君は渡し守、僕は見つめて。
僕「あれ?」
「どうなったんだっけ?」
「全然覚えないや・・・」
そんなことを考えながら、やけに重たい体に鞭打って、僕は起き上がる。
そんな時、僕の耳元で、誰かが囁いたんだ。
?「大丈夫? 大丈夫?」と―――――。
僕「え?」
「あぁ、大丈夫だよ」
僕は、誰かもわからない相手に返事した。
?「そうよかった」
「あなたは無事じゃないと・・・」
それは、どこかで聞き覚えのある声だった。
僕は、どうしても気になってしまって、声をかけてきた女性の顔を覗き込んだ。
僕「あっ!?」
思わずこぼれてしまった、僕の言の葉。
『やっと、やっと、君に出逢えたんだ』
あれから、“生きていたら”という外見を・・・
僕と同じように、あの世で成長してきた君に出逢えた。
そう思って、僕は次なる言葉を放とうとする。
僕「久しぶりだね」
君「えぇ、そうね・・・」
「でも、こんなに早くあなたが来るとは思わなかったわ」
僕「あぁ、そうだね・・・」
「けど、成長した君にまた会えたんだから、それでいいや」
君「そうね・・・」
「けど、あなたはまだ死んでないわよ?」
「これから、元の世界に戻るのよ!」
「ここは、三途の川の一歩手前だから、まだ元に戻れるわ」
僕「そんな必要はないよ」
「僕の願いは叶ったんだから・・・」
君「いいえ、あなたは戻るべきよ」
「そして、教えて欲しいわ!」
「私の見ることのできなかった世界を・・・」
僕「そうか・・・」
「また僕は、君のために生きるんだね」
「君は僕より早く死んだのに、ここで成長を続けてたんだね」
君「えぇ、私はあなたのことをずっと見ていたわ」
「ここで渡し守をするようになる前からも・・・」
僕「ねぇ、その渡し守は仕事なのかい?」
君「そうよ・・・」
「これが、私の仕事なの・・・」
僕「そうか・・・」
「だったら、僕も仕事に戻るとするよ・・・」
君「いってらっしゃい」
僕「行ってくる・・・」
これが二度目の、君との出逢いだった。