圧倒
完全にソルはその場からいなくなっていた。
「どこ行った?」
「さぁ?」
二人の少年はあたりをきょろきょろを見回して探すがどこにもソルの姿はんない。
「何やってる! さっさと探せ!」
リーダーの少年はそう命じるが姿が見えないんじゃしょうがない。
そのソルは少年たちの上、コロシアムの上空にいた。
(ちょっと、跳びすぎたな)
そう、ソルは少年たち二人の攻撃が当たる瞬間、特殊なジャンプをして躱したのだ。それも、強化魔法なしで。しかし、ソルは久しぶりにこの跳び方をしたので、力加減を誤ってコロシアム上空まで跳んでしまった。
「まあ、いい」
ソルはそう結論づけると土系統の上級魔法に位置する重力操作魔法を唱えた。ただし、範囲は二人の少年の周りに位置付けて。上級魔法の中でも特に扱いが難しいといわれる、重力操作魔法をソルはいとも簡単にやってのけた。しかも、範囲を限定して。
「「ぐっ!」」
突然、自身にかかる重力が何十倍にもなったことで、リーダーを抜いた二人の少年はその場から動けなくなった。かろうじて立っているのは魔法騎士学校で鍛えられたからだ。普通は地面に倒れこみ、意識を失うだろう。
「何やってる。お前ら!」
ただ一人魔法をかけられなかったリーダーは二人が急に動かなくなったことにい苛立ち感じて怒鳴った。
ソルはそれを見届けがら重力操作魔法使って、ゆっくりと下りてくる。
「あっ」
やがて少女が先にソルが上空にいることを見つけた。それにつられてリーダーの少年もソルを見つける。
「なっ! テメーそんなところにいたのか! ささっと下りてきやがれ!」
ソルは言われた通り下りるスピードを少し上げた。地面にゆるりと着地した途端リーダーの少年は動けないにも関わらず二人の少年へ命じた。
「今だ! お前らやっちまえ!」
しかし、二人はソルの魔法で動くことができない。
「何をやっている! 早くやっちまえよ!」
「無駄だ」
ソルが言うと、リーダーの少年はソルへとキッと睨んできた。
「テメー、それはどういうことだ!?」
「その二人は今、俺の魔法にかかっている。俺が魔法を解かない限り動けない」
「くっ! なら、テメーなんて俺一人でもやれる」
リーダーの少年は火系統の初級魔法の身体能力強化魔法を唱えてから、ソルへと走り出した。身体能力強化魔法は火、水、風、土、無の五系統にしかない。それぞれ、強化特徴を持っている。火は爆発的な力を、水は驚異的な回復力を、風は疾風を思わせる素早さを、土は大地を思わせる頑丈さを。そして、無は他の四つの系統の全ての特徴を併せ持っている。どの系統も初級魔法に分類される身体能力強化魔法だが無系統だけは使い手が少ない。もともと無系統を使える人が少ないのだ。
魔法の力を得た少年は風系統の身体能力強化魔法に及びはしないが、かなりの速さでソルへと向かっていく。その速度は常人ではとても反応できないほどの速さだった。
(遅いな)
しかし、ソルにその光景がはっきり見えている。元々、化け物じみた能力を持つソルにとってこの程度の強化はないも同然なのだ。ソルに対抗するにはもっと魔法に込める魔力量を増やさなければならない。
少年が振り下ろしてきた剣を最低限の動きで躱す。最低限だが、髪の毛一本も剣には触っていない。
連続して少年は剣を振るが、どれもこれも、ソルには掠りもしない。
「くそっ! 避けてばっかいねーで、いい加減、当たりやがれ!」
少年には答えず、ソルは躱し続ける。少年がイラつき剣を大きく振り上げた瞬間ソルは動き出した。まず少年が振り下ろしてきた剣の横っ腹を自らの剣でたたきながら、少年の横を身体を回転させながらすり抜ける。それは、あまりにも早すぎて少年の目では追い切れなかった。
少年の背後に立ったソルは、そのまま少年の首筋に剣を添えた。なお、鞘はつけたままだ。
「お前の実力じゃ、いくらたっても俺には敵わない。見逃してやるから、このまま去れ」
「くっ! まだだ!」
少年は剣を横なぎに振る。ソルは大きく、バックステップをしていったん距離を取る。少年の顔は憎しみで満ちていた。ソルに手も足も出ないことがプライドを大いに傷つけたようだ。
そして、少年は禁じられたものに手を出した。
なんか、戦闘がしょぼいですね。次回はもっと頑張りたいです。