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勇者と魔王~2人で始める国創り~  作者: 黒猫庵
第2章 神の大地と自由への解放
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勇者、一斉検挙いたします。

『皆様、お待たせ致しましたぁ!!シルヴィア王妃生誕記念武闘会、シルヴィア杯間もなく開演です!』


マイクの様な魔導具を片手に響き渡った可憐な少女の声に、爆発する様な歓声が会場を揺らした。


『実況はお馴染み、熱くなっての罵詈雑言はご愛敬!砂漠姫狐(フェネック)族のリングアちゃんとぉ!!』

『ブーイングなんて聞こえません!ハートはミスリルで出来ております!栗鼠(リス)族のユグルムちゃんでお送りして参ります!!』

『ではでは、シルヴィア杯の概要を…』


闘技場の盛り上がりを会場の外で聞きながら、マップに表示された要注意人物の動向を確認する。マップ上の赤いマーカーが付いた要注意人物の数は約30人程。現在、私は屋台で買った串焼きを食べながら彼等が動くのを待っていた。


あの後、ザイン様は鎮守の森で神獣、聖獣達にこの一件の決着を自分につけさせて欲しいと土下座で懇願した。勿論、難色を示した彼等だったが…最初に是と言ったのは、他でもないフェンリル夫妻だった。当事者たる彼等が頷いたことで、許されはしたものの余計に中途半端には終わらせられない…なんだか、自らを追い込んでいるザイン様が少し心配。


余談だけど、当初の目的だった聖獣の身体の件はルシオラ様のお墨付きも有ったことで快諾してもらえた。森の苗床になるのも新たな精霊の苗床になるのも然程変わらない…と言うのが彼等の言だった。少しでも後ろめたく思うなら、その分世界に貢献してくれれば良い、だって。


話が逸れたが、神獣達と話した後…今度は緊急部族会議が開かれた…と言っても、開かれたのは3日後。会議は表向きシルヴィア杯開催に関する話し合いで、処罰に関する事は一切話されていない。3日間で出来るだけ情報をかき集めたけど…まだ完璧とは言い難いので、情報と物証が揃うまでは秘匿することになった。


ザイン様はこれを機に国内の不穏分子を一掃する考えらしい。これには私も賛成。"何もなければこのまま放逐しておいても良かった"と言ったが、私は遅かれ早かれ潰す気で居たからだ。


「これだけ警備を武闘会に割いて穴を空けてもらったんだから、しっかり尻尾掴ませて欲しいなぁ…」


わっと一層大きな歓声が闘技場から上がる。恐らくはユトゥルナ様とオリヴィン様が特別ゲストとして紹介された頃合いだろう。2人にもカモフラージュとして協力を願った……大量のお酒と果物を貢いで。大精霊が観覧、運が良ければ祝福を…と事前に情報を流したので、客席も参加者も超満員だ。


「ん?」


闘技場を見上げ、視線をマップに戻したところで赤いマーカーが1つ消えた。それを皮切りに1つ、また1つ消えていく。


「動き出した!」


串焼きを慌てて食べきり、串をくずかごに放り投げると彼等が集まっていた場所へと急ぐ。


辿り着いた場所は、小さな小屋。マーカーが全部消えたのを確認して中に入ると、生活感も人の気配も消え失せていたが、魔法の残滓が辺りに漂っていて小屋の中心に光を失いつつある魔法陣が彫り込まれていた。どうやら、ここは彼等の拠点の1つらしい。


「転移陣か。行き先は……」


視線を走らせ、転移先を確認すると魔方陣自体は床板ごと粉々に砕いて耳元に手をやった。


「モーレスさん?聞こえる?」

『っ、は、はい!』


驚きと緊張を滲ませた声の主は、ザイン様とシルヴィ様の長男のモーレスさんである。


「動き出したよ、そっちに転移した。」

『了解しました。』

「……ふふ、やっぱり慣れない?その魔導具。」

『…はい。』


彼には予めイヤリング型の通信用魔導具を渡してあるが、どうにも耳元で声がするのに慣れないらしい。


「すぐに私も向かうから、足止めよろしく。」

『はい、夜宵さんもお気をつけて。』


きりっとした声に戻ったモーレスさんに笑みをこぼしながら通信を切った。


「さて、一斉検挙と参りましょうか。」


手足をほぐし、犯罪者を追って転移した。







身を包む風が緑の香りから潮の香りへと変わり、強い海風がフードを剥がして髪を乱した。眼下に港に停泊する船とその内の3隻を検分する兵士さんの姿が見えた。随分と上空…高度100m位の所に転移したみたい。


