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3、ワテの人生ちょいとばかし語らせてもらいまひょ♡

この回で完結です。

後日、キャラクター紹介ページを追加するかもですが、読まなくても大丈夫です。


 トワイライト嬢の高笑いを聞きながら、僕はゆっくり立ち上げる。


「ほな、行くで。

 明日解体業者が来るさかい、兄ちゃんは今晩中に荷物まとめときや。

 別嬪さんにはワテらが踊り娘の極意を手取り足取り教えたるわ♡」


 トワイライト嬢は美少女とは思えぬ、いやらしい眼差しをリナに向けた。男達も「グヘヘ……」と下品に笑う。


「嫌っ、この悪魔!」

 マスタード小男に捕まったままのリナが叫ぶ。


「そうだ、いくら何でも酷すぎる。こんな無茶苦茶な方法で、食堂とリナまで奪うなんて!

 貴女はそれでも領主様の御令嬢なんですか?」


 僕は嘆くように言った。

 男の拳が飛ぶかと思ったが、店内で響いたのは、令嬢の扇子を閉じる音だった。


「フフフ。私は正真正銘、トワイライト領主の娘ですわ。ですが、今回は特別に貴方達に教えて差し上げましょう」


 ジャジャーンと、青色の男は弦楽器を鳴らした後、静かな音色を奏で始めた。


 アスパラガス男がカーテンを閉めていき、店内が暗くなる。トワイライト嬢だけ光が当たるようなり、まるで舞台のようになった。


 って、何でこんなことしてるんだ?



***************



「ワテの生まれは、大阪北新地。祖母の代から続くスナックで、ワテは育った」


 オーサカキタシンチ? て、どこ?


「オカンは女手1人でワテを育ててくれた。

 オカンのスナックには、表も裏も知り尽くしたシャチョーさんやカイチョーさんがよう来てた」


 ジャジャンッ

 弦楽器の音色がここで強くなる。


「ある日悲劇は起こった。

 オカンが交通事故で逝ってもうた。

 残されたワテは、独りぼっち。頼れるのは、オカンの馴染客のオジキだけやった」


 マスタード小男とアスパラガス男がすすり泣く声が混ざってくる。鬱陶しいな。


「オジキはキタの土地を転がす不動産屋やった。ワテは弟子入りして、オジキや先輩らにシゴカれながら、1年でビル3棟建ててやったわ。

 紙切れとハンコで、ワテの懐にはザクザク金が入ってくる。家が無くなって泣いてる子連れがおる? 知らんがな。ホゴでもエンジョでも頼ってどうにかしろや。

 いつしかワテは界隈で『ヒガシキタのプリンス』と呼ばれるようになったわ」


 領主の娘が何故、王子(プリンス)


「そしてあの日。ワテはいつものように、300年続く老舗漬物屋本店を中国ファンドに売り渡した。ニコニコ現金一括払いや。ワテはビタ一文漏らさずオジキに渡してきた。そのご褒美をタンマリもろてから、坂新(ばんしん)百貨店でクッチのブレスレットを買うて、前から(ねろ)てた堀江のガールズバーのなみゅちゃんにアタックしようとしたんや」


 僕はリナを見た。キラキラした目でトワイライト嬢を見ているマスタード小男とは対照的に、彼女の目は死んだ魚のように濁っていた。


「1秒でもワテは、早くなみゅちゃんに会いたかった。せやのに、信号のタイミングが合わんから、無視してやったんや。したら、対面から鈍臭いトラックが突っ込んできての」


 弦楽器の奏でる音のトーンがポロンポロンと低くなる。


「ワテの人生はそこで終わってもうた」


 「お嬢〜」とマスタード小男の嘆きが店内に響く。

 いや、令嬢は目の前で生きているだろ。


「と、思てたら!」


 シャラランッ

 一転して軽やかなメロディーが流れる。


「目を覚ましたら、けったいなお屋敷のふわふわベッドにワテはおった。鏡を見たらどえらい美少女やった。

 これが『異世界転生』てやつかぁー!

