勇者、初めての眷属精霊。
ユトゥルナ様に後ろから抱き締められる様にして、私は眷属精霊の儀式に挑むことになった。
「しぃっかり…姿を思い浮かべてぇ…?」
囁くユトゥルナ様の声に瞼を閉じる。
フェンリルの子供は、きっと淡く光る白銀の毛並み。火の属性だから炎みたいに揺らめいてて…尻尾とか手足はもっと温度の高い濃い青……。
「思い、浮かべられた…かしらぁ…?」
「……うん。」
「子供達の身体に触れてぇ…魂を、感じるかしらぁ…?」
瞼を押し上げてそっと子供達の身体に触れると、確かにそこに魂が在るのをより明確に感じた。
「小さくて…とても、冷たい…」
「そぅ…じゃあ、夜宵ちゃんの力を注いであげて…?火を灯す様な、感じよぉ…。」
「火を、灯す…」
そっと小さく冷たい魂に手を伸ばし、抱き締めて暖める様にして力を注いだ。角に力が集まっているのか、額が熱い。
「そのまま…身体の隅々にぃ、夜宵ちゃんの力を行き渡らせて…?」
言われるまま染み込ませるように力を行き渡らせると、子供達の身体は淡く輝きながら形を無くして卵の様に丸くなった。
「……産まれて、おいで。」
3つの卵をそっと撫でて囁くと、本物の卵の様に薄い殻が割れて中から私が思い描いた通りの姿をした子狼が姿を現した。
「………成功、した?」
「えぇ、お疲れ様ぁ…夜宵ちゃん…。」
私の頭を撫でながら労ってくれたユトゥルナ様の声に、はあぁ~…と長い息を吐いた。
『アァ…』
感極まった声に視線を上げると、フェンリルの夫妻が涙を溢していた。
「お父さんとお母さんの所に行っておいで。」
子狼達の頭を一撫でして促すと、3匹はわふっ!と嬉しそうに吠えて、転がるように両親の元に駆けていった。
『夜宵』
子狼達と両親の様子を微笑ましく眺め、立ち上がった所で後ろから声を掛けられた。振り返ると、グランディス老がぼろ泣きしながら立っていた。
「ぐ、グランディス老?!」
『す、すまんのぅ…歳を取ると、涙脆くていかん…ぐす…。』
「あらあらぁ…」
クスクス笑うユトゥルナ様は、いつの間に蛇の姿に戻ったのか…再び私の肩に乗ってグランディス老を見上げていた。
『皆に代わって礼を言う。』
グランディス老、そしてこの場を囲んでいた全ての神獣、聖獣が頭を下げていた。
「ちょ、止めて…頭上げて!」
それに慌てたのは、私だけ。考えが纏まらない頭で言い訳を考える…って、何で言い訳を考えてるんだろう??
「えっと、えっと…そう、打算があってやったことだから!だから、お礼を言われることじゃ…っふぎゃ!!」
突然後ろからのし掛かられて、地面に思い切り鼻と額を打ち付けて目の前に星が散った。
「いった~…」
痛みに悶えてると、のし掛かる重さが消えた。涙目で振り返ると、子狼達が慌てた両親に抱えられて抑えられてた。子狼、とはいえ聖獣だ…大きさは、ライオン位ある。不意を突かれて飛び掛かられればこうなるわけである。
赤くなってるだろう鼻を擦りながら子狼達を睨むと、耳をぺたんと寝かせてしょんぼりとした顔…可愛くて悔しいから、3匹の内の1匹の顔をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。
「まったくもぅ…後で遊んであげるから、大人しくしてなさい!返事!」
「「「わっふ!!」」」
嬉しそうに、千切れんばかりに尻尾を振る子狼達に周りから笑みが零れた。
『その子らは、連れて行くのか?』
「うん?」
撫でて、撫でてとすり寄ってくる子狼達を撫で回しながらグランディス老を振り返る。
「連れてかないよ?」
『良いのか?』
「また、こんなことがあったら大変でしょう?ダフネさんのこともあるし…だから、ここの守護に置いていく。」
『……スマナイ。』
本当にすまなそうにフェンリルの父親が頭を下げた。すっかり落ち着いて、ちゃんとした人の姿となった彼の姿が記憶の中の何かに引っ掛かって僅かに首を傾げた。
『……?ドウシタ?』
「ぁ、ううん…何でもないの。ともかく、この子達を置いていくのはあなた達だけの為じゃないよ?さっきも言ったけど、打算もあるし。」
『…いったい何を望むと?』
「うん、とりあえずその話は後で。」
のし掛かられた時に1人避難してたユトゥルナ様を、ジト目で見遣りながら肩に乗せ直してグランディス老を見上げる。
「先に瘴気がどこから来てるのか確かめて、ダフネさんの浄化もして…ザイン様に報告してくる。」
『王にか…』
何故かグランディス老は顔をしかめた。
「うん…犯人も探さなきゃいけないし…。」
『それは、既に判っておる。』
「そう、なの…?」
ざわりと周囲の空気が怒りに震えた気がした。
『はっきりと、個人を特定出来た訳ではないが…子狼らを殺めたのは、間違いなく…獣人じゃ。』
思ったよりも…さっくり儀式が終了しちゃいました。なんだか、ノロノロな進み…ですがもう少しお付き合いください(>_<")




