勇者、魔王を紹介しました。
「とりあえず…紹介をした方がいいよね。」
ルークスが椅子に腰を落ち着けるのを見ながら言う。
「お互いに、じゃな。」
「じゃあ、先に王様達を紹介するね。」
そうルークスに向かって言い、私は円卓を囲む王様達を見遣る。
「先ずは…向かって右に座っているのが、竜王国アストルムの王様のラディウス・アストルム陛下。」
ダークグレーの髪に夕日のようなオレンジの瞳をしたラディウス様は、陛下は止せと眉根を寄せた。
年の頃は40代前半と言った所だが、この世界は見た目が宛にならない。
「ラディウス様は、今のアストルム最強の竜人で軍も自分で率いちゃう軍人さんだよ。因みに独身で、宰相さんがお嫁さん探しに奔走中。」
「余計な情報を入れるなっ!」
ラディウス様のツッコミと共に、他の王様達とルークスから笑みが漏れる。
「はいはい、次に行くね。」
バッサリとそれを流して、続行するとラディウス様に睨まれた。
「ラディウス様の左に座っているのが、神獣国ラウルスの王様のザイン・フィロソフス陛下。」
ザイン様は、黒い肌に白い鬣を持った獅子の獣人だ。
金色の瞳を優しく細めたザイン様は、ゆったりと会釈をしてくれた。
「ザイン様は、信心深くて物静かですっごい常識人だけど、ラディウス様と肩を並べる位強くて、怒ると滅茶苦茶怖いんだ。後、王妃様を大事にしてる愛妻家なんだー。」
「大事、程度で済むのかの?あれは。」
「溺愛、でしょうね。」
ラピス様とミセリア様がからかう様に言うと、ザイン様は"あれが愛らしいのがいけない"と主張する。
ゴチソウサマ、デス。
「次は、そのお隣ね。海洋国サフィラスの女王様、ラピス・サフィラス陛下。」
所々にグレーシルバーの入ったシーグリーンの髪を優雅に払い、マリンブルーの瞳を瞬かせたラピス様は、 円卓に頬杖を付いた体勢で銀の鱗の浮いた手をひらひらと振った。
「鱗で判る通り、ラピス様は魚人。海の中だと銀の鱗が虹色に瞬いて、本当に物凄く綺麗なんだー。恋人はたくさん居るけど…結婚はしないの?」
「ふふふ…妾は恋多き乙女故、まだ結婚する気はないの。」
「乙女って歳じゃないだろうが。」
「ぬしは、だから女子にモテぬのじゃ。」
ラディウス様とラピス様が睨み合う。
「はいはーい、続けますよー。」
ふんっ、とお互いにそっぽを向いた2人に苦笑しつつ手を叩いて話を戻す。
「最後に1番左に座っているのが、天空都市カエレスエィスの最高議長のミセリア・トリスティティア様。」
シルバーからラベンダーへとグラデーションになってる長い髪をさらりと梳いて、他とは違う値踏みする様なマラヤガーネットの瞳をルークスに向ける。
「ミセリア様は、カエレスエィスで1番の学者さんだよ。専門は薬学と医学だけど、どんな分野でも知識量でミセリア様に敵う人はなかなか居ないんじゃないかな?あの迷宮みたいで膨大な蔵書の図書館の本、全部覚えてるんですよね?」
「えぇ、当然です。」
誇らしげにミセリア様は頷く。
「因みに、ミセリア様は研究を始めると寝食を忘れるのと、図書館のどこに居るのか分からないのが困るから、遭難者が出る前に強制召喚装置を作る!…って秘書さん達に言われる位の仕事中毒で研究中毒なんだー。」
「………どこからそんな情報を集めてくるんですか。」
「秘密です。」
にっこりと笑って答えると、ミセリア様は溜息をついた。
「質問は特にない?ルー。」
「大丈夫だ。」
「じゃあ、次はルーを紹介するね。」
王様達に視線を向ける。
「と、言っても詳しく紹介出来る程私も知らないけどね。」
「まぁ、出会って2ヶ月程度だからな。」
私達の会話に、王様達が訝しげな顔をする。
「彼は、ルークス・ソル・サンクトゥス。私の相棒で魔王です。」
「"元"魔王だ。」
「……………………………。」
沈黙が部屋に満ちる。
たぁーっぷり間を置いて、最初になんとか声を絞り出したのはザイン様だった。
「……なんと、言った…………?」
「だから、相棒ですって…」
「いやいや、そこではなかろうっ!その後じゃっ!」
復活したラピス様が椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、ツッコミを入れる。
「魔王?」
「そこだっ!」
「どうしてそうなったのですか?!」
やっと全員が復活したのか、混乱気味に問い詰められる。
「落ち着いて…順を追って話すから。」
私とルークスはここまでの経緯を説明した。
