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第七話「甲冑」

この日美香が参加する撮影シーンは、青銅の魔人に連れさらわれた雪子が手塚邸地 下にある青銅魔人国で青銅の鎧を着せられ、青銅の魔人に洗脳されるというものであった。


 いかにも地下室にでもあるような手術室のセットで美香は練習していた。渡された台本のプリントによれば、今回は雪子が青銅の甲冑を着せられるシーンを撮影するものであった。段取りの確認では甲冑そのものを見せてはもらえなかったが、青銅の魔人役のスーツアクターが着ている着ぐるみと同じようなものを着せられるというのは確実だった。美香は以前商店街の客寄せイベントで真夏の炎天下パンダの着ぐるみに入るバイトをした事があったが、あの時のようにひどく暑苦しい思いをしないといけないかと思っていた。「確かあの時は、体重が1日で4Kgも落ちて睦実に絞れない雑巾をさらに絞ったようだね、とからかわれたね。やっぱり気持ち悪くなって帰ることになるのかしら」とつぶやいた。


 美香は、自分にとってこれがまともな出演場面が最後ではないかと考えていた。これは原作では確か雪子が監禁される場面があり、それ以降は特に主人公達と絡むこともないので、次は甲冑の「内臓」をやって出番は終わりだという事に気がついたからだ。そのため、やや憂鬱になったが今日でまともに出演するのは最後だとして気を引き締めた。


 撮影が始まった。まず両手両足を荒縄でしばられ猿轡をされた美香こと雪子が青銅の魔人の子分達によって運ばれてきた。台に置かれた雪子の身体から拘束具だけでなく着用していたセーラー服を脱がせ下着姿にされたところで黒いシートをかけられるところまで撮られた。撮影中美香は気絶している演技をしていたが、このようなシーンがあるから無名の私が起用されたのではないかと考えていた。


 ここでカットになり美香は起き上がり着替えのため更衣室に向かった。甲冑のインナーである全身タイツ姿になるためである。更衣室では女性スタッフが全裸になった美香の身体にローションのようなものを塗り全身タイツを着るのを手伝ってくれた。この全身タイツは普通のレオタードの生地ではなく原材料が想像もつかない素材だった。肌触りがなめし皮のようなのに軽く曲がりやすく肌に吸い付いてくるようなものだった。また着用方法も見たことがなく、ウェットスーツのように背中の開いたチャックの穴から体を入れるのではなく、小さな首の穴から体を入れるようにという指示だった。このような難しい着用がインナーに対し女性スタッフの一人は「なんで、一人では絶対着せれんような面倒くさい衣装を用意したのよ。ホントすごい力が要るわ!一苦労だ。困った衣装係の兄さんは」と愚痴をこぼしていた。すると衣装係が入ってきた。あの最初雪子をスケ番の格好をさせようとした人だ。「製作発案者が特撮ヒーローもので背中にチャックがあるのは興ざめだというので、このような特殊なものを用意したんだよ。黙って着せなさい」と注意した。

どうにかして美香の身体を穴から押し込み、首から下を黒く覆った。このタイツは皺も隙間もなく完全に美香の身体に密着していたが不思議なことが数多くあった。まず縫い目がなく人間の皮のようになっていたことである。そのようにする特殊な製造技術はあるのかもしれないけど皮のような素材で出来るのかは聞いたことはなかった。それにあんなに身体をいれるために引き伸ばしてもゴムでも使っているように破れなかった。しかし皮の肌触りなのにゴムのように伸びるという生地も見たことはなかった。また冷却機能でもついているかのように着用していても暑苦しくならないということであった。さらに不思議なのは、このタイツを着ているにもかかわらずまだ全身の素肌をさらしているかのような感覚であったことである。「おかしいわ、このタイツ。まるで私の体の一部かのようだわ。それに私のボディラインが強調され恥ずかしいわ。」と美香はつぶやいた。


 再び台に載った雪子に黒いシートがかけられた。ここから撮影再開である。シートをとられ首からしたが黒いマネキンのようになった雪子の肢体が現れた。意識を戻した雪子は恐怖のあまり助けを求め叫んだが無駄だった。雪子のそばにこれから着せられる青銅の甲冑が運搬車で子分の一人が押してきた。この鎧の身体に当たる面に生物のような有機体が付着しており、蠢動していた。この気持ち悪いものを運んできたのは、先ほどの衣装係であったが、彼は作中で青銅の魔人が操る戦闘員の衣装を身に着けていた。彼もまた出演者であった。


