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白銀の覇王 ~サンクチュアリ・サクセサー~  作者: ソルラ
第一章 ~新たな始まり~
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鍛錬and連絡

 ソルの朝は早い。まだ、日が昇る前に目を覚ます。朝起きるのは早いが寝起きは悪いソルだ。日が昇る前に目を覚ますのに日が出るまでベッドの上でぼうっとしている。

「う、う~ん。良く寝た」

 ベッドの上で大きく伸びをすると、もう一度転がり、次いで腹筋を使って飛び起きる。飛び起きたソルはそのまま、顔を洗いに行く。

 水を汲もうと水道のレバーを引いた。ここにも魔法が使われており、レバーを引くと魔法が発動して水をくみ上げる仕掛けになっている。桶に貯めた水で顔を洗うために、桶を覗き込むとそこにはソルの顔が薄く映り込んでいた。

 金髪に青色の瞳。顔のパーツも整っており、かなりいい部類に入るだろう。ただし、多少、いや、かなり女の子に似た顔だちをしている。背も男にしては高くなく、低い部類に入ってくる。まだ、十五歳という年齢を加えても、昨日の少女と同じぐらいだろう。ただし、ソルは髪と瞳の色を魔法によって変えている。変えなければいけない理由もある。

 バシャ、バシャと水を顔に当てて、ソルは少し残っていた眠気を飛ばす。

 顔をタオルで拭き、部屋に戻ると、ソルはベッドの横に置いてある剣を持った。剣を持っまま、ソルは昨日店主に聞いておいた裏庭と呼ばれるところに行く。これから、鍛錬に入るようだ。

 裏庭に着くと剣を鞘から出す。それは、黒かった。そう、黒いのだ。やや薄い黒い刃に同系色の柄。まるで闇から生まれたような黒い剣だった。

 剣の名は【イクスベリオン】。この世界の太古の神の名を冠する剣だ。

 その剣を正中線に構えると、まずは無系統、初級魔法に位置する認識阻害魔法を周囲にかける。この魔法はソルを見ようとしても霞んであまり見えないようにする魔法だ。この時間にこのあたりにいる人はあまりいないが、ソルはこれからする鍛錬をあまり他人には見られたくないと思っているのでこの魔法をかけたのだ。

 続いて、様々な色をした魔力球を周囲に展開する。魔力球とは魔力を各系統に変換しているだけの、魔力の塊だ。

 赤い魔力球は火系統、青い魔力球は水系統、というふうに緑は風、茶色は土、水色は氷、黄色は雷、ピンクががかったのが光、黒いのが闇、最後に白く光っているのが無系統という感じにそれぞれの色がそれぞれの系統を表している。

 驚きなのがソルが九系統すべての魔力球を出していることだ。通常、一から二系統、多くて三から四系統までしか持つことができない。つまりは、魔力球も自分に適正がある系統しか、出すことができない。この法則に当てはめるとソルは九系統すべてを使えることになる。しかも、一つ一つの魔力球に込められた魔力は膨大な量に達している。一つの魔力球の魔力量は一流の魔法士の十人分に達する。つまり、ソルは少なくとも一流の魔法士の九十人分の魔力を持っていることになる。

 魔力球を出した状態から、魔力球を少しずつ動かし、ゆっくりと剣を振っていく。

 これまた、戦いを生業にしていて、さらには一流のものにしかわからないが、そのものがこの鍛錬を見たら卒倒してしまうだろう。なんせ、魔力球をほんの少しずつ動かすことは、かなり高い魔力コントロールを要する。さらには剣を素早く振るのではなく、ゆっくりとこともかなりの筋力がいる。

 魔力球を自分の周囲を回らせながら、剣の型をやること、数十分。ソルは汗一つかかず鍛錬を終えた。もっとも、鍛錬と言っても腕が鈍らないようにするためと、ただの日課だが。

 部屋に戻ったソルは鍛錬用の服からいつもの黒を基調とし、赤いラインが入った服に着替えた。もちろんロングコートも着る。ただ、この服とロングコートは特殊な魔法が付与されていて、並みの装備じゃ太刀打ちできない程の強度を持つ。

 剣を腰の後ろ側に鞘と一緒に装備し、これまた、特殊な魔法のかかった軽くて小さいバックを持って食堂に向かう。一見旅慣れているようには見えないが、ソルが持つバックは特殊な魔法のおかげでかなりの容量を持つ。このバックに旅用品は全部入っているのだ。

