勇者、成り立ちを知りました。
翌日、ルークスと2人ぐったりしながら朝食を頂いた。
容姿が変わったせいで選択肢が広がったのと、ルークスというイケメンが加わったせいでルシオラ様が更にヒートアップしてしまった。
「………暫く、洋服は…見たくない…」
私が呟くと、ルークスも同意してくれた。
そこへ上機嫌のルシオラ様が入ってきた。
「あら、だらしないわね。」
ルシオラ様は香りの良い紅茶を受け取りながら、頬杖をついて笑う。
「貴女達、もう食事も睡眠もたいして摂らなくても平気な身体でしょう?」
そう、私達は睡眠も食事もほとんど必要がなくなった。
精霊は大気に漂う魔素を無意識に吸収するので食事は摂らないし、実体を持たない精神体なので睡眠を必要としない。
一方、古代竜は有り余る程過剰に振られた体力のお陰で、不眠不休でも数年は何とかなるだろう。
なので、最早睡眠も食事も娯楽近い…人間だった私には、習慣なので選択肢は摂る一択なのだが…
「精神的疲労の方が激しいんです…」
ともかく、今回のは身体より精神のダメージの方が酷い。
「ふふっ♪洋服は、昨日着せた中から動きやすそうな物を選んでおいたから、持って帰りなさいね。」
優雅にお茶を飲みながら言うルシオラ様を、テーブルに突っ伏しながら見上げる。
「ルシオラ様の、そういうトコ…大好き。」
「あたしも夜宵が大好きよ。」
ふんわり微笑まれて、ふにゃりとしただらしない笑みを返す。
「で?これからどうするの、夜宵。」
「……それなんだけど…」
テーブルから身体を起こしてルークスとルシオラ様に向き直る。
「実は…まだ何も決めてないの。」
甦ってからずっと考えてた。
自分のこと、ルークスのこと……彼等のこと。
「私の、気持ちは…まだ、復讐じゃない。」
一緒に復讐を、と言ったのに…
申し訳なくてルークスの顔が見れずに、絞り出すように言った。
「私はまだ…彼等を何も、知らないから。」
気持ちも、意図も、まだ何も知らない。
だから、まだ…復讐は出来ない。
「良いんじゃないの?それで。」
ルシオラ様の声に弾かれた様に顔を上げると、ルークスもルシオラ様も優しい目で私を見ていた。
「夜宵の納得行くまで付き合おう。」
「……ありがと、ルー。」
情けないな、と思いながらも2人の優しさが嬉しい。
「あたしなら、即天罰だけどね。」
「私もだ。」
「2人共、台無しだよ?!」
自分でも甘いと思ってるけど!
優しく笑ってくれる2人に、感謝だ。
「でもね、何をするにしても…まず拠点を確保しようと思うの。」
気を取り直して私は2人に告げる。
「拠点、か。」
「確かに貴女達、今宿無しだものね。」
そう、私はあの国に帰れないし、魔王領というか城は半壊状態。
ガチで宿無しなのだ。
「例え、飲まず食わずで数年は大丈夫だとはいえ、落ち着けるトコがないのは嫌だし…」
「確かに、拠点は必要だな。」
ふむ、とルークスは腕を組む。
と、突然ルシオラ様がカップを置いて立ち上がった。
「ルシオラ様?」
「2人共付いてらっしゃい。」
お勉強の時間よ、とルシオラ様は笑った。
◇
早足に歩いていくルシオラ様を追いかける。
「ルシオラ様、どこに行くの?」
「夜宵、さっきの拠点の話だけど…単純な話、貴女だけならどうにでも出来るでしょう?」
「それは…」
確かにあの国には帰れなくても、他国ならば事情を話せば自分を受け入れてくれるだろう。
「問題は、魔王が居る事実だわ。」
「だろうな。」
事も無げにルークスは頷いた。
「だから、貴方達は自分達で帰る場所を作るべきだわ。」
そこまで言って、ルシオラ様が足を止めた。
辿り着いた場所は、大きな扉の前。
軋んだ音を立てて扉が開くと、途端に古い紙の匂いがした。
「さて…どこだっかしら?」
ぐるり、と見渡してルシオラ様は首を傾げた。
そこは、書庫だった…しかも、かなり巨大な。
円筒形の部屋は、直径が約100m程で吹き抜けになっていた。
大きなテーブルや椅子、ソファー等が1階には置いてあった。
1階、とは言ったがそこから上には階がない。
壁は一面本で埋まっており、壁に沿うように螺旋階段が上へと延びている。
因みに上は見えない。
「はわー…」
「圧巻だな…」
口を開けて上を見ていると、はしたない…とルシオラ様に怒られた。
「えっと…あぁ、これだわ。」
これ、と言った本は遥か上からふわりとルシオラ様の元に降りてきた。
どうやって探していたのだろう…?
