勇者、乗り込みました。
私は文字通り泣き叫んだ。
泣きすぎて頭ががんがん痛くなっても、叫び過ぎて声が出なくなって血の味がしても、目が溶けるんじゃないかって思えるくらい涙を流しても、私は泣き続けた。
人生でこんなに泣いたことは無い。
それくらい、泣いて泣いて泣きじゃくった。
その間、ルークスはずっと私を抱き締めて、背や頭を撫でてくれていた。
それにどれだけ救われたか解らない。
そうして私は、空が僅かに白み始める頃まで泣き続けた。
「…ぅ、ん……」
包まれる温もりが心地よくて、すり寄ると僅かな笑い声が耳を擽る。
「…んー…?」
「起きたか、夜宵?」
寝起きに響く悶絶級のイケボに、飛び上がるようにしてその腕から逃げ出す。
「あ、ははははっ!猫みたいだな、夜宵。」
「だ、だってっ!」
真っ赤になりながら叫んだ声は掠れたが、痛みは無かった。
超自己治癒力様々である。
「思ったよりも元気そうで良かった。」
ルークスは優しい笑みを浮かべてくれた。
「うん、私も…ちょっと予想外。」
哀しみと怒りは勿論胸を苛むけど、不思議とスッキリとした気分だった。
「……まだ、痛みはあるけど…吹っ切れは、した。」
にっと笑ってルークスを見た。
ルークスは立ち上がって手を差し出してくれた。
「行けるか?」
「うん。」
頷いて手を取ると、引き寄せられて腰を抱かれる。
抵抗を試みるが、びくともしないので諦める。
この定位置からは逃れられそうになかった。
ルークスは、この上無く嬉しそうに笑ってる…くそぅ…。
◇
ふわりと巻いた風は、昨夜は気付かなかったが清浄で心地良い。
もう、数度降り立った岩山からは出航準備をする船が見えた。
あと一刻もしない内に出航するだろう。
「何もしなくて良いのか?」
「……うん、今はね。」
ルークスと2人並んで座り、船を眺める。
何気なく歌が零れ落ちた。
その歌は、この世界の古い古い言葉の歌。
袂を別った友へと、戦場で歌われた歌だった。
これから私が紡ぐのは、そんな懐古的な優しいものじゃない。
けれど、過去の自分と別れを告げるには丁度良かった。
「戻りたいのか?」
そんな歌だったせいか、ルークスに問われた。
「全然。」
きっぱりと言い切って立ち上がった。
船が出航していくところだった。
「信じたくない気持ちは…昨日まであったけどね。」
戻りたいと思ったことは1度も無かった。
「…なんか、何もしないのも癪だから…霧の結界、今張っちゃおうか!」
「抜け出すのに…どの位掛かると思う?」
悪戯好きな子供の様な顔をして、ルークスが乗ってきた。
「さぁ…あのポンコツ魔導師じゃ、ねぇ。」
「酷い言い様だな。」
くつくつ笑いながら、ルークスも立ち上がる。
本当、自分でも酷いとは思うが…腹を決めてしまえば言いたい放題だ。
むしろ、あそこまで扱き下ろされれば…絶対の信頼だって醒めるを通り越して絶対零度まで落ちると言うものだ。
「じゃあ、やりますか。」
2人、手を重ねて術式を紡ぐ。
ぎゅんぎゅんと奪われる魔力とは逆に、気分はどんどん高揚していく。
まるで船を追いかけるかのごとく、海岸から白い霧が拡がって…やがて飲み込まれた。
「最低でも1週間は出られないでしょうね。」
「それで済めば良いがな。」
2人で笑い合う。
小さな、悪戯程度の復讐だが…先ずは、1歩である。
「さて…ルー?ダンジョン攻略を再開する前に、1ヶ所付き合ってほしい所があるんだけど…いい?」
「構わないが、何処へ行くのだ?」
「………あのね…」
◇
聖地ナトゥーラマグナ。
世界に残された僅かな神の内、大地の女神が鎮座し、世界樹が全体を覆う小さな島。
そして、各国の王だけが入ることを許される、世界会議が行われる場所。
今年は2年に1度の世界会議の年だったが、それはまだ1ヶ月先の事…だが、今そこに4人の王が集まっていた。
竜王国アストルムの王、ラディウス・アストルム
神獣国ラウルスの王、ザイン・フィロソフス
海洋国サフィラスの王、ラピス・サフィラス
天空都市カエレスエィスの最高議長、ミセリア・トリスティティア
本来は、ここに神聖帝国アルビオンの王が加わるのだが、今は居ない。
「急の呼び出しですまないな。」
3人の王を召集したラディウスは軽く頭を下げる。
「魔王が討伐された時点で、早急に話し合いを持たねばならなかった事は全員が解っていたこと。」
白い鬣を撫でながらザインが応えると、隣で頬杖を付いていたラピスも頷く。
「妾もそれには同意じゃ。」
「次の会議の対策は立てなくてはなりませんからね。」
ミセリアが目を細めて長い髪を払う。
「それより…あの娘が落命したと言うは、やはり…真なのか?」
「残念ながら、事実のようだ。」
縋る様に問うラピスに、視線を落としながらラディウスは答えた。
「それも、交渉材料に…してくるでしょうね。」
「だろうな。」
不快感に眉根を寄せながらミセリアとザインは呟き合う。
「彼の国の好きにさせるわけにも行かないからな。」
「全くもって、忌々しいことじゃ。」
ラピスが盛大に溜息をつき、さて話し合いを始めようかと言うとこで、扉の外から僅かな声が聞こえてきた。
途端に4人に緊張が走る。
徐々に近づく声と足音が部屋の前で止まる。
「失礼しまーす」
がちゃり、と音を立てて入ってきた人物に身構えていた4人が目を丸くする。
「…………………………夜宵……?」
ラディウスの口から零れた名前に、彼女は笑った。
「お久しぶり、かな?王様達。」
王様会議に乗り込みましたー!
何で入れたかは、次回で。
名前がそろそろこんがらがってきました…自分の中でwww
絶賛整理中です。




