挑発
ソルが怒っています。
ソルが剣を振ったとたん、迫って来ていた火系統の魔法が剣とぶつかり爆発した。そう、少年たちはソルが少女と話している間に魔法の準備をして背中を向けているソルへと放ったのだ。
もちろん、ソルがそのことには気づいていたがあえてけん制せず、魔法を打たせて、それを見事に剣で防いだのだ。その方が少年たちが恐怖するから。ソルは完全に少年たちに対して敵意を抱いている。
爆発で起こった火の粉が少女にかからないようにちゃんと光系統の初級防御魔法を張っておくのも忘れない。ついでに、自分にもかからないようにしているのはちゃっかりしているソルだ。
「あ、あいつ、魔法を剣で防いだぜ」
「ぐ、偶然だ!」
「でも、あいつ振り向きざまに振っていたぞ!」
少年たちはソルの不意をついて攻撃したと思った攻撃を防がれて完全に同様していた。
「そ、そうだ! あいつの持っている剣に秘密があるに違いない!」
どうやら、少年たちはさっきの魔法攻撃を防いだのがソルの実力ではなく、剣の特殊な能力で防いだと思って自分たちを落ち着けたようだ。
「で、話終わったか?」
ソルは普段の明るい表情から一変して、全くの無表情。しかも、感情が本当にあるか疑いたくなるほどの無表情で少年たちに話しかけた。それを見た少年たちはソルの無表情に恐怖して一瞬びくついたが、無鉄砲なのかただの強がりなのか、ソルに対して敵意むき出しで見返してきた。ただ、ソルは何の恐怖も感じてはいない。
(こんな敵意じゃ誰も、恐怖しないし、引かせることもできない。これなら、かつて戦った戦士たちのほうが数段上だ)
そう、ソルがかつての大戦で戦った戦士たちのほうが少年たちより数段高い敵意や殺気を放っていた。最近は大きな戦や戦いはほとんどない。だからか、こんなにも堕ちてしまったのかとソルは少し嘆いていた。
「て、テメーは何もんだ!」
少年たちの中で一番大柄な少年――この中でのリーダー格の少年――が張りきったようにソルに向かって怒鳴ってきた。もちろん、ソルはただ怒鳴るだけでもびくともしない。
「ここの生徒だよ」
「は? はんっ! 嘘をつくな。お前みたいなやつ見たことがない!」
「と言っても、今日からここの生徒になったからな」
「だから、嘘をつくな! お前みたいな雑魚がここの生徒になれるわけないだろ。第一そんな話は俺は聞いてない!」
「さっき決まったことだしな」
ソルが喋る言葉はほとんど感情の上下がない。それだけ、怖さが上がることもソルは知っている。だから、感情を制御して抑揚を消しているのだ。かつての大戦のときもそうだった。しかし、かつてのソルは本当に感情がほとんど存在していなかったのだが。
「はんっ! 本当に嘘吐きの様だな。そんなに簡単にこの学校に入れるわけがない!」
「そんなことはどうでもいい。それでお前らは今まで何をやっていた?」
「は? テメーには関係ないことだ」
人間には慣れというものが存在する。だんだんとソルの感情のない声と表情に慣れてきたのか声が張ってきた。だが、それが間違いだとも知らずに。
「なんだ、言えないことか?」
「だから、テメーには――」
「まあ、いい。さっきのことはずっと見ていたからな。たく、こんな屑がこの学校にいると思うと虫唾が走る」
「「「なっ!」」」
ソルの簡単な挑発に少年たちのプライドは大いに傷つけられてたようだ。
(こんな挑発に乗るなんて、ほんとにだめだな)
確かにソルの思う通りだ。戦場では挑発に乗ってはいけない時がある。相手のどんな挑発にも乗らない強い精神力が必要な時があるが少年たちは簡単に乗ってしまった。
「テメー、死にてーのか?」
リーダー格の少年が殺気を放ちながら腰に帯剣してある剣を抜き去った。横にいる二人の少年も同時に己の剣を鞘から抜き出す。
「今、謝ったら半殺し程度で済ましてやるが? ああん?」
少年たちは自分たちの実力を信じているのか、中々ソルに向かってこない。それがほんの僅かな勝機を逃すこととも知らずに。
「御託はいい。さっさとかかってこい」
「なっ! ちっ、お前らやっちまえ!」
リーダー格の少年は横にいる二人の少年に向かって命令した。二人の少年は同時にソルへと剣を振りかぶって向かっていく。
二人とも強化魔法は使っていないが中々の速さでソルへと肉薄した。
「危ない!」
後ろでまだ座っている少女が自分を助けようとしてくれたソルの心配をして声を上げる。しかし、徒労に終わった。
ソルに剣が当たる瞬間、ソルが掻き消えたのだ。
「「「なっ!」」」
少年及び少女は完全にソルのことを見失っていた。
さて、ソルはどこに行ったのでしょう?