望む未来は遥かに遠く(said:???)
後々、唐突に人物が登場する感じになってしまったので差し込みました。
「兄上!」
叫ぶ娘の声に、目の前で蹲る男が呻きながらも私に鋭い視線を向けた。
「お前が言い付けられた事をきちんと熟しておれば、こうはなってはいなかったはずだがな。」
「…っ……ぁが…!」
無造作に男のアイスブルーの髪を掴み上げ冷酷に告げれば、男は隸属の呪によってもたらされる激痛に苛まれながらも、その瞳に強い嫌悪感を滲ませて睨み上げてきた。
この様子なら今暫くは持ちこたえるだろう。
「まぁ、良い。」
髪を掴んだ手を離し、後ろに控えた男に視線をやる。
「好きに使え。人間の魔術師も連れていくが良い。」
「は、ありがとうございます。」
にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべた男は、人間の魔術師に命じて引き摺るようにアイスブルーの髪の男を連れていった。
息を吐いて、窓から見える月を見上げた。
蒼く光る月の光が冷たく見えるのは、道義に反したことをし続けているせいか、罪悪感が心にこびり付いて離れないからか…。
「どちらも、か。」
苦々しく笑って呟いた言葉は、誰に届くことなく宵闇に溶けた。
「思えば…随分と遠くに来たものよ。」
暖かな場所に背を向け、冷たい暗闇を歩き、心と命を踏みにじり、そうして望む未来……未だ、遥かに遠く。
「最早、私が手を出す余地はない…後は傍観者に徹するとしよう。」
小さな塊を寄せ集め、転がした。幾人の命を犠牲にし続けながら大きくなり続ける奴らの欲…
「さて、いつ気付くか…その嗅覚に期待するとしよう、ザイン王。」




