表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「ないたAKAONI」ショートショート

 昔々、人里から少し離れた山の奥に「赤鬼」と人々に恐れられている化け物がいました。

 「赤鬼」は体が大きく、全身は血のように紅く、その力は森の木々をたやすくなぎ倒す程。

 人々は赤鬼を畏れ、人里に下りてこないように幾晩も祈り続ける事さえありました。

 青鬼がやってきました。赤鬼は青鬼に相談します。

「ワタシハニンゲントトモダチ二ナリタイ」

 赤鬼はその無表情な顔つきで青鬼に相談します。

 青鬼は考えます。思考を巡らせ、親友の赤鬼の為にできることを考えます。

 そして、ある一つの答えにたどり着きました。

 何度シミュレーションしても同じ答えにたどり着きます。

 どうしたものかと一旦躊躇しますが、青鬼は親友の赤鬼のためにそのシミュレーション結果を伝達します。

 赤鬼は困惑します。

「ホントニイイノカ?」

 と青鬼に聞き返しますが、青鬼の決心は固いらしく、頷くだけです。

「ワカッタ。ヨロシクタノム。」

 こうして赤鬼と青鬼は人間と仲良くなるための作戦を決行します。

 

 人里。

 人々はその昔厄災があったことを忘れ、その実活躍した「赤鬼」と「青鬼」が人類のためどのような働きをしたか、そのようなことも全て忘れ生活していました。

 人々にとって知らないその大きな「赤鬼」と「青鬼」は脅威でしかありませんでした。

 太陽が高くあがったころ。

 けたたましい爆音と共に青い機体が人里に降り立ちます。

 ゴゴゴゴゴゴ。

 身の丈10メートルはあるその青い機体は鋼鉄の足元から火を噴き地面に着地しようとしています。

 とうとう青鬼の作戦が実行されるときが来たのです。

 青鬼が人里に降り立ちました。そして物言わぬ大きな青い鉄の塊は眼から白い閃光を放ち、空家に当てました。

 空家は「カッ」と閃光に包まれたかと思うと、大きな炎となり変わりました。

 人々は悲鳴をあげ、逃げまどいます。

 そこへ赤鬼がやってきました。星と星の間を行き来することのできるほどの強さの真紅の鋼鉄を纏い、青鬼と対峙します。

 赤鬼は口を開きます。

「モウ、ダイジョウブ。ワタシガキタ。」

 人々は驚き赤鬼を見上げます。

 赤鬼と青鬼は人に危害が出ないよう少し離れたところで互いの体をぶつけ合います。

 その度、金属と金属が弾ける音。

 ガキーン。バキーン。ゴゴゴゴゴゴ。

 青鬼は体からモクモクと煙をだし、腕は取れ、縺れる大きな足を引きづりながら退散します。

 人々は歓喜し、赤鬼を讃えます。人々の赤鬼に対する恐怖は消え去りました。

 赤鬼は満足げに表情の変わらない鋼鉄の顔を赤く染め上げます。

 こうして人々と赤鬼の間に壁は無くなり、人里に赤鬼が来ることを誰しもが喜びました。

 赤鬼はしばらくして青鬼を探しに行きました。

 しかしどこにもいません。

 重力探査波、気が遠くなるほど昔に使われていた衛星電波、あらゆる手段を使っても青鬼は見つかりません。

 そこに赤鬼へ時限式のメッセージが送られてきます。

「赤鬼君。これを読んでいる頃、もしからしたら僕を探しているのかもしれない。僕は君よりも旧式だから、音声を人々に伝えコミュニケーションを取ることはできない。だから君に託すことにした。君が人間たちを守ってほしい。そして、かつての歴史のような争いを排し、平和な日常を作ってほしい。心からそう思う。僕の残りの時間はもうない。だから伝える。赤鬼君、幸せに。かつて僕たちを作った人間が最初に思ったように。あとは頼む。 送信元AO―ONI Z700系Ⅱ式 送信先 AKA―ONI Z1000系伍式」

 赤鬼はなきました。轟々と音を立てなきました。

 そして決意するのです。

 五千年前の大戦のようなことを二度と起こさないと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