1.Maya
この物語は作者の思春期を思い出し参考にしながら書かれたフィクションです。
登場人物の名前、学校名等全てフィクションです。
また、物語の途中リストカットや自傷のある描写がでてきます。
そのようなものが苦手な方、感情移入しやすい方はご注意ください。
明日天気になぁれ。
アタシの心はいつだって雨だ。
最後に晴れた日なんて……
もう…思い出せないよ。
ーピピピピ……ー
「んー……。」
携帯のアラームが鳴り響く。
「……、7時半か……」
ダラダラと起き上がる。体が重い。
スッキリしない朝。
「また朝か。」
明日なんか、来なければいいのに。
ずっと、そう思ってた。
名前、松口真弥。
年齢、15歳。
職業、中学3年生。
家族構成、お堅いサラリーマンでキレやすい父親と世間体を人一倍気にする気の強い母親、姉と違って人気者の妹の4人家族。
これがあたしの自己紹介。
他に紹介できるようなことは何もない。
あたしはどこにでもいる、普通の中学生。
これと言って特技もない、冴えない中学生。大勢の中の1人。簡単に溶け込んでしまうくらい、何の個性も特徴もない中学3年生。
「行ってきます。」
どこにでもいる、平凡な人生を送る中学3年生。
それが、アタシ。
特に楽しくない学校。義務だから行くだけ。
形だけ登校。授業はいつでも上の空。成績はいつも下の方。
適当にノートとって、適当に質問に答えて、なんとなく仕上げた課題を提出するだけ。
休み時間は、形だけ友達の話を聞くふりをしながら、手首に残る無数の傷跡を数えて時間が過ぎるのを待つ。
好きな男子の話、流行りの歌手の話、嫌いな先輩の話、どれもこれと言って興味がない。
でも、否定するのも肯定するのもめんどうだから、適当なとこで相槌をうちながら、笑顔で話を聞く。
「そうだよね、私もそう思うよ。わかるなその気持ち。」
だいたいの女子は、このセリフを言えば納得する。
そして、口々にこう言う。
「真弥に話してよかった!やっぱり、こういう話聞いてもらうなら真弥だね!!」
こういう話って、どういう話だよ。
そう思ってみても、決して口には出さずにまた笑顔で
「いつでも話聞くからね。」と答える自分に反吐がでる。
そんなことの繰り返しで一日が終わる。
つまんない生活。
学校から帰ると、ノートパソコンを開く。れが日課になっていた。
毎日同じホームページにアクセスする。
心地よいピアノの曲が流れるページや、綺麗な背景のページ。
どれも、いわゆるメンタル系サイト。
そこにリンクしてる間は、嫌なことから全て解放された気分になった。
ここだけが、唯一の自分の居場所だと思ってた。
顔も名前も知らない相手。誰も本当の自分を知らない。それが心地よかったのかもしれない。
でも、今となってはもうその頃の気持ちがよく思い出せないんだ…。
一通り見ると、また別のページにアクセスする。そんな一連の動作を繰り返せばあっという間に時間が過ぎる。
外が暗くなる頃、その日課は終わる。
こうして、あたしの1日の大半が過ぎていく。
―ガチャ-
「あ、おねーちゃん。今ちょうど呼びに行こうと思ってたんだ!」
妹の歩美が、手間が省け嬉しそうな様子でにこっちを見て言った。
「ご飯できたから、食べなさい。母さんこれから父さんと少し出かけるから。」
「…。誰か死んだの?」
喪服姿で慌ただしくしてる母は、返事をする前にキッチンで電話をし始めた。
「お父さんは?」
「なんか、直接会館に向かうとかなんとか言ってたから、仕事帰りにそのままお通夜向かうんじゃない?」
「で、誰が死んだの?」
「んー、なんかおばーちゃんの妹の旦那さんだって」
「あ。身内だったんだ…。」
「帰り遅くなると思うから、戸締りよろしくね!じゃあ、母さん行くからね!!」
「はーい。いってらっしゃーい。」
そう言い残し、バタバタと母は出て行った。