「何ですか…?それ。」
「創世物語、か?」
「あら、よく知ってるじゃない?魔王。」
ふふ、と笑ったルシオラ様がテーブルの上にその本を開く。
「ただ、これは一切の脚色が無いものよ。これを見て。」
ルシオラ様が指し示したのは、地図が描かれているページだった。
「現在の魔王領は、ここ。創世時、あそこは神々が住まう土地だったの。」
指し示した場所には奉る大地と書かれていた。
「かつては、こことも繋がっていたし…翼人達も神の使徒としてあの場所に住んでいたの。」
そもそも、この世界の神々はものぐさなあの神様がこの世界を見守らせるために創ったらしい。
創世当時は数もそれほど多くは無かったそうだ。
「どれ程かの時間が経って、神々は増えていったわ。そして、事は起きたの。」
ぺらり、とページが捲られると大勢の神々と翼を持った人達が武器を、魔法を手に天に昇って行く絵が描かれていた。
「気が向いた時に手を出し、暇潰しのように世界を引っ掻き回す創世の神を排除しようと考えたのね。」
神話にはままある事…だが、神々はそもそも間違えた。
神様は、普通の創世神じゃなかった。
「創世の神は、この世界とその外も含めて膨大な数の世界を片手間で管理できる様な数少ない神なのよ。」
その数少ない神の中でも気まぐれで、退屈が嫌いな変わり者。
「戦いにすらならなかった。神々はただ蹂躙されたわ。」
"君達、面白くないね。"
たった一言そう言って、神様はほんの少し指を動かしただけだと言う。
ぺらり、またページが捲られる。
ありとあらゆる天変地異が神々を襲っていた。
創るのも、壊すのも…神様にとっては、本当にただの暇潰し。
世界ごと壊されなかっただけ幸運だったのかもしれない。
「そうして、神々の殆どは滅ぼされ、生き残った僅かな者達も封印されたわ。」
「封印?」
私は首を傾げた。
「そう、世界中にね。」
ページ捲る。
そこにはまた地図があった。
最初の地図と違うところは、世界の中心に小さな島ができたこと、奉る大地の1/5位が削れて空に浮かんだこと、世界中に金色の点が無数に打たれていること。
その点の位置に覚えがあった。
「生き残った翼人達は世界に奉仕し続ける呪いを掛けられ、神々は永久に地下深くに閉じ込められたわ。」
「それが…天空都市カエレスエィスと、ダンジョンの成り立ち。」
「そうよ。」
ダンジョン…それは魔獣が闊歩し、様々な希少なアイテムが存在する冒険者のロマンが詰まった場所。
世界各地に存在し、その形状は一つとして同じ物はない。
深くなればなる程に難易度は上がり、それと共に得られる物の希少度も上がる。
「そして、瘴気は神々の怨みと憎悪よ。」
神様への、神様が作った全てへの怨嗟の気…それが瘴気。
金の点は、現在の魔王領にその半数近くが集まっていた。
「魔王領の瘴気が濃いのは神々が多く封印されてるから?」
「それだけじゃないわ。」
ダンジョンの難易度は、封印された神の格に比例するという。
魔王領は、強力な神々の悉くが封印されているらしい。
「それに加えて、攻略されてないことも要因の1つね。」
ぱたん、と本を閉じたルシオラ様は少し休憩にしましょうか、と言って指を鳴らした。
また、更新が遅れてすみません!
色々と設定を整理していたら、こんがらがってしまいました( ̄ロ ̄lll)
まだ、整理中なのでまた遅れるかもしれません。
も、申し訳ないです。




