出会い
銀が駆け出した瞬間、あたしたち目掛けて黄色く光る鎖が伸びてきて、巻きつこうとする。あたしはぎゅっと目を瞑り、銀は鎖を避けようと地を蹴った。しかし次の瞬間。
「逃がさん!!」
声がしたと思った瞬間、あたしと銀は別々に鎖に巻きつかれ、引き剥がされ、硬い床に叩きつけられた。あたしは呻きながら銀の様子を見ようと上半身を起こそうとすると、鎖からビリビリッと電気のようなものが体を流れた。
「ったあ!何これ・・・」
痛みに耐えながら銀を探すと、少しはなれたところに銀も同じように捕まって・・・いなかった。
彼は数人の魔術師っぽい方々相手に、唸って威嚇している。銀、強ーい!と感心していると、いきなり後ろから抱え上げられ、立たされ、背中から引き寄せられ。後ろから抱きつかれる状態になっている。
「動けば命はない」
耳の傍で囁かれた。声の低さ、背中に感じる硬い胸板から男だとわかる。動かないでいると、男が再び口を開いた。
「鎮まれ!!この女がどうなってもいいのか!!」
「! グルゥゥゥゥ・・・・ガッ!!」
銀はあたしが捕まっていると解った途端、なんと魔術師っぽい人たちをあっという間に飛び越え、こちらに突進してきた。目がマジで怒っている。男は止まらない銀に舌打ちして、片方の手を前に出し、呟いた。
「天の盾よ」
すると手のひらから水の波紋のように淡い波のようなものが、ドーム状に男とあたしの周りになされた。銀はそれにぶつかる手前でなんとか立ち止まるが、男に対しての威嚇は止まらない。
「ふむ。魔術師共、手を出すな。そのままでいてくれよ・・・さて女、嘘はつくな。
何故ここに、何の目的で、どうやって入った」
男とあたしの姿勢は抱えあげられた時から変わっていない。つまり、あたしと男は威嚇している銀のほうを見ながら、あたしは後ろから男に抱かれているままである。2人とも銀のほうに向いた奇妙な体制のまま会話は続けられた。
「・・・知らないです。意味も、目的も、方法も」
だっていきなり送られたからね?拒否権ナシで。まさか初っ端から捕まって悪者扱いされるなんて思わなかったよ。空のやつ、覚えてろよ。
「・・・」
男は無言であたしの肩をつかみ振り向かせた。あたしと男は向かい合わせだ。
「・・・」
「・・・」
男の目は、あたしの目捉えた瞬間、見開かれて動かなくなったので、危害はないことを伝えようと思う。先手必勝。
「あたしたちは敵じゃないです」
男の目をまっすぐ見て言う。嘘じゃないんです、解ってくださいと目力を込めて。
目の前の男はあたしの声に我に返り、驚いたように何度か瞬きをして
「信じよう」
と言ってくれた。よかった。これで牢屋行きはないだろう。変な拷問なんかもなさそうだ。あたしはほっと溜め息をついて、銀を振り返って微笑んだ。
「銀、だいじょうぶだよ」
銀はそれまで男を睨んでいたが、あたしがだいじょうぶと言うとその警戒を少し解いた。
それを確認して、あたしは再び男に向き直った。
「信じてくださってありがとう。あたし蒼っていいます」
「・・・ディールだ。天座の長をしている」
ええ、知ってますよ。空から情報は貰ってますから。
「・・・ディールさま」
周りの魔術師達がおずおず申し出た。
「わかっている。アオ、敵ではないと信じるが、
お前は私の張った結界にやすやすと入り込んだ。どういうことか解るな?」
「・・・はい」
いや、わかりたくありませんけどね。