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勇者と魔王~2人で始める国創り~  作者: 黒猫庵
閑章 これまでの日常とこれからの日常
35/61

黒の暴食来襲 前編(said:ルークス)

明けましておめでとうございます!4日にしてやっと更新できました〜。

どうぞ、今年も勇者と魔王をよろしくお願いします。

「じゃあ、後4年は出て来ないんだな?」

「少なくとも、ね。」


そう答えて、夜宵は出された紅茶の香りを楽しみながら口を付けた。私達は、再びアストルムの王宮へと赴いていた。


先頃行われた国王会議は、端的に言うとアルビオンを牽制するだけに留まった…むしろ、精霊王が激怒していると伝えたことで中小国は人間達に同情さえしたらしい。但し、アストルム、ラウルス、サフィラス、カエレスエィスの四大国でしっかりと釘を刺しまくってきた、とアストルムの王は言った。


「じゃあ、お前達が会議に出てくるまでは、今回の件をネタに牽制しといてやる。」

「会議に出たら宣戦布告するから、そのつもりで居てね?ラディウス様。」

「それは…確定事項か?」

「奴等が抵抗するなら、確定事項になるだろうな。」


私の言葉にカップを置いた夜宵が柔らかく笑う。


「そもそも、始めたのはアルビオンなんだし。」

「まぁな…」

「私、売られた喧嘩はがっつり買う主義だから。」

「解った…そのつもりで準備はしておく。」


ため息を吐きながらも、アストルムの王は表情を引き締めた。


「我々は、その間に国作りと下準備をしないとな。」

「そのためにも、さっさとダンジョン制覇しちゃわないとね。」


ぐっと伸びをした夜宵と共に立ち上がる。


「あとどれ位残ってるんだ?」

「上級が2つと、神級が5つ…あと、遺産級が1つかな?」

「神級が5つか…」


神級ダンジョンは過去2つ、ラウルスで"狩猟(ディアーナ)迷宮"、サフィラスで"海洋(オケアヌス)迷宮"が見つかっているが、そのどちらも完全攻略は成されていない。


精霊王によれば、この世界の大神は元々十二柱。その内、争いに加わらなかったのが"大地の女神テラ""冥界の女神ニュクス""酒の神バッカス""鍛治の神ヴァルカン""戦神マルス"の5柱で、現在主神を不在とし、創世神から各々の場から動くことを禁じられているそうだ。余談だが、5柱の神々に争いに加わらなかった理由を訊ねたところ、"面倒な上、勝てない相手に喧嘩を仕掛ける意味が解らない"と言っていた、と夜宵が話してくれたが…夜宵の交遊関係の方が酷く気になった。


ともかく、残りの元主神を含めた5柱の大神のダンジョンが、全てあの地に在るのだ。


「まぁ、大変じゃないとは言わないけど…神様と直接戦う訳じゃないし、なんとかなるよ。」

「そうか。」


楽しげに夜宵が言えば、アストルムの王は呆れたように笑った。


「じゃあ、そろそろ行くね。」

「来る時は必ず連絡しろよ。」

「はぁい。」


クスクス笑って間延びした返事をした夜宵の腰を抱くと、アストルムの王がニヤニヤとした笑みを浮かべた。対して、腕の中の夜宵は表情は普段のまま腕を剥がそうとしているが、勿論離すつもりは微塵もない。


「では、また。」

「その内、酒でも飲みに来いよ。」


面白そうに笑うアストルムの王に笑みだけ返して転移した。






「「あ、おかえりなさい、姉様、兄さ…ま……??」」


転移先…金色の騎竜亭の一室で出迎えたシリウスとレオニスは揃って首を傾げた。


「うん?どうしたの?」


地に足を着けるや否や腕から逃げた夜宵に、名残惜しさを感じながら私も双子の子供達に目を向ける。


「角が…」

「角?……あぁ、これね。」


納得したように夜宵か角の無くなった額を撫でた。


「アストルムの王に角の消し方を聞いてきた。」

「「消し方?」」

「あると何かと不便だからね。」


夜宵と共に苦笑する。


今回、アストルムの王の元を訊ねたのは国王会議の様子を聞く為…と言うのもあったが、実は竜の身体の扱い方を聞く為でもあった。


私達は、はっきりと言って竜の身体を持て余していた。知識として竜の姿になれることやブレスを吐けること等は知っていたが、そもそも竜に最初から産まれ直した訳ではなかった為、頭と感覚が身体にどうにも馴染まなかったのだ。そこで、竜人であるアストルムの王に教授を乞うた訳である。


「結局、姿をイメージ…えぇと、思い描け!だったね。」

「出来なくて夜宵はアストルムの王に強制的に感覚を同調させられたがな。」

「むぅー…仕方ないでしょう!そもそも私の世界には竜なんて居なかったんだもん。」


ぷうっと頬を膨らませた夜宵に苦笑しながら、その頭を撫でると更にむくれてしまった。


「それよりも、これからどうするのだ?」

「…………シリウスとレオニスの装備は、完成が明日になるから今日は…特にすることは無いけど。」

「では、街をぶらつくか?」


うーん…と唸る夜宵の返事を待っていると、くー…と見事にシンクロした音が聞こえた。


「「……お腹、空きました…。」」


頬を赤くしながら、恥ずかしそうに言った双子の子供達に夜宵が吹き出す。


「ふふっ、なんにしても先ず腹ごしらえだね。」

「その様だな。」

「「うぅ…」」


笑いながら私達は街へと繰り出した。


食事を済ませ、恒例のように日暮れに温泉へ赴いた。長風呂気味な夜宵を残し、半刻程で上がった私と双子の子供達は付近を散策することにした。ダンジョンも瘴気溜まりも無いので魔獣の類いは居ないとの事なので、たいして警戒はしていなかった…が数分で違和感に足を止めた。


「……気配が無い…。」

「「兄様?」」

「生き物の気配がしない。」


獣だけじゃない、植物の気配も怯えるように小さい。


「△※○!#%♪??!!!!」


警戒を強めようとした瞬間、夜宵の言葉にならない悲鳴が響き渡った。

実は、年末にスマホの調子が悪くてリセットしたのですが…設定と閑話数話が飛びました…。復旧は、まだ出来てないです( T△T)

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