9話
コツ、コツ、コツ、コツ‐‐
心地よく揺れながら耳に入る足音。布がこすれる音。
・・・・。おそるおそる目をひらくと
「おや、起きてしまいましたか」
あたしの上から残念そうな声が降ってきた。・・・降って、きた?
そして自分の体勢に気づく。ディールの執務室で銀に抱きつき寝ていたはずが
いつの間にかあたしはシーザントに抱えられ運ばれていた。
「・・・オハヨウゴザイマス」
「おはようございます」
窓から月明かりが入ってきているのに動揺で出てきた目覚めの挨拶にも丁寧に返してくれるシーザント。でもおろされる気配がない。
「遅くなってすみません。今から部屋へ案内しますよ」
シーザントはあたしを抱えたまま進んでいく。誰にもすれ違わないが恥ずかしいことこの上ない。
銀はシーザントの後ろから大人しく着いて来ていた。
「シーザント、さん、ありがとう・・・あたし自分で歩けます」
「シーザントでいいですよアオ」
「・・・はい」
シーザントは立ち止まりそっとあたしを下ろしてくれた。その時のしぐさが窓からの月明かりに照らされてとても綺麗だった。
月に照らされる青って綺麗・・・ 歩く後姿は絵になると思う。
彼の後姿をじっと見つめていると
「アオ?起きてますか?行きますよ」
ふっと振り返って微笑むシーザント。浮世離れしてるよシーザント。綺麗すぎる。
でも言うのは少し気が引けたので、はいと答えて先を歩くシーザントの後を追った。
「ここです」
「おー・・」
そう言って連れてこられたのは、天井が高めの部屋。ちょっとショールームに来たような気分だ。
ベットにソファや洗面台と、一通りの生活様式が整っている。
「こちらから用があれば私が呼びに来ます。それまでこの部屋で過ごしてください。
食事は部屋に転送します。それを食べてください。アオから用があれば中の鏡で私に連絡を。
鏡に立って名前を呼んでください。あと、部屋からの外出は禁止します。
さて、質問はありますか?」
・・・いやいやいや。ちょっと待て。つまりそれって軽く
「監禁・・・」
「そうともいえますが部屋がいいでしょう?実際の監禁部屋はもっと色々とすごいですよ。
何なら見に行きますか?今から」
「・・・っ」
さらりと笑顔で言い切った宰相。黒い。黒いよシーザント。
あたしの背筋はびしっと伸びた。
「ありませんね?では今日はこの辺りで失礼します。疲れてらっしゃるでしょう。
ゆっくり休んでくださいね」
やわらかく、けどどこか黒く微笑んで宰相は部屋を出て行った。
銀は視線だけでシーザントを見送っていた。彼はすでに部屋のソファの傍に伏せ、しっぽをぱた、ぱた、と揺らしている。そのまま目を瞑り、寝る体勢に入っていた。
銀を見ているとなんだか考えるのも面倒くさい気がしてきた。
「・・・あたしも寝よ」
あたしはベットに行かず、銀の首元に抱きつく。
伝わるぬくもりを感じていると、だんだん意識も薄れていった。
すみません。話が進まないのでサブタイトルがつきません(涙)