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勇者と魔王~2人で始める国創り~  作者: 黒猫庵
第1章 虚偽と欺瞞の中の真実
21/61

勇者、子鬼達を育てることにしました。

※アイテムボックスをイベントリへと名称変更しました。

「…子供……?」

「だねぇ。」


私達は覗き込む様にして見つめる。

そこには、黒い髪と白い髪の瓜二つの顔をした子供が2人、かちかちと歯を鳴らしながら怯えていた。

怯えるのも当然だ…私達は警戒こそ解いたものの、戦闘体制は解いていない。

つまり、絶賛威嚇中…みたいなものだ。

浅層の魔獣にも劣る子供には、さぞかし恐ろしいだろう。


「魔族、だよね。」

「あぁ、服装から見るに貴族だろうな。」


よく見ると、薄汚れてはいたが身なりは良い。


「…半魔みたいだね。鬼人族かな。」


魔族にも細分化された種族がある。

元になった種族にもよるが、交配によって独自に生まれた種族もある。まぁ、その説明は置いといて…半魔は文字通り魔族とのハーフである。

この子達は、どうやら魔族と人間のハーフの様だった。

しかし、貴族にしては痩せ細り過ぎている…皇子達の襲撃からの時間を考えても彼等の状態は酷い。


「半魔は…あまり歓迎されないからな…。」


つまるところ、虐待されていたと言うことか…。

ルークスの脇腹をつついて、過剰な気配を引っ込める。


「えっと…君達、お腹空いてない?」

「「………っ!!」」


ぴくり、と彼等が反応を示す。

純粋な魔族は食事を必要としない。

精霊さんと同じで魔素が在れば生きていけるのだ。

だが、半魔は半分が人間や亜人故に食事を必要とする。

とはいえ、摂らなくとも衰弱する速度は極めて遅い…彼等の様子を見るに、虐待期間は十年はくだらないだろう。


「ルー、一旦ここを出よう。」

「連れていくのか?」

「取り敢えず、ね。大事な領民だもん。」


ひょい、と片方を抱え上げると両方から掠れた悲鳴が上がる。やれやれと言った風にもう片方をルークスが抱え上げて眉をひそめた。


「軽いな…」

「うーん、重いものは食べられないかな?」


胃はだいぶ小さくなってるだろう。


「干し肉と野菜とハーブでスープ作ろう。」

「果物もあるぞ。」

「果物?」


ダンジョンの入り口を潜り、外に出て少し開けた場所に2人を降ろす。途端、這うようにして彼等は身を寄せる。


「あの島から出る時に、土産だと女神に突っ込まれた。」


そう言って、幾つかの果物をルークスは取り出した。

大地の女神からのお土産だけあって、香りも良く、熟れていて大変美味しそうだ。


「んー…柔らかい方が良いかな。」


ルークスの手から桃を2つ取り、半分くらい皮を剥いて2人に差し出す。


「スープが出来るまで、これでも食べてて?」


怯えながらも、空腹に耐えきれずにそろりと手を伸ばしてきた手に桃を乗せてやると、こちらを窺いながらも慌ててかぶり付く。

その様子に苦笑しながら調理器具を取り出すと、手早くスープの下拵えに掛かる。

材料を用意している間にルークスが簡単な竈を作って火を起こしてくれる。

一緒に行動しはじめてから出来た役割分担である。


「火の準備は出来た。」

「ん、ありがと。」


水と賽の目に切った根菜の入った鍋を火にかける。

沸騰したら灰汁を取り、葉物と干し肉を投入して更に灰汁を取りつつ根菜と干し肉が柔らかくなるまで待つ。

最後に細かく刻んだハーブを入れて完成だ。

普段は私とルークスが使う木製の器にスープをよそって、2人の元に持っていく。


「お待たせ~」

「「……っ!!」」


桃を食べ切り、名残惜しそうに残った種と皮を見つめていた彼等が弾かれたように顔を上げる。


「手がベタベタだね。」


そう言って私が膝をつくと、怯えた様に身を縮める。

