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ソウル・シャウト・ジェネレーション  作者: ますたか きょうたろう
第三章
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【4】雨

 本校舎一階のエントランスホールの一角。ソファが並ぶ小さなラウンジに真斗たちの姿があった。

 朝から降りしきる雨は未だ衰える気配を見せず、不規則な打音と共にエントランスのガラス壁を多くの雨粒で覆いつくしている。

「……となると、やはり怜奈先輩には心当たりはないんですか?」

「ええ……。確かにこれは私にとっては大切な物だけど、そんなに高価な物とも聞いてないし……誰かに狙われるようなものじゃないと思う」

 昨夜の怜奈のストラップを狙ったとみられる襲撃。ひとまずは事なきを得たが、謎は残ったままだ。

 あの後、伸びていた男の一人から事情を聞きだしたところ、男たちは袴田の部下などではなく、金で雇われていたり、袴田に弱みを握られていたりと理由は様々ではあるが、いずれも一時的に協力したに過ぎない、いわゆる寄せ集めとのことだった。そして男たちを引きつれ襲撃を企てた袴田だが、スコーピオンという人物からの指示で動いていたらしい。

「怜奈にも見当がつかないんじゃ、袴田……そしてスコーピオンってやつがストラップを狙う理由は考えてもわかり様がないわね。それで、そのスコーピオンってのを少し調べてみたんだけど……」

 雅美はホルダーの間でも顔が広く、独自の情報網を持っていた。真斗が聞いたところ、ホルダーのコミュニティにも裏事情などを扱い生業とする情報屋は居るらしい。雅美はおそらくそういった筋で情報を得てきたのだろう。

「『スコーピオン』という名前なんだけど……なんでも『ユーTOPIAトピア』とか言う組織のメンバーの一人がそう名乗っているらしいわ」

「U-TOPIA?」

 初めて聞く単語だ。怜奈が聞き返す。

「ええ。情報屋でも詳細は掴めていないようだけど……『21』をいち早く所持していたホルダーの一部がそう名乗る組織に組しているらしいわ」

「となると、袴田もU-TOPIAのメンバーなんでしょうか?」

「そこまではわからないわね。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわ。それより衝撃だったんだけど……」

 もっともと言えばもっともだが……雅美のどうにも的を射ない回答に思わず真斗は唸る。

「どうしたんですか?」

 怜奈が真斗に代わってその先を促す。

「あの袴田って男、実はうちの大学に在籍してる大学院生なのよ」

 !? 思わず真斗と怜奈は顔を見合わせる。

「学校のデータベースで検索したんだけど……本名は『袴田はかまだ あきら』。経営情報科学研究科所属の一年よ」

「それって……!」

 真斗が身を乗り出す。

「……ええ。宝條先輩と同じ」

 ――宝條茜。

 昨夜、真斗たちを尾行し空き地へと誘導、その後、雅美の一撃を弾き袴田の逃亡を手助けした男。このことから二人が協力者なのは明白と言える。しかもそれが同じ所属の大学院生同士……他の雇われた男たちとは違った関係であると予想するのは決して不自然な考えではなかった。

 真斗は考えを巡らせる。ソファに座る怜奈は黙ったままだが、おそらく同じことを考えているのだろう。

 もしや……宝條先輩がスコーピオン……!?

 真斗がその可能性を口にしようとした矢先、エントランスホールから男性の声がかかる。

「やあ、君たち。……実は話したいことがあるんだが……ちょっといいかね?」

 真斗が振り向くとそこには、いつものように穏やかな表情を浮かべ佇む、磯崎教授の姿があった。

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