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2022年2月15日:国連安全保障理事会

初めましてこんにちは。

篠乃丸と申します。

これから一次創作を始めますのでよろしく。

西暦2022年2月15日

アメリカ・ニューヨーク 国連総本部


 映像が乱れる。


 空にいくつもの爆炎が咲く。炎は戦闘機を飲み込み、もがれた翼が地に落ちていく。


 周りの味方機が次々と撃墜され、映像の最初では大戦力だったロシア空軍の機体達は、もはや半分も残っていない。


 ロシア語で悪態をつくパイロットの声。なおも空戦は続き、パイロットは謎の黒い物体とすれ違う。


 追いかけるようにその物体と旋回戦に入る。しかし、その途端に計器画面が乱れ、出鱈目な数値が表示されたかと思うと、黒い物体を見失った。


 その途端、衝撃が加わる。パイロットの断末魔と共に、映像は途絶えた。


「……以上が、我が国が行った敵性飛行生物"エネロー"への総攻撃、その顛末だ」


 アメリカ・ニューヨークにある国連の総本部ビルにて。先ほどの映像を会場に流したロシア人の代表は、そう言って重苦しく口を開いた。


「各国の皆、これで分かったかと思う。この敵は強力な航空戦力を有しており、奴らの支配地域は猛毒の瘴気に侵され、故郷に踏み入ることができない!」


 彼はここに集まった各国の代表に訴えかけるよう、力強く、そして切実に、言葉を続ける。


「この問題は、いずれ人類全体の危機に拡大する……!国連は安保理に基づき早急に多国籍軍を動員、この脅威を……あの悪魔共を、ロシアの地から排除してもらいたい!」


 代表の演説が終わった。


 今、ロシアという国は危機に瀕している。


 ロシアだけではない。ロシアの周りのユーラシア大陸諸国が、同じようにこの"エネロー"という敵の脅威に晒され、土地を奪われ続けているのだ。


 エネローは強力で、人類の航空戦力は無力化されてしまう。そのせいで反撃はおろか、貴重なパイロットの温存ですらままならなかった。


 そんな敵が突如として出現し、ロシアの地を脅かしている。代表はそのことを切実に訴えかけたつもりであったが、残念ながら各国の反応は鈍かった。


「まさか、こんな超常的な生物が存在するのか?」

「ハッタリだ、ロシアはまた我々を騙すつもりだ!」

「散々紛争撒き散らしておいてどの口が……」


 主にロシアと対立する西側諸国は、まだこの映像とロシア人の主張を信じきれないのか、疑心暗鬼をあらわにして不機嫌そうな顔をしている。


 それもそのはず、西側諸国からすればロシアという国は信用ならない。世界中で紛争を撒き散らしてきた野心の多い国だ。そんな国を助ける気にはなれない。それが現実だった。


「日本、ロシアを助ける義理はないぞ。お前は棄権しろ」

「わかっていますよ……まあ我が国としては、助長を続ける中国も一緒に食い潰してくれるとありがたいんですがね……」


 また、ロシア最大の仮想敵国であるアメリカもロシアを見捨てる算段でいた。同盟国の日本に忠告を行い、牽制する。


 その日本も自国のため、ロシアを見捨ててうざったい隣人を退けるためにエネローを利用しようとしていた。


 悲しいことに、共通の敵を目の前にしても、人類はまとまらなさそうだった。ロシア人の訴えも虚しく、安保理は否決されるかに思えた。


 だが、そんな時だった──


『随分と話がまとまらないようですね、人間さんたち?』


 どこからともなく、そんな声がした。


 その声はまるで各国代表の頭の中に、直接念じられるように聞こえていた。突然のことに会場の面々は混乱する。


「なっ、えっ……?」

「誰だ!?」

「今の声は……何処から……?」


 会場の面々が声に驚き、その主を探そうとするが、どこにも見当たらない。


 聞き間違えかと思う者もいたが、会場にいる全員がその声を聞いていたので、不思議に思われた。


「私はここよ」


 声の主は、今度はハッキリとした声で会場に呼びかけた。


 その大きな声に反応し、何人かの代表が上を見上げる。


 すると演説台の上、国連のマークが貼られた巨大なレリーフの上に、一人の女性が立っていた。


「あ、あんな所に部外者だと!?」

「今は採決中だぞ!警備は何をしている!」


 いきなりの出来事に、会場の面々は混乱を露わにした。拳銃を持った警備員が呼ばれるが、高いところにいる彼女にまで手が届かない。


 そんな場所から見下ろすようにして、彼女はクスリと笑った。


 まるで天から人間達を嘲笑うかのようなその微笑に、会場の面々は何かのプレッシャーを感じ取り、固まった。


 そんな中、勇敢なアメリカの代表が、彼女に向かって声をかける。


「……貴方は何者ですかな?」

「私はアザゼル。あなた方人類に知恵を与えるべく参上した"天使"です」

「天使だと……?」


 自分を天使だと名乗るアザゼルの言葉は、信憑性がないかのように思われた。自分をいきなり天使だと名乗る女を、いきなり信用することはできないのは当然だ。


 会場の面々が疑いの目を向ける中、彼女は唐突に目を瞑ると、ワンピースの背中をめくる。


 その美しいスラリとした背中から、純白の翼を伸ばす。それと同時に、アザゼルの頭の上に光輪のようなものが浮かび上がった。


「なっ……」

「背中から、翼が……」

「これで少しは、信じてもらえましたでしょうか?」


 突然正体を表した事により、会場の面々は固まってそんな声しか出なかった。中には気絶したり、神に祈る者もいた。


 とにかく、これのおかげで人間達はアザゼルの正体を信じるしかなかった。


「……君は先ほど、人類に知恵を与えると言ったな。具体的には何をしてくれるんだ?」

「こちらを」


 アザゼルが指を弾くと、巨大なモニターに新たな映像が映る。


 それはゲノム配列を現した遺伝子表のようなもので、続いて規則的な数字の羅列が始まった。何かの情報のようだった。


「この遺伝子配列は一体……」

「私からは、あなた方にエネローと戦う技術を与えましょう。この遺伝子は、エネローに対抗できる人造の天使達……その設計図になるものです」


 そう言ってアザゼルは、笑うようにして口元を緩めた。だが、それはどちらかと言えば冷笑ではなく、優しい微笑みのようにも見て取れた。


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