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第6話 経産大臣

 翌日。

 今日は閣議がある日である。閣議は通常毎週2回火曜日と金曜日に開かれている。今日は、金曜日であるため通常の閣議が開かれる日だ。閣議は実はすでに議題は開かれる前に決まっている。そのため、各内閣で提出する法案などに国務大臣が署名する作業がほとんどであるためサイン会と揶揄されることもある。もちろん、そのあとは閣僚同士で自由に議題を話し合う場というものも存在している。

 ここで、蛇足的になってしまうが安斎改造内閣の閣僚について見ていきたいと思う。


 内閣総理大臣 安斎真一

 副総理・財務大臣・内閣府特命担当大臣(金融担当) 朝間太郎

 総務大臣・地方分権推進担当 石川雅博

 法務大臣 白浜拓夢

 外務大臣 小野池健治

 文部科学大臣 大泉信一郎

 厚生労働大臣・年金問題担当 小山治美

 農林水産大臣 山本浩二

 経済産業大臣・経済再生担当 松方権蔵

 国土交通大臣・水循環担当 石田淳

 環境大臣 池田多聞

 防衛大臣 森本香織

 内閣官房長官 細川勝弘

 国家公安委員会委員長・内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当・防災担当) 前原芳樹

 内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当・科学技術政策担当・宇宙政策担当) 松原論

 内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当・知的財産戦略担当) 神田洋二

 内閣府特命担当大臣(少子化対策担当・男女共同参画担当) 村山紗希

 内閣府特命担当大臣(原子力行政担当) 野田健二


 これが、安斎改造内閣の閣僚だ。

 すでに何人か出てきているが、安斎からしては派閥均衡の人事を考えないといけないためやむを得ず入れた人というのもいる。例えば、


 「安斎総理いいですか?」


 閣僚同士の意見を交換する場閣僚懇親会になると安斎に声をかけてきた人物がいた。男である。


 「なんでしょうか? 松方経済産業大臣」


 松方経済産業大臣。

 平和党内で最大派閥政治民主研究会(上田派)の所属している衆議院議員だ。しかも上田派の事務局長を務めるなど重鎮である。69歳。当選回数は7回。茨城4区選出。しかし、いまだ未入閣であった。そのため、入閣待機組をどうしても入閣させた上田会長の圧力により(入閣させないなら内閣を支持しないと言われた)入閣させた。松方は親中・親韓派の筆頭とも言われている。そのため、安斎とあわないのは目に見えていた。時折内閣において対立することがある。おそらく、今日もそのことについてだろう。


 「韓国経済との、摩擦を避けるためにも何としても大使を帰還させませんか? このままでは日本経済に悪い影響が出ますよ」


 やはりそうきたか……安斎はそう思った。

 松方は経済産業大臣である。経済に全く素人というわけではない。が、韓国経済に思いやりを持ち過ぎた。確かに日本経済と韓国経済には密接な関係がある。例にしてみればスマートフォンの制作で有名なサムソンはスマホの外はサムソンだが、中身は日本製であり日本の様々な企業の精密な技術で作られた電子機器が用いられている。日本のアニメ制作においては下請け会社が韓国にありよくエンディングクレジットで韓国人の名前があるということもある。そういったことも考えて両国の経済というのは密接にかかわっている。しかし、アニメの例は今後日本がクールジャパンを推進するうえで下請け会社に補助金を与えるなどして振興させようと安斎は考えている。となるとだ。安斎は、日本と韓国どちらの国が依存しているかと考えると韓国の方が日本に依存していると考えている。韓国ナンバー1の企業にして日本の力がなければやっていけないのだ。そのことを考えると日本の方が優位だ。あの国と最悪国交を断絶してもあっちが音をあげるだけだ。

 ならば、経済摩擦が起きても仕方ない。


 「大使の帰還はできない。向こうが少女像を撤去しない限りは。日本はいつまでも歴史の敗者としていていいのか。それに歴史問題云々よりも大使館の前に業務を妨害するものを設置してはいけないとウィーン条約に書いてあるだろう。我が国はその条約を破っていることに対して怒りを表しているのだぞ」


