あたしの560円
この小説に興味を持っていただけてありがとう。
嬉しいです。異世界トリップって魅力的ですよね!
よろしくお願いします
「蒼っ!!起きなさい!!遅刻するわよ!!」
―ある秋晴れの朝。
あたしはいつもどおり母に布団をはぐられ、自分の温もりから引き離された。
「いつまで寝てるの!!早く立つ!!起きるっ!顔洗う!!」
あぁ・・・うるさい。低血圧のあたしの頭には母さんの甲高い声に顔を思いっきりしかめた。
言い返そうとしてふとデジタル時計を見、次の瞬間母さんが顔をしかめた。
「は、8時?!」
「だからさっきから言ってるじゃない!遅刻するのよ貴方!急ぎなさいね」
と言って、ぱたぱたと部屋を出て行った。
・・・やばい。今日は朝から模試なのに。あたしは頭をフル回転させた。
テストは9時から。学校まで30分。テスト15分前に着席完了。だから準備時間、10分以内。
考えながら制服に腕を通しスカートのホックを留めてかばんを抱えて家を飛び出した。
駅のホームまで猛ダッシュしたが、行ってしまったばかりなのか。エントランスの最前列に並べた。ケータイで時間を確認すると、予想より一本早い電車に乗ることができるようだ。
よかった、遅刻はなんとか免れそう。まだ寝癖が収まりきっていない髪の毛をしばらく撫で付けながら思っていると、電車の到着するときのメロディーが流れた。
扉が開いて、乗客が雪崩のように降車する。あたしが乗車する頃には、珍しく乗車シートに座れた。
あぁ、間に合ってよかった。今日は(寝坊して)ついてないけど、(遅刻免れるから)ついてる。
何気なくケータイを開くと新着メールがあった。弟から。
『寝坊 乙b
あと俺、購買のパンセット(560円)ね?』
「・・・」
そう言えば昨日、というか今日の夜中にに「蒼いつまで起きてんの?また明日たたき起こされんぞ」と寝坊ゼロの弟にニヤ顔で言われたので「そんなことする訳ないじゃん」と反論して、「じゃあ賭けようか。蒼、寝坊したら奢れよ」と言われ「じゃぁあたしパンセット(560円)ね」と乗ってしまったんだった。・・・なんてこった。あたしの買い食い費が弟に・・・
とりあえず電車独特の走行音を聞きながら学校最寄駅に着くまでの間、かばんから英単語帳を出して、テスト対策に集中することにした。だがしかし。数十分前まで寝ていたにも関わらず眠い。何故かとにかく眠い。頭を軽く振りなんとか紛らわそうと瞬きもする。でも眠い。
馴れないことするもんじゃないなあ~どうせ終点だし、寝てしまおう。
潔く折れたあたしは、単語帳を閉まってかばんに顔を埋めた。