叩かれるとでも思ったのだろうか…。


「ルー、ちょっとコレ持ってて貰って良い?」

「ん。」


ルークスに器を預けると、2人の目がそれを追う。

お腹を鳴らし、涎が垂れんばかりに器を凝視して喉を鳴らす様子にルークスが面白そうな顔をする。


私はイベントリから水筒と布を取り出すと、布を濡らして絞る。


「手を拭くよ?」


スープに気を取られていた2人は、伸ばされた私の手に気付いてガタガタと震え始める。

が、それを無視してさっさと手を拭いてやる。

ぽかんとする2人の手にスープの器を乗せた。


「ゆっくり食べるんだよ~」


スプーンを差し出すと僅かな間の後、奪い取るようにしてスプーンを受け取ると、はぐはぐと忙しなく口に運び始める。食べながらぼろぼろと涙をこぼしていた。


「急がなくても取り上げたりしないから。」


ルークスと2人、苦笑して少し離れる。


「街への襲撃があった時に逃げ出したのかな。」

「恐らくな。」

「魔獣堕ちした人達を戻せたとしても、あそこには戻すわけにはいかないかぁ。」

「連れ歩くのか?」

「うーん…」


実際、子供を連れ歩くのは現実的じゃない。

別に急ぐことは何一つ無いのだが、まだまだ攻略するべきダンジョンは多いし、難易度も上がる。

何よりも私達のペースは攻略も移動も異常な程早い。


「…施すだけ施して、放り出すのは後味か悪いよね。」

「責任は持たなくてはな。」


予想に反して彼等はスープを全て平らげ、夜の帳が落ちる前に倒れるように眠ってしまった。

皇子達から逃げ、ダンジョンに隠れ、魔獣に怯えながら過ごした約2週間は気を張りっばなしだったに違いない。

そんな極限状態で、少なくとも危害を加えられず、食べ物を与えてくれた私達に出会ったことで緊張の糸が切れてしまったのだろう。


「まずは、生きて行ける様にしてあげないとね。」

「そうなると…戦う術や生活の術を教えねばならないな。」

「明日、あの子達が起きたら話してみよう。」


穏やかに見える寝顔を見ながら私達は頷き合った。







「起きたかな?」


もそもそと動き出した子供達を覗き込むと、彼等は飛び上がる様にして後退った。

それに苦笑しつつ、彼等の後ろを指す。


「少し行った所に川が在るから、顔を洗っておいで。」


2人は指し示された方向と私を交互に見る。


「逃げても構わないけど、朝御飯が食べたかったら戻っておいで。もうすぐ出来るから。」


覚束ない足取りで森の中に入っていった2人は、暫くすると戻ってきた。

朝日の元で見ると、状態の酷さが良く分かったが顔色は昨日より良さそうだった。


「こっちにおいで。」


昨夜のうちに拾ってきた丸太を、適当に切って作ったテーブルに器を幾つか置きながら手招きする。

因みに今日のメニューは、じゃがいものポタージュとベーコンと目玉焼き、レタス、トマトをマフィンぽい白パンに挟んだ簡単サンドイッチを数個用意した。

昨日の食べっぷりを考えて少し重くしてみた。

おずおずと近寄ってきた2人は、ちょこんとテーブルの前に座った。昨日よりは気を許してくれているようだ。


「はい、じゃあ今日の糧に感謝し、て……あー…うん、なんでもない。」


小さい子供が居るせいか思わず出た言葉に、子供達だけでなくルークスにもぽかんとした顔をされ、頬が染まる。


「もういいから、2人ともお食べ。」


そろりと…次第に忙しなく食べ始めた子供達を尻目に、ルークスがからかうような視線を向けてくる。


「今のは?」

「………孤児院を、両親が経営してたの。ちょっとした条件反射だから気にしないで。」


隠す様な事でも無いので、照れ隠しに口許を覆いながら言う。


「その内聞かせてくれ。」

「…その内、ね。」


子供達は、出した物をぺろりと平らげた。

やっぱり、人間ではないな…と思ったがそれは置いといて。食器を片付けて2人と向き合う。

