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目の前にある広大な野原。
「うぅ・・・」
そう言って、僕は一人、目を覚ます。
事故の時に、腕の骨が折れたらしい。
“ズキズキ”して痛い。
けれど、彼女に逢えたから、満足である。
人生には少しの犠牲が付き物だ。
そういうわけで、仕方がないということにしておこう。
僕は、それからしばらくして退院した。
それから、幾度となく君を思い出した。
『逢えないかな? 会いたいなぁ』
そんなことを、いつも思っていた。
そんなある日だった。
僕は大学に行く用意をして、洗面所の鏡を見ながら、髪をセットする。
これは、自分としては面倒くさいし、趣味でもないけれど、《大学生であるから》という理由で、一応やっていた。
そんな時だった。
ワックスを手に付け、洗面台に置こうとした時、僕は間違えて落としてしまう。
その時に、僕を光が包み込んだ。
「うわぁ!」
僕は、咄嗟に声を上げる。
「何なんだ?」
そうとも言った。
だが、それに答える人は誰もいない。
ただ、僕が気付いた時点で、目の前に広がるのは洗面所などではなく、広大な野原だった。