あたしの力
銀は蒼を乗せて深夜の月の下を失踪していた。
蒼心地よい風を感じながらさっきまで居た神殿を振り返った。月光に照らされた神殿は白色に淡くぼやけ、とても神秘的に見えた。
遠ざかる神殿に感動し、呆けて見つめていると自分達が翔けて来た方角から黄色に光る何かが近づいてきていた。ものすっごい速さで。逃げ切れるだろうか。
その内あたしの目がディールと見分けがつくかつかないかの距離になり、神殿のときに使われた電気が流れているであろう黄色い鎖がこちらに向かって何本も伸びてきた。
その瞬間、あたしは突風で銀から無理やり振り落とされた。
無抵抗なあたしは、成す術もなく空中に飛ばされる。
やばい。地面に叩きつけられる・・・!!
体に起こる衝撃を予想してぎゅっと目を瞑った瞬間。ゴウッと風が竜巻いて、気がつけば地面に座り込んでいる形になっていた。意志を拾ってくれた風が助けてくれたっぽい。ありがとうと風に思えば、心地いい夜風が頬を撫でた。どういたしましてと言われている気がした。
「ガヴヴヴヴヴ・・・」
はっとして銀の声に空を仰ぐと、空中であの鎖に絡まった銀が苦しんでいた。
もがけばもがくほど大きな電流が流れるのだろう。自分のときの倍以上放電しているその鎖に目を疑った。
「銀っ!!」
「・・・アオ。私は言った筈ですよ。部屋を出るなと」
いつの間にか背後に居るシーザントが静かに言った。
「・・・銀を開放して」
そんなシーザントに引けをとらない声で言い返した。
「あなたが大人しく戻ってくるのなら」
「・・・」
聞いてもらえそうにない。ここは強行突破しよう。あたしは鎖に視線と意識を向けて意志をぶつけた。
”銀を放せ・・・!!”
刹那、銀に巻きついていた鎖はぱっと消えてなくなった。
あたしと銀は体勢を立て直し、目の前に居るディールとシーザントを睨んだ。二人から敵意は感じないが見逃してくれそうもない様子なので、単刀直入に気持ちを言った。
「あたしはあそこに戻りません」
「ずっと、とは言っていない。調べがつくまでだ。直ぐ終わる」
だからそれまでは監禁生活送れと・・・
「・・・いつまでですか?明確に教えてください」