3隻の船は、1隻がキャラック船、2隻がキャラベル船だった。調査(スキャン)すると、睨んだ通り過ぎて溜め息が出た。


「ばっちり現行犯逮捕出来そうだね。」


しっかりと確認をし、船から少し離れた人目に付かない場所に降り立って髪を外套の中に押し込んでフードを被り直してから、小走りで船へと向かう。


船の検分をしている兵士さんは、1隻につき5人位。その他に積み荷や人数に関する書類を確認し、船団長に話を聞いて居るのが3人位居る。お手伝いをお願いしたのはモーレスさんを含めて約50人程。その大半は、現在待機中みたいだ。


モーレスさんを探すと船団長と話してたのがそうだった。近付いていくと、モーレスさんの方が気付いてくれた。モーレスさんは、さらりとした白髪と褐色肌はザイン様似、アクアマリンの瞳やすっと通った鼻筋等、顔の作りはシルヴィア様に良く似ている。引き締まった細身の体躯は均整が取れており、立ち振舞いは美しい。因みに種族は獅子族で姿は人寄りだ。


「確認取れたよ。」


にっこりと笑ってモーレスさんの隣に並ぶと、船団長が怪訝な顔をした。


「助かります。」


モーレスさんが船上に居る兵士さんに目配せすると、彼等は頷いて船から次々に降りてき、モーレスさんが船団長に書類を返した。


「それでは、私共はこれで。」


人好きのする笑みを浮かべた猫の船団長は、ぺこりと頭を下げて踵を返した。


「………どこに、行くの?」

「はい?」


私の掛けた声に、船団長は振り返った。


「この船、どこに行くの?」

「アストルムですよ、お嬢さん。」

「何を運ぶの?」

「果物や雑貨です。」

「ふぅ~ん…」


相手には口許しか見えないだろうけど、にっこりと笑みを浮かべて船を見上げる様にして船体に近づく。


「それにしては、随分と大きいね?しかも、3隻も。」

「こちらから運ぶ荷より、アストルムから運んでくる荷の方が多いんですよ。」

「本当にそう?」

「……どういう、意味でしょう?」


ぺたり、と船体に手を付く。


「こういう、意味。」


笑って言ったのと、手を付いた場所から波紋状に衝撃波が走って粉塵が舞ったのはほぼ同時。


船体にぽっかりと開いた直径3m程の穴の向こうに居たのは、船底の狭い部屋にすし詰めにされた獣人を始めとした亜人の人達。あ、ちゃんと内側に結界を張ったから、彼等に怪我は負わせてないよ?


「あらら?彼等は誰かな?」

「どういうことか、説明願いましょうか。」


先程までの穏やかな様子とは打って変わった低く、威圧感を感じる声でモーレスさんが問う。こういうとこがザイン様に似てるんだよなぁ…って思う。


「……くっ…」

「…船上の魔導師のお兄さん方?動くつもりなら…容赦しないよ?」


船上に向かって威圧と殺気を放つと、その場にへたり込んだのが気配で分かった。モーレスさんが片手を上げると待機していた兵士さん達がバラバラと出てきて包囲する。


「海に飛び込むのは、お薦めしないなぁ。ねぇ?」


じりじりと後退しようとしている猫の船団長に笑いながら言って海面を指すと、ざわりと波立って幾つもの水柱が渦を巻いて上がり、竜の形をとって彼等を取り囲んだ。桟橋や船の上で呆然とする彼等を睨み付け、かぱっと口を開いた。


「「「「ひいぃぃ!!!」」」」

「………ありゃあ…気絶しちゃった。」


やり過ぎたかな、とやや反省しつつ兵士さん達にも手伝ってもらって気絶しちゃった悪党共を縛り上げ、捕まっていた人達を救出した。


次は尋問タイム、ですよ☆


スランプです…展開にやや悩み中…です。

ここを終わらせるのにちょっと時間掛かりそうです

(/´△`\)

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