 食堂はまだ時間が早いにも関わらず、人で賑わっていた。その中で空いている席を見つけ、一目散にソルは席に座る。

 そこにウェイトレスがやってきて、注文を受け付けた。

 ソルはお勧めメニューを頼み、待つこと数分。持ってこられたのはパンとコーンスープ、それにレッドバードの卵の目玉焼きだった。

「うん。旨い」

 ソルはこの宿を頼んで正解だったと確信した。清潔に保たれた部屋に旨い飯が何よりの証拠だ。

 ささっと朝食を食べ終えたソルは席を立ち宿のカウンターへと向かう。どうやら、チェックアウトをするようだ。

 カウンターで呼び鈴を鳴らすとすぐさま店主が出てきて、そこで、チェックアウトのむねを伝えるとすぐにやってくれた。

 宿を出ようと振り向くと魔法通信機が目に入る。これは、魔法の力で遠くの人と顔を見ながら話すことができるというものだ。ただし、持ち歩くには不便なので固定式のしかないのが厄介だが。

(そういえば、昨日の子どうしたかな?)

 不意に昨晩会った綺麗な少女のことを思い出した。外出禁止なのに外に出てた子。

 気になったら即行動に移すのがソルだ。魔法通信機の前に立つと決められた番号を押すと、すぐさま、周りに認識阻害魔法がかけられた。この魔法は通信機に仕込まれていて、話している内容を周りに聞かれないための配慮だ。

 コールが何回かして目的の人物の声と共に、通信機の上に画像が写し出された。

「おう、どちら?」

「ああ、出た出た。俺だよ、俺」

「だから、どちら?」

「俺だよ。ソルだよ! 第一この番号俺しか知らないだろ!」

「冗談だ。そう怒るな」

 目的の人物はその美しい容姿で笑いながら、返してきた。

「たく、変な取り方するなよ。ハント」

 目的の人物はハント・マーキュリー。ソルの親友にしてこの国に隣接する国、それも世界一の大きさを誇るマティアト王国の現国王だ。その美しい金髪を背中に流しながら、整った鹿野の中でもなおも存在感がある真紅の瞳が印象的だ。その風貌にはカリスマ性を感じ負えない。男性の中でもかなりというか超イケメンに入るだろう。

「いいだろ。相手がお前だとわかっていたんだから

「だからって、ハントは国王なんだからちゃんとしなよ」

 ハントは国王としてのカリスマ性を発揮しながら、それでいて無邪気な子供を思わせる性格をしている

「何言ってんの? 俺は国王代理だ」

 そう、ハントはそのカリスマ性を持ちながら国王代理として活動している。それでも、政治関係や軍事関係は現国王をも上回り天才的とも言われている。

「だけどね~」

ソルがなおも言おうとしたところでハントが先手を打った。

「で、本当の国王様が何の用?」

「だから、俺は今、国王じゃないって」

「だから、何言ってんの? お前はティアマトができてからずっと国王だ」

 ハントのいう通りだ。ティアマト王国はソルがたった一人で興した国だ。国を興したときソルは若干十歳だった。その途中でハントと出会ったわけだ。

「はぁ~。わかったよ。まったく強情だね」

「それあこっちのセリフだ」

 ソルとハントはどちらともなく笑った。

「それで、今回は何のようだ?」

 ハントは笑った後に用件をソルに聞いた。

「うん。えっとさ、今ニエベにいるんだけどさ」

「ああ、それはこっちでもわかっている」

「相変わらずだね。それで、ニエベの魔法騎士学校に入れるようにしてほしいんだ」

「魔法騎士学校に? なんでだ?」

「ちょっと気になる子がいてね」

 ソルは少し誤魔化し気味に言った。昨日のことを言うのはちょっと面倒だったのだ。

「ほほう」

 ハントはそこで気味の悪い笑みを浮かべた。いや、子供が新しいおもちゃをもらった時の笑みのような気もする。

「な、なに?」

「いや、なんでも」

「そ、そう」

 ソルはハントの笑みを見てから嫌な予感がビンビンしていた。

「わかったぞ。すぐに連絡してやるから、校門で警備の奴に名前をいうだけで良いようにしてやる」

「助かるよ」

「がんばるんだぞ~」

 意味のわからない応援をしてきたので、ソルはすぐさま通信を切る。通信を切ると同時に認識阻害魔法も切れた。

「たく、変な勘違いをしているんだよね」

 ため息をつきながらソルは宿を出て、魔法騎士学校へと向かった。

新しい人物が出てきました。しかし、電話だけだったです。本当に出るのはまだまだ先だと思います。

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