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勇者と魔王~2人で始める国創り~  作者: 黒猫庵
第1章 虚偽と欺瞞の中の真実
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勇者、戦友と腹を割って話しました。

ゴリマッチョが私の拳を受け止めた体勢で、無言のまま数秒…同時にニヤリと笑う。


「お前、(よる)か?」

「久しぶりー、ヴォルフさん!」

「久しぶり過ぎんだろ、1年ぶりか?何だ、その格好!!」


ケラケラ笑いながら、ゴリマッチョことヴォルフさんは首がもげそうな勢いで私の頭を撫でた。


「は、話っ、すから…止めぃ!」


ぺしーんっ、と音を立ててデカイ手を叩き落とす。


「ぁ、の…ギルドマスター…?」


私達のやり取りに、泣きそうな声が割り込んだ。受付嬢である。周囲は関わるのは面倒だと思ったのか、既に元の喧騒に戻っていたが受付嬢だけは半泣きの状態で固まっていた。


「あぁ、コイツは俺のダチだ。」

「そ、そうですか…。」

「んで?用向きは何だ?」

「ギルドカードの更新と登録をしに来たんだ。」


後ろに居た3人を指して言うとじっとルークス達を見て、ヴォルフさんは直ぐに歩き出す。


「来い、手続きは俺がしてやる。」

「話が早くて助かるよ。」


受付嬢に謝って、掲示板の脇にある階段を上がり、ギルドマスターの執務室へと向かった。


「さて、話を聞こうか?」


どかりと応接セットに座ったヴォルフさんの向かいに4人で腰かけて、私が口を開く前にルークスの視線を感じた。見遣ると、少し心配そうな顔をしていた。


「信用出来るのか、この男。」

「うん、まぁ…大丈夫じゃないかな。」

「そこは、自信持って言うとこじゃねぇのかよ!」


ゲラゲラとヴォルフさんが笑う。


「ヴォルフさんは、ラディウス様の悪友だから。」


何かあったらあっちに文句言うから、大丈夫。


「そうか、なら良い。」


ルークスが納得した所で、私は幻惑の魔法を解いてフードを降ろし、眼鏡を外した。


「ほぅ、また随分な姿になったな…」


上から下まで眺めて、ヴォルフさんは角に目を止める。実は、幻惑の魔法を角に掛けたのは、人間として冒険者をしていたから、と言うのもあるが、2年この世界に居てこんな角の竜人や竜族に会ったことが無かったせいもある。


「見たとこお前も、そこの色男も竜人みてぇだが…」

「まぁ、色々あってねー。」


肩を竦めながら経緯を説明する。

嘘偽りなく、ルークスが魔王であることも、最終目的がアルビオンへの復讐であることも。


「ふぅん…?良いのか、そこまで話しちまって。」

「後々の事を考えると、ここで伏せてしまうのは得策じゃない、でしょう?」


いざ戦争になれば、冒険者も巻き込まれないとは言えない。総本部のギルドマスターともなれば余計に。今情報を伏せて、敵に回したくない。戦力としてもだが、数少ない友人と敵同士になるのは嫌だ。


「まぁ、いいや。しっかし、相変わらずぶっ飛んでるやがるなぁ。魔王を相棒にして復活して(戻って)くるなんてよ。」

「そんなにぶっ飛んでるかなぁ?」


ルシオラ様にも王様達にも言われたけど…そんなに?

顔をしかめながらルークスを見上げる。


「まぁ、私達以外には理解し難いだろうな。」

「そっかぁ…」


私とルークスにとってはそれ程とんでもない事ではないが、一般的に見て、私達は対なる勇者と魔王…しかも、ルークスを討伐したのは私だ。理解はし難いのは、当然か。


「で、更新と登録だったか。」


ヴォルフさんは立ち上がって棚から水晶玉と3枚のカードを持ってきて、私達の前に置いた。


「最初は、魔王の(あん)ちゃんからだな。」


魔王の兄ちゃん…。

あ、ルークスが小刻みに震えて…蹲っちゃったー。


「ん、どうした?魔王の兄ちゃん?」

「この人笑いの沸点低すぎてツボに嵌まると暫く戻ってこれないから、放っておいて。この子達からお願い。」

「ははは!魔王って意外と親しみやすいな!」


そう笑いながらシリウスとレオニスに手招きする。


「じゃあ、白頭の坊主からな。このカードを持って、水晶に手ぇ乗っけろや。」

「……はぃ。」


おずおずとカードを受け取ってシリウスが水晶に手を乗せる。

ぽぅっと水晶の中に緑と青の光が灯った。


「ほぅ…風と水の属性持ちか。」

「優秀でしょう?うちの子。」


どや顔をすると、ヴォルフさんは何故だが目を細めて私を見て笑った。


「ん?どうしたの?」

「いや、楽しそうにやってるみてぇで安心したわ。」


なんか安心したとか、良かったとか…必ず言われてる気がする。端から見て、私って相当危うい不安定な子供に見えてたのかなぁ…。心に余裕はないのに、力だけ強くなり過ぎちゃって怯えてた覚えはあるからなぁ。


そんな事を思い出している間に、ヴォルフさんはシリウスに小さなナイフを渡していた。


「血をカードに付けて、名前と年齢を言え。それで登録は終わりだ。」

「は、はい…」


シリウスはカードを持った手の指先を、少しだけ傷付けるとそのままカードを握る。


「シリウス、10歳…です…。」


シリウスが声を出すと、フワッとカードが淡く光って手の中に収まる位…ドッグタグ位のサイズに縮んで光が消えた。


「無くすなよ、再発行に300サール掛かるからな。」

「「300サール…?」」

「ん?金のことは、解んねぇねのか?」


この世界の通貨の話をする機会がなかったから、シリウスもレオニスもいまいち解らないって顔をしている。折角だからここで説明しておこう。そう思って机にお金を1種類ずつ置く。


「通貨の種類は、金貨、小金貨、銀貨、小銀貨、銅貨のこの5種類。銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。小金貨は4枚で金貨1枚、小銀貨も同じ銀貨の4分の1。で、銅貨1枚が1サール。」


では、300サールは何が何枚かな?