 安斎は、松方に言う。

 松方は安斎に食い下がろうとする。


 「しかし、世界から見れば日本は何をやっているのだと絶対に言いますよ。それに、少女像の撤去を言っている時点で歴史認識がとか絶対にアメリカは言ってきますよ」


 松方が言うことには確かに一理はある。アメリカは日本がこの手の話になるといつも歴史認識が誤っているなどと言って日本に取り合おうとはしない。ついこないだもアメリカのとある州の像撤去の訴訟で日本人が敗訴するという事件が起きた。アメリカにとって日本は所詮駒。安斎はそのことをひどく痛感していた。


 「確かにそうかもしれないが、そのことをいつもアメリカ側に日本の立場を訴えている。だから、その場でしのぐことはできるはずだ」


 「いつも訴えてもその度に誠に遺憾であるや、失望したなどとアメリカの報道官が表明することの繰り返しですよ。ここは日本側が大人の対応を取りましょうよ」


 「そうやっていつも日本が引くからいいように扱われるんだ。日本はもっと世界に対して物を言えなくてはいけない。私はそう考えている。だから、総理になって2年の間に多くの国に外遊をしたんだぞ」


 安斎と松方の意見の擦れ違いはかなり大きかった。もはや意見の交換どころか論争いや、剣か状態ともいっていいようなものになっていた。そして、その2人の中に割って出たものがいた。


 「総理も経産大臣も少し落ち着きましょうよ。2人の意見が対立することによって起きることは平和党が一枚岩ではないということをマスコミに印象付けてしまうだけですよ。安斎総理は内閣が倒閣して困りますし、松方大臣は69歳にして初入閣したのにすぐに大臣の座を捨てることになりますよ。その年齢であると二度と大臣の座は回ってこないと思いますが。あなたももっと大臣を歴任して最後は総理になりたいと考えているのであればここは総理を立てないと」


 2人を止めたのは石川総務大臣だった。


 「おい、石川。若造が偉そうに年寄りを説教するな」


 松方は石川に注意されたことに極めて不愉快であると表情に出した。


 「そう怒らないでくださいよ。私はあなたのことを思って言ったのですから」


 「怒ってなどいない。年下に言われたことが気に食わないだけだ」


 「それを怒っているというのではないのでしょうか?」


 石川は、松方の言い分を聞いて少し呆れていた。ちなみに石川の方が年下であるが閣僚の経歴を見ると石川の方が完全に上だ。松方は今回の経済産業大臣が初入閣。それまでは平和党政務調査会長、広報部長を歴任している。一方の石川は国家公安委員会委員長、外務大臣、そして総務大臣を歴任。平和党の役職でも幹事長、政調会長を務めている。

 政治家の世界においてあまり年は関係しない。当選回数が少なくても年がいっている人もいれば年が若いのに当選回数がかなりいっている人もいる。年の割に大臣をやってない人もいれば、若いのにかなり大臣の職を歴任している人もいる。そういったこともありあまり年というのは関係していない。松方は自分の年だけで政治家としての職歴があると無駄なプライドを持っているタイプである。

 

 「話がずれていますよ。それよりもここは閣僚懇親会の場です。喧嘩をするなら出て行ってください」


 ついに細川が注意に出る。官房長官である細川も松方より年下だ。松方はさらに不機嫌になる。


 「まったく、松方さん。あんた年下から注意されて怒るなんてその程度の器なんだな」


 「何だと!」


 朝間がいい加減に松方に注意した。朝間は安斎内閣で最高齢だ。


 「本当だぞ。いい加減にしろ。松方。最悪私は今総理がお前を更迭すると言ったら全力で賛成に回らなくていけない」


 朝間に続いてこの内閣で二番目に高齢の白浜法務大臣も松方をけん制する。

 さすがに、自分よりも年上の2人の大臣に注意されたことで松方はおとなしくなる。そして、用事があるのでと言って一人退出した。

 安斎はその様子を見て完全に呆れていた。


 「これは、内閣改造も考えないとか……」


 安斎のぼやきに今重要案件がある中改造は避けたいが、それでもこの内閣が閣内不統一に終わるぐらいであったら内閣改造をした方がいいのではないかと他の閣僚も思ったのだった。

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