話が進まない
ディールの笑顔は上に立つもの特有の迫力、
そして美形というオプションがついているためとにかくいろんな意味での迫力がすごい。
今思い知らされている。あたしはとにかく、
本当にごめんなさい、何も知らないんですと懸命に弁解していた。
「そのくらいにしなさい、ディール」
ふいに知らない声が降ってきたので驚いて振り向くと人が立っていた。
第一印象、青。肩まである髪も優しげな眼差しも透き通るような青い色をしている。そしてその人と目が合った瞬間、あたしは水の中に居るような錯覚に襲われた。
呼吸を忘れ、しばらく動けないでいると
「そのくらいにしてやれ、シー」
今度はディールが青い人に言った。
青い人はあたしに微笑んで、あたしからディールに視線を移した。あたしはあの錯覚から開放されたので、深呼吸をして、落ち着くために傍に伏せている銀に手を伸ばした。銀は目を瞑っていたけどあたしが触れると気遣うような視線を送ってきた。だからちょっと驚いたよ、と微笑んで銀の頭を撫でてやった。銀はそうかと返事をするようにゆっくり瞬いてからまた目を瞑った。
ディールのほうに姿勢を戻せば、隣に青い人が座ってこちらを見つめていたので、反射神経で目をそらす。青い人はふっとやわらかく微笑んで口を開いた。
「あぁ、嫌われてしまいましたね。お嬢さん、先ほどはいきなり視てしまってすみません」
「・・・視た?」
さっきの錯覚のことだろうか。何を視たんだろう。
「貴方が嘘をついているかいないかです」
あたしがまた聞き返そうとする前にディールが口を挟んだ。
「シー、待て。先に紹介をしよう。
アオ、こいつは俺の幼馴染のシー。本名はシーザントだ。今は俺の助手だ「私は宰相です」
・・・で、シー、こっちがアオ。
さっき俺の結界を破って進入した敵だ「私敵じゃないです」冗談だ」
「「・・・」」
あたしとシーザントはしばらく無言だった。
ディールは何が面白いのか、にこにこしている。あたしは無言でディールを睨んだが効果は無かった。
その後シーザントは水の都出身で、占いなどの術を使うのに長けており、そのため道具を使わずとも相手を占ったり見極めることができるということを本人の口から聞いた。
あたしとシーザントはお互い軽く会釈して、話に戻った。
「・・・よしアオ。お前しばらくここに居ろ」
「・・・え?ここに?」
ディールのいきなりの提案に聞き返す。
「あぁ。お前の気はとても珍しいだろう。他に存在するものがあるかないか。
だから俺はしばらくここで様子を見たい。いいな」
「「・・・わかりました」」
この声には何故か逆らえなかった。
あたしとシーザントの声がはもった。ディールは満足そうに口角を上げる。
「シー、彼女に部屋を。あと神殿のほう、それにこれと同じ気があるか調査ね」
ディールが言うと隣に座っていたシーザントの微笑がふっと黒くなったように見えた。
「・・・わかりました。部屋はすぐ用意します。ディール、この仕事頼みますね?
今日中に終わらせてください」
彼は執務机の仕事に目配せし、次いであたしに微笑んだ後、仕事の山を振り返って固まっているディールの隙をついて消えた。転移魔法っぽい。
「・・・あれを今日中?シーの奴、狙ってやがったな・・・」
ディールはしてやられた、という顔で溜め息を吐くと、ソファから立って執務机に向かい、あたしに「そこで待っていろ」と言うと黙って仕事に取り掛かり始めた。
あたしはディールの邪魔をしないようにそっと立ち上がって銀の傍に行き彼の首元に顔を埋めた。
そのまま首に抱きついてもたれかかる。銀は嫌がらず、ゆっくり瞬いてアイコンタクトをしてきたのであたしも合わせてアイコンタクトした。何度もしているうちに心が安らいで、眠気が襲ってくる。
「・・・”銀・・・空、あたしどうなっちゃうの?”」
うつらうつらしながら、あたしの意識は沈んでいった。
タイトルどおり・・・話が進まないー;((