 半狂乱になった雪子が「私を青銅の魔人の戦闘員にでもしようとするのよ!この黒い服を脱がしてちょうだいはやく!それに得体のしれないものが付いた人形の部品はなんなの!まさか私に・・・」と叫んだ。それに対し子分は「戦闘員?そうじゃない。これからあんたを青銅の魔人様の花嫁にするのだ。それにふさわしいようにあんたを改造するのだ。これから弟や小林、それに明智なども捕らえて青銅の甲冑を着せてやってから永遠に魔人様のために働いてもらうが、あんたは魔人様の寵愛を受けるのだから喜べ!さあ、この甲冑を身に着けさせてやる。これから一生あんたは俺を感謝するようになるからな。」といった。


 その言葉を聴き雪子は絶望的な気持ちになり「私を青銅の魔人の妻にでもするということて、どうゆうこと?」と子分に詰め寄ろうとしたが、薬でもきいているかのように、その身体は動かすことはできなかった。「そうだ、これから青銅の魔人様と同じ姿になるのだ!あんたに着せる甲冑は覆われたら一生脱げないぞ。さあ諦めて運命を受け入れな!」といって雪子の身体に青銅の鎧をつけ始めた。


 ます青銅の靴を雪子の足先にはめた。ついで台を垂直に起こし直立させた雪子の身体を着せ替え人形のように次々と両手両足や胴体に鎧の部品をはめ、雪子は首から下はブロンズ像のような姿と化した。この時、鎧の部品の下に塗られていた有機物が、彼女の身体に張り付いて鎧が身体の一部へと変貌していた。その際その有機物が及ぼす作用のためか、雪子は官能的な感覚にでも襲われているかのような悲鳴を上げていた。そして頭部にヘルメットをかぶせるように兜を装着した。そして最後に顔を青銅の仮面で覆いすべてが終わった。雪子の身体は青銅の魔人いや青銅の魔女になった。


 「雪子よ、お前は青銅魔人さまと同じ姿になったのだよ」と子分はいったが実際は違っていた。その甲冑は女性固有の曲線で構成されており、胸のふくらみや胴のくびれのバランスがよく大変美しいものであった。そして顔の形相は青銅の魔人の仮面が畏怖を与えるものなのに雪子のそれは慈愛に満ち溢れた観音菩薩といった趣のあるものであった。まさに芸術作品ともいえるため、魔女と言うのは、本当は間違えなのかもしれない、と思わせるものであった。


 ここまで完成した時、青銅の魔人が入ってきた。「雪子、わしが想像したような美しい姿になった。この姿にするためにお前に近づいたのだ。」と満足そうな様子であったが、雪子は「どうして、こんな姿にしたのよ。早くもとに戻してパパのところに返してよ!私があなたの花嫁なんかにならないといけないのよ、本当にいやだ!」と言い返した。「おお、そうか美しい姿にしてやったのにまだ不満か。でもこうすれば一生わしといても嫌にならんし。」といって睨みつけた。すると雪子は「このように美しい姿にしていただき、青銅の魔人様ありがとうございます。この身も心も全てあなたに差し上げます。雪子は洗脳されたのである。

 カット!お疲れ様ですOKです」との声がかかり、撮影は終わった。ここで美香は兜をはずして一息をついた。「うまくいってよかった。それにしても身体が暑くないのは不思議だわ。衣装の下で汗をかいている感覚はないというのも不思議だわ。何か特別な仕掛けでもしているのかな。」といった。たしかに美香は暑苦しくなさそうであった。身体に完全に吸い付いていた鎧が気持ちよく、まだ衣装を脱ぎたくないと思っていた。それに痩せた美香の体に鎧が覆われた事で、バランスが取れた豊満で美しい女性らしい姿になっており、自分でもうっとり見入るものであった。

しかしこのままでは電車に乗って帰ることができないので、残念だけど脱がないといけないと考えていた。


 その時、監督から「君!クランクアップまで、その姿でいてくれないか。これはお願いではなく命令だ。そのかわりギャラははずみますから、我慢してくれ。」と強い口調で言われた。「あと一週間も甲冑を着ないといけない理由がどこにあるのですか?」と美香は驚いた。


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