話せば話すほど、王様達は頭を抱えた。
「相っ変わらず、斜め上に行くな…夜宵は。」
疲れた様にラディウス様は言った。
「貶されてます?それ。」
「誉めてはいないな。」
「退屈せぬのは、確かだがの。」
ころころとラピス様が笑う。
ザイン様とミセリア様がそれに呆れたような溜息をこぼした。
なんか、ルシオラ様と同じ様な反応…な、気がする。
「面白いと思ったんだけどなー。」
「それで良いのか、対の魔王…」
「実際、夜宵と共にいるのは楽しいからな。」
ジト目のラディウス様に問われたルークスは、しれっと答えた。
王様達が何度目かになる溜息を吐いた。
「一応、話はこれで終わり。」
「これからどうするつもりじゃ?」
頬杖をついた状態に戻りながらラピス様に問われる。
「とりあえずは、ダンジョン攻略。」
「その後は、精霊王の手も借りて土地の力を回復せねば。」
「後は、生き残ってる魔族と話もしなきゃね。」
ルークスと2人、指折り数えてやるべきことを挙げる。
「……楽しそうだな。」
ぽつり、とザイン様に言われた。
気がつけば、王様達が苦笑しながらも優しい瞳で私達を見ていた。なんだか、酷くくすぐったい気分で私も苦笑を返した。
「…そうだね、勇者で居た時よりも…楽しいよ。」
「そうか、良かったな。」
やんわりと笑ったザイン様に、嬉しくなって駆け寄ると抱きついて柔らかな鬣に顔を埋める。
初対面の時に触らせて貰ってから、ザイン様に会った時には飛び付かないと落ち着かない様になってしまった。
もふもふは正義だと思います。
「ザイン相手に、その様な行動をとるのは夜宵と奥方位なものよの。ほんに、怖いもの知らずよ。」
「そうかなぁ?もふもふ気持ちいいよ?」
ザイン様になでなでと大きな手で撫でられながら小首を傾げる。
「普通の者は、私を物静かとは言わぬよ。」
「そう?そんなことないと思うけど。」
「貴女が変わってるのですよ。」
呆れたように言われたが、納得がいかない。
皆、もふってみれば分かると思うんだけどなぁ。
「夜宵、話も終わったしそろそろ行こう。」
何故だか、やや不機嫌な様子でルークスは立ち上がった。
「……うん。」
「「………ほぅ…」」
ルークスのその様子にラディウス様とラピス様がにんまりと笑っていた。
この顔はあまり良いことを考えていない感じの顔だ。
関わるのは面倒だから放っておこう。
「あ、間諜の事とかアルビオンの動きとか、何か解ったら連絡して欲しいんだけど…」
「どうやって、するのですか?」
「これこれ。」
ザイン様から離れ、イベントリから指環を4つ取り出して円卓に置く。
「通信機能と転送機能を付与した指環をルシオラ様に教えてもらって作ったんだー。」
指環は、ルシオラ様に貰った腕輪の応用として私が作った物だ。
「紋章を擦れば私に繋がるから。」
転送は、腕輪とは逆に私を引き寄せる様に作ってある。
説明した途端、ミセリア様が瞳を輝かせた。
「夜宵…今度カエレスエィスに来て、是非詳しい作り方を教えて下さい。」
「りょうかーい。」
円卓に置かれた物から本だけを手にして扉の前で待つルークスの側に行き、王様達を振り返る。
「後、アルビオンから会議の延期を申し込まれるかも。」
「どういう事だ?」
眉根を寄せるラディウス様に向かって、ルークスと2人でグッジョブポーズを決める。
「魔王領を霧の結界で覆った時に皇子達を巻き込んでやった!」
「抜け出すのに少なくとも1週間以上は掛かるだろう。」
どや顔しながら言うと、王様達は深く深く溜息を付いた。
ラディウス様なんか早く行けとばかりに手を振っている。
「その内、素材の換金とか含めてお邪魔するね。」
「連絡してから来いよ。」
「はーい。」
返事をして私達は会議場を後にした。
「魔王領全体を霧の結界で覆うとか…規格外過ぎんだろ…」
「魔王と組んで世界を滅ぼす…等とならずにほんに良かった…。」
「そうなってたら、一瞬だったかも知れませんね…」
王様達は、2人が去っていった扉を見つめて身を震わす。
「夜宵が、良い子で…本当に良かった……。」
ザインの言葉に王様達は、心から安堵の溜息を付いた。
更新がだいぶ遅れてしまってすみません!
帰省中にストックを作るぐらい…と思っていたのに、意外に忙しく…実家って、何であんなに眠いんでしょうね。
王様達の容姿を明記してみました。
もふもふは…正義なのです。
また、更新頑張ります!




