仕切り直しの王様会議(said:四大国国王)
「さって、新たに問題も増えたし?会議仕切り直すか。」
やれやれ、と言った風にラディウスは声を上げる。
「夜宵と魔王…ルークスと言いましたか、彼等の存在は隠さなくてはなりませんね。」
「じゃな。とりあえず2人が自ら動き出すまでは、の。」
「間諜も早急に探さなくてはな。」
新たに浮上した案件を上げながら、王達は考える。
「会議の延期…本当に申し入れて来ると思うか?」
アルビオンは、今回の会議で魔王討伐と勇者の死亡をカードとして、自国に有利な条件を引き出そうとするだろう。
下手をすると、二振りの剣の紛失や防具の不備、禁書の内容漏洩も使ってくる可能性がある。
「……剣や防具の実物が無い以上、皇子が戻らないのであれば、あちらはカードを切ることは敵うまい。」
ザインが顔をしかめながら答える。
実物が無くとも、常に同行していた皇子達の証言は最も大きなカードになる。
「そうなれば、必然的に申し入れて…来るじゃろうな。」
「しかし、夜宵達は少なくとも1週間以上とは言っていましたが、彼等が2人掛かりで成した結界です…皇子一行がそう簡単に抜け出る事が出来るでしょうか?」
うーん…と4人で唸る。
「今のところ殺す気は無いみたいだからな…長くても2週間半位じゃないか?」
「霧の結界じゃからな…迷わせた上で、強制的に外に出されるようになってはおるじゃろう。」
「ならば、そこからアルビオン迄の航路を考えれば、1ヶ月は延長を申し入れてこよう。」
結論として2ヶ月…この間に、アルビオンの主張を圧し折る為の材料を揃えねばならない。
「先ずは、国内からだな…」
身内を疑うのは嫌な物だ、とラディウスはぼやく。
「仕方がなかろう…今知れただけでも僥倖じゃ。」
「夜宵達に感謝、ですね。」
円卓の上には、剣と破損したブレストプレートが残されていた。
ラディウスがプレートを手に取る。
「これも、このまま持ち帰る訳にはいかないな。」
「個人のイベントリに入れて置く他、無いだろうな。」
「夜宵に預かってもらえば良かったのぅ。」
失敗した、とラピスが笑う。
「換金に来ると言っていたから、その時にでも頼むか。」
「それはそうと…アストルムとラウルスは、難民対策も立てなくてはなりませんね。」
「難民…」
ミセリアの言葉にラディウスとザインが眉根を寄せる。
「精霊王か…」
「夜宵の話を聞く限り、大変お怒りの様でしたからね。」
「精霊達自身が夜宵を好いておるからのぅ…精霊王が命を下さなくとも、怒りに任せて人に協力せぬようになろう。」
そうなれば、国は恵みを失って行くだろう。
必然的に人々は困窮し、国は荒れていく。
国が荒れれば、魔獣が増える…国を離れる者も増えていく。
「我が国やサフィラスは、渡航手段が特殊ですから余り心配は無いでしょうが…」
「特にアストルムは多くなるじゃろうな。」
サフィラスは海底、カエレスエィスは天空に存在する為、鰭や翼を持つ亜人以外は高額な金額を払って潜水艇や飛空挺に乗る必要がある。
転移魔法と言う手もあるが、大陸を移動出来る程の使い手は世界中でも数える程しかいない。
アストルムやラウルスは比較的安価な海路で行くことは可能だが、交易が盛んで多種族国家であるアストルムに集中する可能性は極めて高い。
「すぐ、じゃないが…宰相と対策を練んなくちゃならねぇか。」
ラディウスはぐったり気味に円卓に突っ伏す。
「さて、すべき事は決まった。此度はこれで御開きじゃな。」
「ラディウス、難民対策は後程話し合おう。」
「おう。」
ラピスの一声にザインが立ち上がり、未だ伏せたままのラディウスに言う。
「皇子達の動向は、夜宵に聞いてみましょう。」
結界から出れば判るはずだ、とミセリアも立ち上がる。
「アルビオンに潜入させてる部下から、情報が入り次第回す。」
「各々の国に潜んでおる間諜に関しても、じゃな。」
最後にラディウスが立ち上がり、4人は夜宵が置いていった指環を手に会議場を後にした。
1話前の"勇者、魔王を紹介しました。"で、夜宵がルシオラ様に借りた本を持ち帰る記述が無かったので、追加しました。
ので円卓には本はありません(-_-;)
文章に矛盾などありましたらご指摘お願いしますm(。≧Д≦。)m




