大きく異なっています。しかし、私も学びました。自分の意見が少し偏っていたということを。やはり外務省の専門家の意見をしっかりと聞かないといけないと学んだのです。ですからぜひとも内閣改造した暁には外交問題担当の大臣に就いてもらいたいと思っています。どうですか?」


 安斎は今村に閣僚のポストをぶら下げる。官僚の今村はきっと事務次官の方が裏から操れるから断るだろう。しかし、断った手前さらに自分の意見を言うなんて無礼なことはできないはずだ。閣僚のポストをもしも受け入れたとしてもそしたら大臣として総理の意見を聞かなくてはいけない。今村はどっちにしろ追い詰められた状態となったのだ。

 今村は安斎からの言葉にしばらく返事をしなかった。おそらくは、どうこたえるべきか考えているのだろう。今村の額からは汗が流れていた。珍しく手も震えていた。安斎はその様子を見て今村にかなりのプレッシャーを与えることができたんだと思った。

 安斎からしては自分と意見の違う今村を閣僚にすることはあまりしたくはなかった。しかし、安斎が今村にお願いした大臣ポストは外交問題担当大臣であって外務大臣ではない。つまりは、外交問題について意見を求める特設の大臣に就いてもらうだけであって従来の外交については外務大臣にになってもらう。露骨に事務次官を別の人にするための人事であったのだ。ただ、このあたりのことは今村も安斎よりも頭がいいから気づいているだろう。安斎は早稲畑大学出身。それに対して今村は東京国立大学出身だ。東大出身の今村の方がキャリアが上だ。一応早大も私立の雄であるがそれでも叶わない学歴の壁というものがある。


 「……」


 今村の唇が震えている。いや、強く噛んでいる。それほど屈辱なのだろう。自分よりも下の学歴の奴に命令されることが。安斎はそう解釈した。実際に今村がどう考えていたのかというと安斎が思っていたことを同じであった。

 この総理の言うことに従うべきか。いや、総理あいつは早大、私は東大だ。それにどのみち安斎内閣に入閣したところで私には何のうまみもない。でも、今この提案を断ったとしたら次に総理から提案されることを断り辛くなる。むしろ、総理の狙いはそっちにある。だったら、私にとって何のうまみもないこの提案に乗るべきか。そもそも私が早期帰還を進めるのもこの国のことを思ってだ。あの右寄りの総理はその所が分かっていない。自分が気に食わないことをすべて左翼のせいや売国奴だと押し付ける。こっちが、何十年この外交畑で育ってきたと思っているんだ。世界は日本と韓国だけではない。ほかにもアメリカ、中国、イギリス、フランス、ドイツ、アフリカ、アジアなどなどたくさん国がある。たった一国の相手をずっとする必要なんてない。そもそも私からしてみてもあの国をいっぱい相手にしてもいいことがあるとは思っていない。むしろ、総理は嫌がるかもしれないが中国の相手をした方が日本としての利益はあると思う。遠くない将来世界はアメリカと中国の二大覇権から中国一強になると私は踏んでいる。そのためにもこの問題はさっさと終わらせたいのだ。

 だとしたら、大臣としてある程度影響力を持つ方がいい。陰から影響を持ってもマスコミじゃあ取り上げてくれない。そうすると表から影響力を持つことにしよう。決めた。


 「わかりました。大臣の職に任命してもらえるとなれば私は最後まで自分の職務を全うする所存です」


 「ありがとう」


 その後、安斎は日韓問題についてどうすべきなのか今村の意見を再び聞いた。外務省としての考えではなくて今村個人としての意見をだ。今村は今頭の中で考えていたことを率直に話した。安斎はその話をずっと静かに聞いていた。その話が終わると安斎は自分の意見を言うこともなく話を終了した。

 今村はどうして自分の意見を安斎が言わなかったのか気になったが、それ以上追及することもできず外務省の庁舎へと帰っていった。

 安斎は、その様子を一人焦ってみていたのだった。

 明日以降は毎日投稿はしていません。一応、第8話以降の構想の練り直しにより月曜日に挙げられると思いますが、18時に投稿することはないと思います。目標は20時です。

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