10話
深夜。目も頭もすっかり覚めているあたしはのっそりと起きた。
明かりは点いていないが眠っていたので辺りはよく見渡せた。
監禁?ふざけんな腹黒宰相&天座長。束縛とか嬉しくないよマジで。
先ほどの(押し付け)会話を振り返り、あたしは脱走を決断した。
物音を立てないようにいくつかの部屋を何度も行き来してしばらく。
窓から差し込む月明かりの先に、部屋から拝借した荷物が集められた。
あたしはそのうちの一つを手に取り、もぞもぞと作業をはじめた。
「・・・よし」
あれから小一時間。
大きなフードで顔を隠し、部屋から拝借した荷物をまとめ、脱走準備完了。
大きな窓に手をかざし、その手のひらに意識を集中させた。
すぐにぼんやりと手から緑の気が流れ、窓も同じ色に光り始めた。
「・・・開け」
あたしが小さく唱えると、窓は音もたてずに開いた。
近づいて下を見ると、怖い高さではない。
「銀、この高さ、いける?」
銀は返事をするかわりに伏せ、あたしに上に乗るよう促してくれた。
上に乗り、軽く助走をつけ、あたしたちは部屋から脱走した。
一方、アオがコソコソと、しかし着々と逃走準備を進めている頃。
「・・・ディール」
「ん、シーか。早かったな」
シーザントはディールに調査報告に来ていた。
「彼女の・・・アオの気は命の気である可能性が高い。
私が部屋まで運ぶときに流れてきたあの力、間違いありません」
「シーも感じたか。俺も神殿でやり合った時少し感じたから、何となく予想はしていた。
まさかこんな形で見られるなんて、予想外だな」
「そうですね」
希少価値が最も高い幻の気。
「・・・全ての気に通じ、命を吹き込む息吹、か」
全ての気の力である命の源をその身に宿した気の持ち主、アオ。
「シー、お前はどう考える」
「神の遣い、でしょうか?」
「確信じゃないのか」
「うまく視えないんです。おぼろげで。彼女の全ては俺でも視られなかった。
正しいか否か、それぐらいしか解らない」
「シーよりも力が強いんだな」
「・・・誰かさんの結界が破られた時点で解りきったことでしょう」
「ははっ言ってくれ、る・・・っおい宰相、アイツ結界に穴あけて脱走したぞ!」
「!!」
2人は顔を見合わせ、急いでアオの部屋に転移魔法を発動した。