 と、ワテは興奮したわ」


 トワイライト嬢は大袈裟に両腕を横に広げ胸を張っている。何を言っているのか、僕はほとんど理解出来なかった。


「ワテが転生したお嬢様は領主の娘やった。両親は領地管理に頭を悩ませておった。借金もあったしな。そこでワテは閃いた。今までの土地転がしのノウハウをこの世界で活かして、ワテのフリルドレスからはみ出る位に金を手に入れてやるとな。

 後は簡単や。近くにいた野郎共をちょいと()()してな。両親から情報もろて、赤字続きの土地を売ったり貸したりした。元から住んでた連中は? ワテの知り合いに頼んで、よその町に引っ越してもーとるわ。あっという間にトワイライト家の借金は清算出来て、ワテは一族自慢の娘となったんや」


「いよっ! お嬢!」


 男達の掛け声と弦楽器のジャンッを締めに、令嬢は佇まいを戻し、扇子を口元に添えて静かになった。

 アスパラガス男がカーテンを開けていき、再び店は明るくなった。



***************



「と、とにかく、リナを離してください!

 お店は譲ります。新しい店は自分で探しますから!」


 僕は大きな声で言った。


「しつこいなぁ。新しい店でもっと若いピチピチの娘を雇った方が兄ちゃんも楽しいで」


「馬鹿言うな!」


 頭に血が昇った僕は、リナを捕まえているマスタード小男ではなく、トワイライト嬢に向かって手を伸ばそうとした。

 しかしそれは、横から伸びてきたアスパラガス男の大きな手に阻まれた。僕は頬に平手打ちをくらい倒れた。


「エド!」リナが叫ぶ。


「この程度でくたばるなんて、ほんま兄ちゃん情けないな」


 トワイライト嬢と男達の嗤い声が響く。悔しいが、力がこれ以上出なかった。


「ほんなら、連れてこか……」


 ガタガタと音を立てながら、連中は木の床を踏み歩いていく……


「えー加減にしやがれ!」


 怒声と共に殴打音が聞こえてきた。僕は身体を起こす。


 マスタード小男とアスパラガス男が倒れている。拳を握って立っているのは、リナだった。


「何や、急に? サブ、行け!」


 トワイライト嬢が青色の男に指示する。男はリナに向かって弦楽器を振り上げる。


「ウオリャッ!」


 青色の男の攻撃を躱し、リナは懐に入り、顎を殴り上げた。一撃で男は背中ごと床に倒れた。


「どういうことや?」


 トワイライト嬢が困惑している内に、リナは令嬢の胸元のフリルを掴み、睨んだ。


「静かに聴いてやったら、調子に乗りよってからに。趣味の悪い服着てイキっとんなや!

 この扇子もなんやねん。ゴミ箱(ごんばこ)漁っているカラスの毛でもひっこ抜いたんか? テメェのクルックルうるせぇ金髪も全部ひっこ抜いて箒にしたろか、ワレェッ!」


 え、ちょっと待って。リナもその喋り方?

 今、流行っているの?


「何驚いた顔しとんねん。やっと確信したわ。

 お前、暮田(くれた) (ひかる)やろ?

 詐欺、恐喝、威力業務妨害、契約書改ざん、不正金銭取得・斡旋。

 ようやく証拠が掴めて、逮捕目前やったのに。お前は信号無視で事故ってオダブツや。

 ふざけんな。まだまだ余罪もあったはずやのに……」


 僕は2人のやり取りを黙って見ていた。というより、訳が分からなすぎて、口を挟めなかった。


「どうしてワテの名前を……」

 トワイライト嬢は唇を震わしながら言った。


「俺の名は毛利(もうり) 夏彦(なつひこ)