感情は極力見せないように…真顔で口を開いた。


「昨日話し合ったんだけど…私達には、君達を拾った責任がある。だから、君達に生きるための術を出来るだけ教えようと思うの。」


これには戦い方や生活するための術以外の、世界の情勢や学問等も含める。


「ただし、私達にもやらなきゃいけない事があるから、期間は2ヶ月。2ヶ月経って君達だけでも生きて行ける基盤を作ってから…君達はどうして行くのか、選択してほしい。」


勿論、私達を信用出来ない…と言うなら止めることもしない。食料を出来るだけ渡して、ここで別れる。


「君達が決めて。」

「教えるからには、一切手は抜かないがな。」


隣で呟くルークスは、恐らく軍人の顔をしてるんじゃないかと思う。雰囲気が鬼軍曹っぽい。


「「………。」」

「…喋れない訳じゃないでしょう?」


昨夜から一言も発しない2人。

話すな、と言われてきたのかもしれない…だが、敢えて声を発して意思を表示しろ、と暗に言っているのだ。

2人は顔を見合せ、やがて同時に口を開いた。


「「……よろしく、お願い…し、ます…。」」


小さく、掠れた途切れ途切れの声だった。

息を付いて表情を緩めてやると、彼等もほっとした顔をした。


「よし、じゃあ幾つか注意しておくね。」

「まずは、私達の指示には従うことだ。ダンジョンにも潜る、魔獣とも戦う。お前達を守るためにも、これだけは絶対だ。」


こくり、2人は頷く。


「次に、意思表示は必ず声を出すこと。表情と仕草だけで伝わることは少ないからね。」

「「……、はい…。」」


頷きかけて慌てて返事をした2人に、ルークスと顔を見合せて苦笑する。


「絶対に守って欲しいのはこれくらいかな。」

「他は…まぁ、追々だな。」

「あー…強いて言えば自己紹介?」

「だな。」


2人に視線を向けると、どこか困ったような顔をしていた。


「君達は、双子?」


全くと言って良い程同じ顔をしている2人。

違うのは、真逆な色合いの髪色位だ。


「はい…。」

「男、か?」


体型からは判断がつかない。

割と整った顔をしている気はするが、いかせん痩せ細り過ぎていて分かり辛い。


「はい。」


双子だと言う2人は交互に答えるが、どんどん俯いていく。


「………もしかして、名前は…無いのかな。」


問うと、頷くだけの返事が帰ってくる。

まぁ、それは答え辛いよなぁ…。


「俯かないの。」


びくつくのを無視して、2人の頭を撫でる。


「んー…でも、呼び名が無いのは不便だね。」

「自分達で付ければ良いのではないか?」

「嫌じゃなければ、付けるけど…」


言った途端、2人の瞳が輝く。


「何が良いかな。」


考えながら立ち上がる。

それに倣ってルークスが、更に子供達が続いてゆっくりと歩きだす。


「白黒ではダメなのか?」

「それじゃあ、安直過ぎるでしょ。」


隣に並ぶルークスに苦笑しながら、後ろを付いてくる2人を見遣る。


「決めた。」


立ち止まり、くるりと子供達に向き直る。


「白髪の君がシリウス、黒髪の君がレオニス。」


どうかな?と問いかけると、嬉しかったのかこくこくと何度も頷く。その様子に苦笑しながらも、2人の頭を軽く小突く。


「こら、声を出しなさい。」

「う、れしぃ…っ!」

「ぁり、がと…っ!」


あわあわと声を出した2人を今度は撫でてやる。


「私は夜宵。」

「私はルークスだ。」


しゃがんで視線を合わせ、笑う。


「これからよろしくね。」

はい、新キャラです。

双子の男の子、シリウスとレオニスです。

彼等の細かい容姿や内面は2話位掛かるかも?

次回は彼等の視点で送る予定です。


そろそろ皇子達が霧の結界を抜けるかなー…

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