勇者、怒られました。
「ほ、本当に…」
「夜宵ですよ?」
恐る恐る、と言った風のラピス様に笑いかける。
「その姿は…一体、どうしたのです。」
「その説明は、後で。」
そう言って、私は部屋へと入る。
中央に円卓が置かれたこの部屋は、それほど広くはない。
部屋に入れるのが、各国の王だけと言う事もあって広い必要も無いのか、約10畳程しかない。
「そもそも、どうしてここに入って来れた!」
ぐるりと王様達の後ろを通って行く私に、ラディウス様が声を荒げる。
「それは、私達が国主として認められたから、ですね。」
私と、後から入ってきたルークスが、いつの間にか7つに増えた椅子の背に触れると、4人の王様達はぎょっとしたような顔をする。
「とりあえず、説明は後にして…今日は、確認したいことがあって王様達に会いに来たんです。」
私は、手を後ろに遣ってイベントリに突っ込む。
そこから二振りの剣を引っ張り出して、円卓の上へと置く。
更に破損したブレストプレートと本を1冊置く。
「聞きたいのは、唯一つ…王様達は、私の敵ですか?」
「どういう、意味か。」
ザイン様が探るように問うてくる。
その問いに、私は意識的に表情を削ぎ落として口を開く。
「ここにあるものに、見覚え…ありますよね?
魔力喰いの魔剣はラウルスに、神殺しの呪剣はサフィラスに封印されていたもの。このプレートはアストルムで特別に作ってもらったもので、この本は精霊界以外ではカエレスエィスにしか存在していない。」
王様達は、困惑した顔で私を見ている。
「全部、私を殺す為に使用されたものです。」
「誰が…!」
真っ先に驚きを示して席を立ち上がったのはミセリア様だった。
「皇子達、ですよ。」
「仲間に殺されたと言うのか。」
ラディウス様が声に怒りを滲ませる。
「待ってください、だとしても…その本を持ち出すのは不可能です!」
「持ち出す必要はありません。必要な箇所を閲覧出来れば良いんですから。」
ここにあるのは精霊界から借りたものです、と告げればミセリア様は頭を抱えて椅子に座り込んだ。
「封印されてたはずの二振りの剣、禁書指定の本、信頼の置ける職人以外が介入するはずの無い防具…一体、どういうことでしょう?」
つらつらと項目を連ねると、王様達の表情が強ばっていく。
私は、敢えてにっこりと笑って口を開く…
ずびしっ!
「あいたっ!…痛いよー何するの、ルー。」
チョップをされて振り返ると、呆れ顔のルークスが私を見下ろしていた。
「いつまで悪役に浸ってる。」
「あれ、バレてた?」
テヘペロ♪
「王達が困ってる。」
「ごめんなさーい。」
無言で椅子から立ち、ラディウス様がこちらに来た。
ごちんっ!
星が飛び散る位、思いっきり拳骨で殴られました。
「いったーぃ!!」
「お前、俺達がどれだけっ!!」
更にこめかみをぐりぐりされて、痛みに悶える。
「質の悪い冗談ばかり言いやがってっ!」
「死んだのは本当だもんーっ!!!」
ぴたりとラディウス様の手が止まった隙をついて逃げ出すと、ルークスの後ろに隠れた。
「………本当なのか…?」
「ゼノに調べさせたんでしょう?」
「…だが……」
今の流れのせいで冗談だと思われたらしい。
悪のりするんじゃなかった。
「裏切られて、皇子達に殺されたのは本当。」
1ヶ月死んでいた。
「王様達にも裏切られたかもって思ったのも本当。でも、顔を見れば王様達がしてないって事は、直ぐに判った。」
悪のりしてごめんなさい、と頭を下げる。
「はあぁ~……」
ラディウス様は溜息を、他の3人の王様達は苦笑した。
「君に、もう一度会えて嬉しく思う。」
「妾もじゃ、夜宵。」
ザイン様とラピス様が優しく微笑んでくれる。
「経緯はじっくり聞かせて貰いましょう。」
ミセリア様は、どこかほっとした顔で笑ってくれた。
ラディウス様が、今一度溜息をついた。
「まぁ、なんだ…お帰り、夜宵。」
更新遅れましたー(>_<")
寝落ちしたら、データが飛んでしまいました。
途中保存、大事…です。
なんか、コントみたいな感じになって…話が先に進んでない上に、王様達の外見の説明が皆無…!
次話に回します…。




