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友樹とエイミィ

 魔法も魔力も存在する。

 地球在住の魔族代表、クラティアの発言に世界が湧いた。


 しかし、感知出来ない物を使う事は出来ない。


 過去の異世界間戦争を絵空事と断じ、この度のゲート開放まで異世界の存在を信じていなかったは者達は特にそうだ。


 いや、もっと言うなら神代にはあった魔法という奇跡と決別した時代から、人類は魔法を捨ててしまったのだ。

 奇跡なんて必要無い。

 自分達は魔法に頼らず火を起こす方法すら編み出した。

 人類は魔法が無くても生きていける。


 そう信じ、繁栄していった結果、得た物が“科学”であり、失った物が奇跡“魔法”なのだと、クラティアは地球の歴史を学んだ上で自ら推測し、語っている。


 だがしかし、人類は過去にゲートを通じ、異世界の存在を魔法、魔力、奇跡の存在を再び知ることになった。


 過去の異世界間戦争を経験した世代以降、公に知られてはいないが中には魔力を感知出来るようになった者が増加している傾向にある。


 異世界間戦争後に生まれ、心の底から魔法があると信じ、それに触れた10代前半もしくはそれにも満たない幼い少年少女達がそうだ。

 

 吸血鬼の女王、クラティアは世界に警告する。


「敵は異世界の魔族や魔物だけではないわ。

 なんだと思う? 誰だと思う? 裏社会の人間? 反社会的勢力? テロ組織? 違うわ。

 本当に危険なのは自分達の住む世界の危機に関心を持ってない貴方達地球人全員。

 以前、多種多様な人間が一致団結なんて無理だなんてコメントを見たけど、魔界の住人に比べれば地球人は単一民族も同然よ? 

 貴方達は以前の異世界間戦争の後もそうだったわ。

 土地がどうだの領海がどうだの金銭がどうだのと揉めていたけど、地球人同士で喧嘩してる場合じゃないのよ。

 いずれ来る決戦の日、機械仕掛けの天使達の活躍で人類が勝利しても、残る国が1つだけ、極東の島国だけなのは嫌でしょう?

 魔法を秘匿している貴方達もそうよ?

 そろそろ重い腰を上げる時なんじゃない?」

 

 あるテレビ番組で語ったクラティアの言葉に、世界各地の魔法を秘匿したい老人達は頭を抱えたらしい。

 

 友樹はエイミィと夕飯を一緒に食べた翌日、当たり前のように登校を言い渡された学校の教室で、ホログラム対応のスマホを使い件のテレビ番組を休み時間中に眺めていた。


「この人がお前の母さんなんだよな?」


「あ~まあな。美人だろ?」


「お母さんは金髪なのな」


「お前さあ、さっきの番組見てて感想がそれかよ」


「まあ俺も魔法やらには憧れるけどなあ。

 近くにもっと凄いのがいるし、友達は吸血鬼だし、正直間に合ってるっていうかなんというか――」


「夢がねえなあお前は」


「夢か、夢なあ。

 爺ちゃんと、死んじまった親父とお袋のお陰で金には困ってないしなあ。

 そうだなあ、ゆっくり漫画とか小説読みながら暮らしてえなあ」


「お前、本当に夢無いな」


 教室の一角、廊下側の1番前の友樹の席でそんな話をしている昼休み。

 友樹の机に腰掛けて話していたエイミィは友樹の言葉に溜め息を吐き、深々と肩を落とした。


 その様子に今がチャンスと言わんばかりに「エミィちゃ~ん」と茶髪の男子がエイミィに声を掛けてくる。


「つまんなそうじゃん、そんな奴ほっといて俺達と話しようぜ」


「断る! あと私をエミィって呼ぶな、その呼び方を許してんのはコイツと、隣のクラスの猫又とエルフだけだ」


 不快だと言わんばかりに茶髪男子を睨むエイミィ。

 その瞳はまさに吸血鬼と言える縦長の瞳の形をしていた。

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