ハンバーガー屋の注文編
私、斉藤られあ。
高校2年生。
入学以来ずっとぼっちだったが、今日は吉田めぐさんと赤坂さやさんが放課後マックへ誘ってくれた。
マックにて。
「私達先に席取ってるから」
「あっうん...」
「いらっしゃいませ。ご注文何になさいますか?」
「あっ……注文……ええと」
まずい……マックでで一人で注文するのなんて初めてだ。
いつもお母さんと一緒に来て注文してもらってたから。
どうしよう何にしようか全然決めてなかった。マックって何があったっけ?
そういえば私、今所持金250円くらいしか持ってない。
「店内でお召し上がりでしょうか?」
「あっ……はいってっ店内でっ!」
「ご注文はどちらになさいますか?」
「ハンバーガーとあとは……水で!」
「以上でよろしかったですか?」
「はいっお願いします!」
「ご一緒にポテトはいかがでしょうか?」
「いっいいえっ……けっ結構です」
「それではお会計120円になります」
「ええと、120円……」
バリバリッ。
私は百均のマジックテープの財布を開けた。
「(ふふっこの子女子高生なのにマジックテープの財布使ってるよ。ウケるー)」
店員さんが何故か私を見てにやけている。
「会計おっせーなぁ!」
どうしよう!
後ろのおじさんに煽られちゃった。
早くしないと!
「あっ」
バラバラバラッ。
小銭落としちゃった。
さっさっさっ。
私は急いで小銭を拾い集める。
「大丈夫ですか? お客様!?」
「あっはい……大丈夫です……これ……120円……」
「ちょうどお預かりします。商品用意できましたらレシートの番号でお呼びいたしますのでレジの隣でお待ち下さい」
「分かりました」
「ありがとうございました」
ここで待てばいいかな。
「おいそこ邪魔だよ。通路塞ぐなよ」
「あっすみませんっ」
「ったくよぉ!」
ウーバーイーツの人に怒られた。
また人に迷惑をかけてしまった……。
208番のお客様! 商品こちらになりまーす。
うわっ! 水の紙コップちっちゃっ!
ただでさえくそしょっ ぱいハンバーガーをこの水の量はきついよ。
10分後。
めぐとさやは絶え間なくお喋りをしている。
どうしよう。
案の定喉が渇いた。
ただでさえ会話し慣れない同級生と一緒にいるだけで緊張して喉が渇く。
レジにおかわりもらいに行こうかな。
だめだ。レジが混んでる。
こんな時に水をもらいに行くのは
迷惑だ。
店員さんに嫌な顔されちゃうかも。
そうだ!
トイレの洗面台の水をもらいに行こう。
私は無言で席を立ち、トイレに行き水を汲んで戻ってくる。
「えっ……られあちゃん。もしかしてトイレの手洗い場の水汲んできたの!?」
「うっ……うん。水だけもらいにレジに並ぶのは忍びないと思って」
「いや! 汚いし恥ずかしいからやめて!」
「あっ……ごめんなさい」
結構真剣に怒られてしまった。
「のど渇いてたの?」
「うん。どうしても」
「仕方ないな。ジュース一杯奢ってあげるよ」
「えっ悪いよ」
「いいって。いいって。私バイトの給料入ったばっかだから」
「さやったら太っ腹ー。ごちになりまーす」
「めぐにはおごんないわよ。自分で買いにいきな。そんで、何飲みたい?」
「えっと、じゃあ……メロンソーダSサイズ。ええっと……そのっ……あっありがとう」
「どういたしまして。ほらこれもって並んできな」
「うん」
「小銭握りしめてトコトコレジに走ってるよ。られあちゃん可愛いー」
「はじめてのおつかいみたいじゃん笑」
ジュースを奢ってくれるなんてめぐちゃんとさやちゃんはなんて良い人達なんだ。
翌朝
あっ。めぐちゃんとさやちゃんだ。
昨日一緒にマックに行った仲だし、フレンドリーに挨拶しても……いいよね。
「おっ……おはよう」
「あっ……られあちゃんっ。おはよう」
ささっ。
めぐちゃんとさやさんはそそくさとトイレに行ってしまった。
「あれっ……なんか避けられてる?」
ほどなくして私は「マックでトイレの水を飲もうとした女だ」という噂が広まり余計に孤立した。