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勇者と魔王~2人で始める国創り~  作者: 黒猫庵
第1章 虚偽と欺瞞の中の真実
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勇者、尻尾を掴みました。

私の眼下には、行き交う人々。その只中に細い、黒い糸みたいな物が漂っていた。それを追って、私は陽が落ちたアエスタスの街を疾走していた。風の魔法を使って屋根から屋根へと跳び移りながら目的の人物を探す。


気分は怪盗か忍者デス☆


それはさておき、黒い糸…あれは呪いと闇の気配、それと何故か怨嗟の念。それが視覚化しているのは、私が陽光を冠しているせいだろう。光と闇は相対する属性であり、お互いの気配に敏感に反応する。別に仲が悪い訳じゃ無いけどね。


「……居た。」


視線の先に身体に黒い靄を纏わらせた人物を見付け、少し先の路地へと降り、路地の前を通り過ぎるのを待って、真後ろへ滑り込んだ。


間近で感じてみれば、闇の気配は魔法と精霊魔法の両方の気配がし、怨嗟は更に強さを増した。それに吐きそうになりながら、首根っこを掴んで人気の無い細い裏路地に引きずり込んだ。


ずるずると自分よりも長身な人物を引きずり、人の気配が途絶えた薄暗い場所で手を離すと、手早く当て身を食らわせて気絶させた。


「あれ…?この人…」


アストルムの文官服を着た男は年の頃は30代半ば、茶金の髪をオールバックに撫で付けたひょろりと長身の人間だった。


男の名はオウィス・ウルスス。

アストルムの宰相たるクラヴィス・フォレースの補佐官を勤めていて、アストルム滞在中は割りと顔を合わせることが多かった人物だった。このオウィスと言う男、能力はかなり優秀であるが…なんと言うのか所謂ドジっ子体質というやつで、コケる、ぶつかる、迷子になる、書類や飲み物をぶちまける等々、ペコペコと常に謝っている様な気弱で落着きの無い人物…のはずたが。


「間諜には向かないと思うんだけど…あ、もしかして。」


一つの可能性を思い付いて、オウィスさんの服をむいた。魔力を込めて首元を凝視する。


「……!やっぱり。」


巧妙に術を掛けて隠されては居たが、首には首輪の様な"隷属の呪"を示す紅黒い痣があった。通常は刺青の様に暗青色なのだが、どうやら改編されてるらしいこの呪は読み取れる限り、感情制御が盛り込まれているようだ。


「んー…」


こんなものを仕込めるのは、私が知る限り1人しかいない。その人物の性格を考えるとそれだけ(・・・・)で済むとは思えない。そもそも彼1人だけではないはずだ。


「…苦手だけど、やるしかないか。」


溜め息を吐いてフードと眼鏡を取って幻惑の魔法を解いた。地面に寝かせたオウィスさんを頭側から覗き込むようにして、角を額にくっ付ける。


深呼吸をし、額に魔力を込めるとオウィスさんと私の額に紫色に光る小さな魔方陣が浮かび上がった途端、頭の中に超高速で映像が流れ込んでくる。


「ぅ…ぐぅ…」


闇属性の魔法、精霊魔法は気配察知や隠伏、索敵、幻惑も闇属性に含まれ、まぁぶっちゃけ隠密に向いた属性だ。この闇属性の中に同調と言うのがある。文字通り相手の精神と同調する精神干渉系の魔法だ。お互いの力量の差があればあるほど、干渉出来る範囲は変わり、記憶を改竄することも可能だったりする。


「っ、は!」


勇者時代の自分が出てきた辺りで、私は仰け反るように顔を離した。


私は、この同調が苦手だ。闇属性の魔法が苦手な訳じゃないが、こと同調になると調節が上手くいかない。上手い人だと必要な記憶だけ見ることも出来るらしいが、私は全てを見るはめになり…


「うえぇ…ぅぷ……」


酔う。

言っておくけど、吐いてはいない!


「ん、っと…名前は、解ったから…探すのはラディウス様に任せるか…」


くらくらとする頭を押さえながら、私は腕輪の魔石を撫でた。

ちょっと短いですが、キリが良いので。

夜宵は、魔力の細かいチャンネル合わせが不得手です。同調は、特に相手との魔力を文字通り同調させる魔法なので、記憶の奔流を止めるためには強制終了させるしか夜宵には方法がなく、記憶が詰め込まれるために物凄く酔います。手先は器用で、集中力もあるんですけどねぇ。

ルークスは、逆にこの辺りが上手い人です。

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