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第一〇話「兆夢」

 夢を見た際、夢の中で夢だと理解している場合がある。しかし夢があまりにも現実的なら、なんかの前兆と思うときはないだろうか。美香が転寝のあいだにその日見た夢がそうであるように。


 雪子は人間の皮膚のような全身タイツを胸から下を覆われていた。その姿を何故か雪子は幽体離脱しているかのように見えていた。「これからそうなるというのよ。なんか改造するというの、離してください!」と叫んだが、誰も応じることはなかった。その時あの青銅の魔人が入ってきて「お前は人魚になりたいといっていただろ。だから、これから人魚にしてやるのさ」と青銅のマスクは半ばせせら笑ったように話した。そして雪子の身体を得体の知れない方法で変身させた。


 ます雪子の下半身にドス黒い液体をホースで注ぐとタイツに覆われた足の組織が溶解し始めた。この破壊的な痛みなのに雪子は「身体が崩れているのにムズムズするだけという感覚はなんなの?私はどうなるというのよ。」と叫んだ。そして魚の胴体のようになると、身体の表面は青銅の鱗に覆われ背びれや尾びれなどが生えてしまった。そしてその変化はタイツで覆われた身体全体に及んでしまった。こうして「青銅の魔女」ならぬ「青銅の人魚」になった雪子はそのまま水槽に運び込まれていた。


 「青銅の魔人は私を金魚のように飼うつもりなのかしら。それにしても意味がわからない」などと雪子が話していると身体に再び変化が現れた。それも急激かつ劇的であった。その変化に雪子は悲鳴を上げた。


 青銅の鱗の厚みが増し、雪子の頭が巨大化し突起状へと変化し厚い青銅の甲羅に覆われた。そして細い雪子の腕も巨大化し5本の指は消え去り二本の塊となった。そして胴体からは数多くの腕が生えてきた。そう雪子は巨大ロブスターのようになった。


 「雪子よ、お前は俺のためにこれから沈没船の財宝を探して来い、そのハサミはな沈没船の船板を切り裂くものだ、さあ行くんだ。これからお前は俺のために都合の良い形態に其の都度変貌してもらうのさ。まあ俺のための魔人さ、次は逃亡するための大烏にでもしてやるさ。一生がんばりたまえ。」と、またせせら笑った。雪子はもはや人間としての言語を話すことは出来なくなっていたが、心の中ではそんな奴隷になるのはいやだと叫んでいた。


 その瞬間、美香は夢から覚めた。全身から汗が噴出していた。しかし美香は恐ろしいことに気づいた。そう汗は青銅の甲冑の表面から結露したかのように噴出していた。すでに美香の素肌は甲冑と癒着し生理的機能まで結合していることを意味していた。「どういうこと?私はあの夢の中と一緒で怪人になったということ?」と驚愕した。だから青銅の魔人の扮装をしていても快適な理由がわかった。すでに自分の体の一部になっていたからだ。「これはさっきと同じ夢ノ続きだよね?」と叫んだが、残念ながら現実だった。夢の中と同じく変貌を遂げていたのだ。

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