数日後
脱走劇から数日たった日の午後。
沢山ある客室の一室のなか、1人と一匹は日向ぼっこをしていた。
ぽかぽかと差し込む日差しは服から肌に伝わり、いい眠気を誘う。
先日あった逃亡劇は無かったことにされた。が、神殿からは出してもらえずの日々が続いている。
2人はあたしに流れる命の気が回りに知れるのをかなり警戒している様子なのだが、理由は聞いてもどうしても教えてもらえないのでとりあえず保留だ。
とりあえずあたしと銀の監禁生活はなしになったがディールによる監視のブレスレットがつけられた。何かあれば彼が現地に飛んでくる仕組みだそうで。ぶっちゃけ少し迷惑である。理由はこの数日の間に考えたあたしの都合のせいだ。
顔をしかめて寝返りを打つと、扉からノック音がした。
「アオ、入っていいですか?」
「はーい!今開けますね」
最近午後になるとシーザントが様子を見に来るようになった。
彼は東の水の都出身で、占術に長けている。太陽に照らされると綺麗な空色の髪と目になる。
そんな彼と、今では今日のあたしの運勢は?と聞けるくらいの仲になった。今日は思い切って、シーザントに自分の今後についての考えをぶつけるつもりでいる。
「シーザント、話があるんです」
彼と向かい合い、単刀直入に話を切り出した。彼は黙ってあたしの言葉を促す。あたしは一呼吸置いて、この数日出した結論、これからの提案を彼に話した。シーザントは始終、黙って聞いてくれた。
話し終るころにはもう日が落ちかけていて。
では、と部屋を後にする彼の青い目は、ただ驚きに揺れていた。
「あー・・・シーザントがびっくりしてた。銀、あれはレアだと思わない?」
銀はぱたり、と尻尾を一振り。銀の肯定にあたしは苦笑した。一言で言えばポーカーフェイスなシーザント。こちらに伝わるほどの動揺は今日初めて見た。ような気がする。この後ディールに話しに行くんだろうなと考えながら、あたしは夕食を食べて早めに休んだ。
その翌日、アオはディールに呼ばれ、彼の執務室に来ていた。ソファに座って彼と向かい合う。数日振りに見る彼は前と変わりない。お互い無言だったが、しばらくしてディールが話を切り出した。
「アオ、昨日シーに旅がしたいと言ったそうだな」
「はい」
「・・・ここでの生活は不満なのか?」
「そんなことありません。むしろ贅沢です。食べるものには困らないし・・でも」
ここで一旦話が途切れた。あたしは意を決してディールの目を見た。
彼に語ろう、あたしがこの世界に来た理由を。
「・・・でも、あたしはちゃんとこの世界を見たい。
この世界であたしはまだ貴方達2人しか知らないから」
「・・・それは」
「あたしは、一度死んで、この世界の神様にここに飛ばされました」
「・・・」
「飛ばされるときに、この世界の大体の知識を貰ったんです。
生きるために。・・・今から言うこと、信じてもらえますか?」
ディールはずっとあたしから目をそらさなかった。その状態でしばらく沈黙が続いた後。
「・・・聞こう」
と言ってくれたので、あたしは彼にこれまでの全てを話した。
・・・難しい話が苦手です。とことん回避しまくる自分・・・←