禁断
少年は魔法を詠唱し始める。その詠唱を聞いたソルの目は驚きに満ちた。
「禁忌魔法だと」
禁忌魔法。それはその名の通り禁じられた魔法だ。そもそも禁忌魔法はその効果の危険さと副作用の強さから、唱えるのも国の法律で禁じられている。しかし、問題は禁忌魔法事態ではない。その危険さから禁忌魔法の呪文及び効果は国によって厳しく管理されている。いかに国管理の魔法騎士学校の生徒でも、一介の生徒が知りうるわけがない。
(この呪文。確か、この効果と副作用は……!?)
ソルは一国の王だ。しかも、大陸の大半を占める超大国の。だからか、ありとあらゆる魔法、禁忌魔法などについても知りえている。それによって、気づく。今、少年が唱えている禁忌魔法の危険さを。
「待て! その魔法は危険すぎる!」
ソルは戦闘モードにしては珍しく声尾を張り上げる。それだけ、今唱えられている禁忌魔法が危険だということだ。
しかし、少年はソルの様子を見て、獰猛な笑みを浮かべた。どうやら、ソルが声を張り上げたことを焦りだと思ったようだ。
少年は詠唱を完全にしてしまった。すると、詠唱と同時に少年の足もに現れていた魔法陣が赤黒く禍々しく光る。少年の魔力を大量に吸って発動しようとしている。魔力が足りなかったら、魔法は失敗に終わるがどうやら、少年はかなりの魔力量を有していたようで、発動までの魔力が足りてしまった。もう、この段階では魔法止める手段は存在しない。
「がははっ! これでテメーも終わりだ!」
大量の魔力を消費して額に脂汗を浮かべながらも少年は笑う。しかし、笑いもすぐに戸惑いになった。魔方陣から現れた赤黒い禍々しい煙が少年に纏わりついてきていたからだ。
「な、なんだ!? なんなんだこれは!?」
どうやら、少年はこの禁忌魔法の効果と副作用を知らなかったようだ。この禁忌魔法は自らを魔物という古代に生息していた怪物へと変換させる。変換させる魔物は魔力によって決まるが、少年はかなりの魔力を吸われた。かなりの上位ランクの魔物に変換されるだろう。さらに、この魔法の恐ろしさはその副作用にある。魔物にされた場合、理性を失いただの怪物になるばかりか、魔法が解けても、もう完全な人の姿へとは戻ることができない。一部が魔物と同化してしまうのだ。
「う、うわあぁぁぁ!」
少年が悲鳴と共に完全に赤黒い煙の中へと消えてしまう。
「GURUUUU。GAAAAA!」
次に煙を吹き飛ばして現れたのは、もう先ほどの少年の面影を残さない怪物だった。
身体全体を覆うのは煙の色と同じ禍々しい赤黒い鱗。大きさは先ほどの少年と同じぐらいだが、顔はまるで、竜を思わせる面長になっており、目は赤く光っている。更には長い真っ黒な尻尾を持っており、手には少年が持っていた剣が握られている。この姿は古代に生息していた魔物の中でもかなりの上位ランク【テイルブラック・リザード】
先ほどの少年とは全く比較にならないほどのプレッシャーをソルへとかけてくる。さすがのソルでも警戒心をあらわにする。
しかし、テイルブラック・リザードが向かったのはソルではなかった。
魔物が現れましたね。これから、どうなるんでしょう?