閑話 嫁(魔王)と姑(精霊王)の闘い
悲鳴を上げて連行された夜宵を見送り、ルシオラは深くソファーに座り直してルークスを見遣る。
その視線は驚く程に感情を感じられない。
「……あなた、あの娘に懸想してるの?」
「あぁ、愛している。」
直球で投げ掛けられた言葉を真っ向から打ち返すように、ルークスは言葉を返す。
「…貴方達、対なる勇者と魔王よね?」
「今はもう違う。」
「最後の戦いの時まで、1度も接触したことは無かったはず。」
「その通りだ。あの時に初めて出会った。」
だからどうした、とばかりにルシオラを睨む。
「この想いに、偽りはない。」
「…………その様ね。」
とりあえず、とでも言うようにルシオラは頬に手を当てる。
「それで?これからどうするつもり?」
「それは夜宵が決めることだ。」
復讐は、あくまで夜宵のものでルークスのものではない。
「じゃあ、貴方はあの人間共を…」
「殺してやりたいとも。」
じわり…と静かな声に滲み出たどす黒い感情は、激怒と憎悪をない交ぜにした強い、強い感情だった。
「だが、夜宵は…まだ、どこかで希望を持っている。」
彼女の言葉の端々に見られる感情は、仲間を信じたいと言っていた。
「やっぱりそうなのね…」
ルシオラの目にも憂いの感情が浮かぶ。
「だからこそ、奴等の処遇は夜宵が決めるべきだ。」
自分がすべきは、それによって彼女が後悔しない様にすること、そして彼女が傷つかないようにすること。
「……考える方向が同じならそれでいいわ。」
ふぅ、と息を付いたルシオラに今度はルークスが問いかける。
「貴方は…どうするつもりだ?」
「どうって…私を怒らせた事を後悔させてやるつもりよ?」
ふわりと2人の髪を風が揺らす。
すぅっとルシオラの瞳に冷酷な光が灯る。
「私の愛し子を殺めるってことがどういうことか…分からせてやるわ。」
「だが…」
「そうね、あの娘は望まないかも知れないわね。」
ルシオラに手を汚させたくないと言うだろうし、自分の復讐だから手を出さないで欲しいと言うだろう。
「基本的には夜宵を尊重するわ。」
だけど…とルシオラは目を細める。
「奴等は、私を侮りすぎてるわ。」
人間には、精霊が見える者が少ないという。
だからこそ、人間は精霊を軽視する傾向がある。
どんな状況に置いても、精霊と関わらずには生きていけないと言うのに…その精霊達が最も溺愛する娘を殺したのだ。
「少なくとも、関わった奴等は須らく罰を与えるわ。」
「そうか…」
これはもう、精霊の沽券にも関わることなのでルークスにも…勿論夜宵にも口出しは出来ない事だろう。
「それはそれとして、夜宵に手を出すのは許さないわよ?」
にっこりと良い笑顔でルシオラは言い切る。
「それは、夜宵の気持ち次第だろう?」
ルークスも笑顔で返す。
ここを譲るわけには行かない…2人の間に火花が散る。
「私は、あの娘の保護者みたいなものよ?」
私の許可無しには絶対に手は出させない。
「どうしても、と言うなら私を納得させなさい。」
「望むところだ。」
挑戦的に笑うと、ルシオラは笑みを深めた。
「じゃ、話も一段落ついたことだし…貴方にもお仕置きを受けてもらおうかしら。」
再び指を鳴らすと、わらわらと精霊が集まってきた。
「貴方も…着せ替えがいがありそうだわ。」
ウキウキした様子で言われた一言に、流石のルークスも顔を引き攣らせた。
そうして夜宵同様に、ルークスもルシオラの気が済むまで着せ替え人形と化したのだった。
はい、嫁姑争い?をお送りしました。
ルシオラ様は怒らせると恐いのです!
夜宵に対しては世話焼きなオネェですが、本来は無慈悲な自然そのものみたいな人物です。
夜宵が望まないので、天変地異を起こすようなことはしませんが…只では済まないでしょう。
さて…毎日暑いですが、熱中症注意ですね。
皆さんも気をつけてくださいねー(; ̄ー ̄A




