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勇者と魔王~2人で始める国創り~  作者: 黒猫庵
第2章 神の大地と自由への解放
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勇者、耳を疑いました。

「お久しぶりです、シルヴィア王妃。」

「シルヴィと呼んでくれ!」


ばっと身体を離し、涙を浮かべながらにっこりと笑ったこの人こそ、ザイン様が溺愛するシルヴィア王妃その人である。


ハニーブロンドにアクアマリンの瞳、すっと通った鼻筋にぷるぷるの桃色の唇、スレンダーなモデル体型でどちらかと言えば中性的な容姿、服装も男物のブラウスにベストとピッタリとしたパンツにロングブーツ。女子校に居たら…いや、そうでなくても女子に騒がれそうなタイプのシルヴィア様だが、ぴこぴこと嬉しそうに動く丸耳と豹柄の長い尻尾がとっても可愛らしい。


「本当に、本当に…君にもう一度会えて、私は嬉しいよ!」

「ご心配ばかり掛けてしまってごめんなさい。」

「良いんだ、君が笑っていられているなら…それで良いんだ。」


シルヴィア様はそう言って瞳を潤ませ、ぎゅっと再び抱き締めてくれた。


「シルヴィ、積もる話もあろうが一先ず中に入ろう。」


声に視線を向けると、ザイン様が柔らかく笑いながら立っていた。


「旦那様!」


ぱっと瞳を輝かせ、シルヴィア様はザイン様に飛び付いて行った。それを抱き上げて、ザイン様が笑う。


一気に空気が桃色です…2人にとっては通常運転ですが。


この2人、お互いに一目惚れ同士である。だが、結婚に至るまでにはかなり紆余曲折あったらしい。と言うのも、獣人は縄張り意識が強い為、似ていたとしても他の部族と結婚することは滅多に無い。ザイン様は獅子族、シルヴィア様は狩猟豹族…敵対している訳じゃ無いけど、やっぱり大反対されたんだって。で、出された条件が"国王を決定する部族対抗武闘会で優勝しろ"だったらしい。


この武闘会…勿論、部族の中で最も強い代表しか参加資格がない。ザイン様は、争いを好む質じゃなかったからそれまでは部族内の代表決定戦にも参加してなかったらしくて、相当不利だったってザイン様は苦笑しながら話してくれた。


結果から言うと、ザイン様はシルヴィア様を得るために全部捩じ伏せた。獅子族も、狩猟豹族の代表だったシルヴィア様のお兄さんも、他の部族も…圧倒的な力で。そこから30年…その座を1度も明け渡していない…愛だなぁって思う。


「苦しかったのですぅ…」


もぞもぞとお腹辺りから顔を出したのは、オリヴィン様……すっかり忘れてた。


「「……………っ!!」」


先程迄の桃色空気はどこへやら、五体投地しそうな勢いでザイン様とシルヴィア様が平伏した。


「大精霊様がいらっしゃるとは知らず、誠に申し訳ありませんっ!!!!」


シルヴィア様が声を震わせながら謝罪する。視線だけ後ろに向ければ、門兵さんも同じ姿勢だった。


「良いのです。夜宵ちゃん、それよりも急ぐのです!」


早く早く!とオリヴィン様は私を急かす。


「はいはい。ザイン様、シルヴィ様、先にオリヴィン様の用事を済ませにダフネさんの所に行ってきます。」


直ぐに戻りますから、と断ってから城を抱く月桂樹の幹を中腹辺りにある虚に向かって駆け上がる。この虚は、人は限定されるがダフネさんと会う為の場所になっていて城内からも通路が繋がってる。


「ダフネ~?」


虚に到着したと同時にオリヴィン様は私の腕から飛び降りて奥へと走っていった。追って最奥まで行くと、水晶で作られた祭壇の上に深緑の艶やかな髪と瞳に褐色の肌の女性が座っていた。


「ダフネさん、大丈夫?」

「夜宵さん…」


どこか弱々しく笑うダフネさんは…両足が赤黒く変色していた。


「ダフネさん、これ…いつ頃から?」

「……顕著に出始めたのは、1ヶ月位前…だと思います。」


そっとダフネさんの足に触れると、それが瘴気に蝕まれたものだと容易に知ることができた。


「西の森から、みたいよぉ~…?」


するすると這いながら戻ってきたユトゥルナ様の言葉に耳を疑った。


西の森…そこは、神獣、聖獣が住まう鎮守の森だからだ。

短めですみません…。

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