晴れ時々魔法少女
放課後の帰り道。
友樹は薺と2人で家を目指して歩いていた。
夕飯はなんだろうとか、今日のテレビ番組で面白そうなやつは何かあったかとか何気ない会話をしながら晴れ渡る空の下、帰路を歩く普段の日常。
しかしそんな日常を黒い穴が穿つ。
街の上空にまたもやゲートが開いたのだ。
「おいおい冗談じゃねえぞ」
「マスター、近くに。側を離れないで下さい」
「ドラゴンみたいなの出てきたけど戦えるのか?」
「私には空戦能力がありません、姉さん達に救援要請を出しました。
直ぐに到着します」
薺はそう言うが、戦闘機程のサイズの小型のドラゴン、ワイバーンは街に向かって急降下。
今にも人を襲いそうだ。
「俺の事は放っておけ、皆を助けるんだ薺」
「しかし、マスター」
「俺は大丈夫だから」
「分かりました」と薺が応え、今にも走り出そうとした瞬間だった。
急降下している最中のワイバーンの横っ面を帯状の光が叩き、ワイバーンを弾き飛ばした。
「ビーム? 楓か!? 早かったな」
「いえ、楓姉さんのビームではありません。未知の反応です」
「となると魔法か?」
日が傾き、夕焼けが空を染める時間、ワイバーンに向かっていく人影が2つ。
その人影は間違いなく人間の物だったが、どこかで見たことがあるようなシルエットをしていた。
ひらひらしたフリルをあしらった服にスカート。
星を型どったアクセサリーの付いたマントに、極めつけに手に持った短い杖。
友樹はいつしか漫画やアニメで見た魔法少女の姿をその人影に見ていた。
友樹の遥か頭上を当たり前のように飛び去っていった人影は2つ。
一人は桃色の衣装に金髪ツーサイドアップの少女。
もう一人は黒い衣装に黒いポニーテール、金髪の魔法少女よりは長い杖を携える少女。
その2人の魔法少女がワイバーンに杖を向けて帯状の光を再び放った。
「ねえ! コレホントに効いてる!? あっ!認識阻害忘れてた! どうしよう!?」
「落ち着いて下さいお嬢様! 今からでも認識阻害を掛けます!」
2人の魔法少女がそんなやり取りをしながらワイバーンに向かっていく。
その2人の姿だが、友樹には直ぐに見えなくなってしまった。
まるで最初からそこに何も無かったかのような違和感と共に。
だが、その2人の姿を機械である薺は捉えていた。
「エイミィさんのお知り合いでしょうか?」
「ん? さっきの2人がか? 見た目十歳位の女の子だったけどそうなんだろうか。
何にせよ魔物に立ち向かうってんなら援護してやらないとな。
薺、行ってやってくれ」
「了解、マスターの仰せのままに」
友樹の言いつけに従い、薺は走って現場に向かう。
走ってとは言っても、忍者よろしく家の屋根から雑居ビルの屋上へと跳び上がり、そこから更に他のビルに向かって跳んで最短距離を移動する。
薺がワイバーンの出現場所に辿り着くと、そこには先程二人の上空を飛び去っていった魔法少女が2人、ワイバーンと戦っているのを見て、その魔法少女2人の後ろのビルの屋上から飛び降りた。
そしてお誂え向きと言わんばかりに魔法少女に突進してきたワイバーンが薺の真下に位置取ったので、薺は両足を杭状に変形させてワイバーンの頭部を貫き潰して、そのまま着地してみせた。