シリウスとレオニスに問う。


「「えっと…、銀貨3枚です。」」

「はい、良くできました。」


なでなでと2人の頭を撫でてやる。


その後、レオニスとようやく戻ってきたルークスの登録を済ませ、私のギルドカードも更新してもらった。ちなみに、ここでルークスの年齢が228歳だと判明した。でも、転生になるから…実質私もルークスも1歳になる…のかな?


「坊主達は半鬼人で、兄ちゃんと夜宵は…竜族か。」


竜族は、純粋な…所謂ドラゴンを指す。そして、人の姿を取れるのは力の強い極一部だけだ。


「どっちも珍しい種族だな…」


鬼人族に関しては、純血主義の傾向が他の魔族よりも強いために半魔の中でも極端に数が少ない。


「まぁ、ギルド以外で見せることは無いし、解析スキルでも私達を見ることはできないと思うけど…一応、変えておこうか。」


私達は竜人に、シリウスとレオニスは半魔人へと表示を変え、突出し過ぎてる私とルークスのステータスを非表示にした。


「よっしゃ、これで手続きは終いだな。」

「ん、お手数お掛けしました。」


ペコリと頭を下げる。


「しかし、何だな…俺の忠告が当たっちまうとはなぁ…」


ヴォルフさんが何とも言えない顔をする。

ヴォルフさんと最後に会ったのは1年前…アエスタス郊外で魔王軍と大規模戦闘になった時に共に戦った。それから、ヴォルフさんとは友人…否、戦友だ。

魔王軍を押し返し、そのまま敗走する魔王軍を追いかける為に戦場で別れる事になって…その時に呼び止められて言われた。


「後ろに気を付けろ、味方とは限らない…だったっけ?」

「そんな事を言われたのか?」


ルークスが意外そうな顔をする。


「うん、その時は何を言われてるのかぜーんぜん分からなかったけどねー…まさか、本当に後ろからぶっすり殺られるとは思わなかったよ。」


苦笑しながら言うと、ヴォルフさんは呆れた様にため息を吐いて椅子の背に凭れる。


「笑い事じゃねぇよ、まったく…」

「ま、きっちりけじめは付けるよ。」


そう言って立ち上がると、それに習って3人も立ち上がる。


「……夜宵、お前…俺のこと信じられんのか?」


ヴォルフさんは唐突に言ってきた。

ちょっと吃驚してまじまじとヴォルフさんを見つめる。


「俺は、裏がねぇって訳じゃねぇ。嘘だって吐くし、打算だってある。それでもお前は…」

「信じられるよ。」


私はきっぱりと言った。


「ヴォルフさんは馬鹿正直だし、腹芸は無理だし、考えるより先に動いちゃうし…」

「茶化すんじゃねぇ!俺は…!」

「あの時の言葉を悔やんでくれちゃうヴォルフさんだから、信じられるよ。戦友だもん。」


にっこりと笑う。


「それでもし、ヴォルフさんに裏切られるなら私の目が曇ってたんだって事だし、容赦なく叩き潰すだけだし。」


すぅっと目を細めて言うと、ヴォルフさんはぶるりと身体を震わせた。それに苦笑してルークス達を先に行かせて、扉の所で振り返る。


「そうさせないでよね、結構ダメージでかいんだから。」

「当たり前ぇだろ!馬鹿野郎っ!!」


怒鳴られたことににんまりと笑うと、ヴォルフさんからも疲れたような笑みが返ってくる。


「暫く居るのか?」

「今回は2、3日かな。でも、今後はちょくちょく来る予定。」

「んじゃ、今度は討伐とかも手伝えよ。」

「畏まりました、ギルドマスター殿。」


敬礼をして、私は執務室を後にした。







ヴォルフは、閉まった扉を見つめて深く息を吐くと、ずるずるとソファーに身を沈めた。


「クソ皇子共…あの甘ちゃんをとんだ化物に変えやがって…」


先程の視線を思い出して、今一度ぶるりと身体を震わせる。久しく感じることの無かった死を間近に感じた。


ヴォルフは、夜宵が気に入っていた。ノリがよくて明るく、無防備でどこか危なっかしい。そのくせ、今まで出会った誰よりも飛び抜けて強くて、誰よりも自分の力を恐れていた、あの少女が。


初めて狩りを共にした時、夜宵は倒した魔獣に手を合わせていた。何をしているのか、と問えば"魔獣とは言え、命を奪う事に変わりはない"と言っていた。

普通、力が強い者は次第に命を奪う事への恐れが薄れて行くものだ。そうして非情さを身につけて行くのだが、彼女にはそうならないで居て欲しい…そう思っていた。


「完全に捨て去ったわけじゃあ…無さそうだったが…。」


それでも、敵を躊躇なく切り捨てる非情さは、きっちりと彼女の中に存在している。昔の不安定さは無くなったが、力に比例した危うさが見え隠れするようになっている気がする。それを支えているのは、間違いなくあの魔王だ。


「はぁ~あ、退屈しなさそうだな。」


知らず知らずの内にヴォルフは笑みを浮かべて呟いた。

ゴリマッチョ狼のヴォルフGM登場しました。

おっさんです、気の良いおっさんです。


夜宵とは年は離れてますが、マブダチになるかと。きっと、態度を変えずに夜宵とルークスを正座させて説教とかもしてくれることでしょう(笑)

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