tea time
暖かな光が降り注ぐ午後。天気がよく、ハルルが遊びに来ていたので、アヤとタクトは、テラスでお茶をすることにした。
他愛ない会話をしながら、紅茶やケーキを食べる。いつもの、ゆったりとした午後の時間。
話は、ハルルの一言で、数日前の出来事のことになった。
「そうだ。アヤちゃん、時には本音を言うことも大事だよ?」
「何? 急に」
「んー? だってさー」
ちゃんと答えなかったハルルを、アヤが軽く睨む。睨まれたハルルは、楽しそうに笑った。
「忘れたとは言わせないよ? まだ三日くらいしか経ってないんだから」
「忘れてないよ。でも、どうして急に?」
「それは、タクトくんに話しとこうと思ってね」
その言葉を聞いた瞬間、アヤは右手に持っていたティーカップをカチャッとソーサーの上に置いた。そして、横目でタクトを見た。
人前では滅多に取り乱すことのないアヤだが、珍しく慌てている。そんなアヤを見て、ハルルは楽しそうに笑う。何も知らないタクトは、不思議そうに首をかしげた。
「僕がいない時、何があったんですか?」
「私がちょっと遊びに来た時だったんだけど、アヤちゃん、すごく落ちこんででね」
「アヤは淋しがり屋ですからね」
「そうなのよねー」
ハルルは、自分達の会話を静かに聞きながら紅茶を飲むアヤを見た。何かを企んでいるような表情を浮かべている。
「なに?」
そのことに気付いたアヤが、不機嫌そうな声をあげた。すると、ハルルはさらに口元の笑みを深くした。嫌な予感しかしない。
「本当は、アヤちゃんが淋しがってたよって言うだけのつもりだったんだけど…」
再び、ちらっとアヤの方を見る。
「アヤちゃんは違うことを想像したみたいだから……」
「い、言わなくていいよっ!」
顔を赤くしてアヤが叫ぶ。
「アヤがそんなに慌てるなんて、珍しいね。何があったの?」
「いっ、言わないっ」
「ふーん。じゃあ、ハルル先生に聞くよ?」
ぴたり、とアヤの動きが止まる。そして、恨めしそうにタクトを見た。タクトの方はというと、余裕の笑みを浮かべている。
「イジワル」
「教えてくれないアヤもね」
「……むぅ」
いつもと変わらないお茶の時間が過ぎていく。
「で、タクトくんはいいの?」
「何がですか?」
「アヤちゃんが照れた理由」
「もう、はるるん!」
「いいんですよ。本当はまだ気になりますけど、あまりアヤを困らせたくないので」
そう言ってタクトが笑うと、アヤはほっと一息吐き、ハルルは不服そうに口をとがらせた。
そんないつものお茶の時間。
fin.
執筆H24 10/3
拍手文H25 2/5~3/5
…ひとやすみ…
「想うのは…」シリーズの後日談です。この三人の組み合わせは、書いていて楽しいです♪アヤは大変そうですが(笑)