 北署の刑事や。『4課の毛利』と聞いたら、流石にテメェも分かるやろ?」


「あっ……。で、でも何故?!」


「俺は、お前の事故死を知って、珍しく酒で荒れた。気付いた頃には、淀川に落ちていた。

 死ぬんやと思たが、翼の生えた爺さんが目の前に現れて、願いを叶えてやると言ってきた。そこで俺は『暮田晃を逮捕したい』と伝えた」


 僕の立ち位置からはリナの顔が見えない。しかし、彼女の背中からは、これまで感じたことのない哀愁が漂っているのが伝わってきた。


「まさか、田舎娘に転生するとは思てへんかった。せやけど俺は諦めず、リナのフリをしながら、暮田晃を探した。食堂を手伝ってたのも、客から色々情報を聞き出す為や。

 そして俺は、領主の娘が強引な方法で土地を取り上げ、利益を得ていると知った。暮田と似た手口やった。やから、俺はお前に会う機会を伺ってた……」


「それで、ようやく会えたってことやな。

 会えた気分はどうや?

 禁断の百合でもやってみるか?」


 トワイライト嬢は引きつった笑い方をした。


「ハンッ、死んでもゴメンだ。

 テメェは逮捕する」


「アホ抜かせ。今は暮田晃やないし、お前も警察ちゃうやろ。どうやって逮捕すんねん」


 少しの間、沈黙が空間を満たした。


「逮捕、出来んねん」


 突然ブワッと、金色の光が下から発した。床に出来た発光する円に2人が入っているようだ。


「な、なんや?」


「これからお前を閻魔のところに連れて行く。地獄裁判や。俺達は元々日本にあった魂やから、飛ばしてくれるらしい」


「ヤメロ! ワテは行きたない! 死にたくない!」


「もう、死んどるんや、俺達は。

 早う、2人のお嬢さんに身体を返したろう。

 可哀想にトワイライト嬢は、お前のせいですっかり悪役令嬢になってもうたな」


 金色の輝きに包まれたリナが振り向く。

 その表情は、僕の知る彼女ではなかった。


「悪いな、エド。

 一旦身体ごと連れて行かなあかんから、しばらくサヨウナラや。

 女としてエドと過ごした日々、悪くなかった。お前は結局俺に指一本触れてこんかったけど、俺はお前がそのつもりなら構わんと思ってた」


 リナの頬が赤らむ。

 その時、更に強い光が2人を包み、再び姿が見える頃になると、僕はギョッと目を見開いた。


 先程までいた、金髪の赤いドレスの美少女は、赤い上着とズボンを履いたスキンヘッドの男に、赤毛の愛らしい娘は、髭面の筋骨隆々男に変わっていた。


「この身体が戻ってきた時、2人はこれまでの記憶を無くしとる。優しくしたってな」


 リナだった男がそう言うと、再び光が強くなり、やがて静まった。

 店には倒れた男3人と僕だけが残されている。


「リナ……」


 「僕に触れられても良い」と言った、頬を赤らめる髭面の筋骨隆々男……。


「プロポーズしなくて良かった」


 天井を見上げながら僕は呟いた。

【お読みくださりありがとうございます】


ブクマ・いいネ→つける・外すはいつでもどうぞ。

☆マーク→加点・減点・変更・取消、いつでもご自由にどうぞ。


もちろんどちらもスルー可です。読んでもらえただけで物凄く感謝です(*´ω`*)これからも頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルからして、トワイライト嬢は大いに想像できたのですが、まさかのリナまでとは笑 誰もが意表を突かれること間違いなし、まさしく大どんでん返しでした。え、まじか!? と度肝を抜かれてしまい…
[良い点] だーれだ企画で冒頭を拝読していたので、え、あの出だしで三話でおさまる?! と思ったら見事なオチ! こってこてのステージコント風ならではのテンポのよさがめっちゃ楽しかったです。 プロポーズ、…
[一言] 続きがあったので読みに参りました。 「二人とも、やっぱりぃ」な感じでしたが、関係性が意外でした。宿敵だったのですね。 顔を赤らめる筋肉質髭面……絵面が微妙にかわいいのが不思議です。まぁ、プロ…
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